『呪怨』新作脚本の初稿は数年前に完成 鬼才・清水崇監督、大ヒットシリーズの“呪縛”から脱却するまで

劇場版、ハリウッドリメークをはじめ、ゲーム、ノベライズ、コミック化を果たすなど、Jホラーを代表する傑作の原点となるVシネマ版『呪怨』『呪怨2』がまさかの4Kリマスター化(公開中)となって復活。その生みの親である清水崇監督が、25年の時を経て生まれ変わった本シリーズへの思いを語った。
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不登校の少年・佐伯俊雄とその母・佐伯伽椰子が住んでいた、呪いの家を訪れた人々が体験する恐怖を描きだした本シリーズ。VHSレンタルが主流だった時代に制作されたビデオマスターを、清水監督監修のもと、ソニーPCLの最新技術「RS+」を使用することで高解像度・高精細の4K映像でリマスター化。さらにオリジナルのステレオ音源を5.1chへと進化させている。「当時から知ってくれている方は、あの画質の悪さも含めて怖かったという方もいらっしゃると思いますし、僕もそうだと思うんです。ただ『呪怨』をまったく知らない世代の方や、劇場版の前にVシネマがあったことを知らなかった方たちが、これをきっかけに観ていただけたら、という思いがあります」。
本作はVシネマゆえに許された自由度の高さと、当時のVシネマが放っていた独特の熱量、デビュー間もない清水監督の若さあふれる勢いとが融合した、ケレン味たっぷりな演出が印象的となっている。「今となってはこんなに露骨に演出していたのかと、笑っちゃうところもあります。ただただ恥ずかしい。過去作なので『今だったらもっと抑えた演出のバランスで……』とも言えないのがもどかしい」と照れくさそうに笑う清水監督。
今でこそ伝説の作品として語り継がれているVシネマ版『呪怨』だが、リリース当初の売り上げは厳しいものだった。だがビデオを観た人たちの間からジワジワと口コミが広がり、レンタル店から続々と追加発注が相次いだという。やがて劇場版、そしてハリウッドリメークへと続く世界的ヒット作となった。だがその輝かしい成功の影で、清水監督自身は本シリーズに“呪縛”のようなものを感じていたという。
「『呪怨』と聞くたびに、『もう勘弁してくれ』『最新作も観てほしい』というジレンマはありました」と語る清水監督だが、25年という年月を経てその心境にも変化が起きている。その間に『恐怖の村』シリーズや、『あのコはだぁれ?』といったヒット作を連発してきたことも大きかったのかもしれない。「それを幸せとちゃんと受け止めることもできるような年齢になってきたということもあります。『呪怨』がなければ今の僕はなかったし、『呪怨』のおかげで『呪怨』を超えるものを作らなきゃという気持ちにもなれる」。
となると、清水監督自らが手がける『呪怨』の新作の可能性もあるのだろうか? 「実はもう5、6年前に、あの家を使った新しい『呪怨』の台本(初稿)はできあがっているんです。ただそれを要請してきたプロデューサーが別作品で忙しくなってしまったので、台本を読んでもくれてなくて(苦笑)。そのまま手つかずになったままなんですが……でもベースになる初稿台本はあるので、近い将来、実現すれば、僕が関知せずに幾つも作られた亜流でなく、正統派のシリーズ続編が実現する可能性もあると思います」と新作の可能性ついて明かすひと幕もあった。(取材・文:壬生智裕)
映画『呪怨』『呪怨2』〈4K:Vシネマ版〉は8月8日より全国公開中


