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『8番出口』おじさん役・河内大和起用の理由 演出のポイントは“不気味の谷現象”

映画『8番出口』より河内大和演じる“おじさん”
映画『8番出口』より河内大和演じる“おじさん” - (C)2025 映画「8番出口」製作委員会

 累計販売本数190万本超のヒットを記録したインディーゲームを二宮和也主演で実写映画化した『8番出口』(公開中)。4つのルールのもと、地下通路内で起きる異変を見つけるだけのシンプルなゲームを95分のサバイバルスリラーに作り上げた本作で注目を浴びているのが、ゲームにも登場する中年男。演じるのは、2023年放送のTBS・日曜劇場「VIVANT」で脚光を浴びた河内大和。本作のメガホンをとった川村元気監督が、「規則的に歩いているだけで怖い」という同キャラクターの裏側を語った。

【画像】撮影場所は秘密…『8番出口』メイキング<4枚>

 2023年にインディーゲームクリエイターの KOTAKE CREATE が制作したゲームは、無限に繰り返される地下道の空間を「異変を見逃さないこと」「異変を見つけたら、すぐに引き返すこと」「異変が見つからなかったら、引き返さないこと」「8番出口から外に出ること」という4つのルールにのっとり、出口を探していく。正しく進めれば1番出口、2番出口と8番出口に近づいていき、異変を見逃したりあるいは異変と思い込んで引き返せば0番出口(振りだし)に戻る。映画ではゲームのプレイヤーにあたるのが二宮演じる「迷う男」で、主に彼の視点で物語が展開。河内演じる“おじさん”は「迷う男」が繰り返しすれ違う人物で、「歩く男」とクレジットされている。

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 劇中、主人公は、スマホと鞄を手に歩き続ける「歩く男」と何度もすれ違うが、あまりにも規則正しく繰り返されるため「同じ映像を使用している箇所もあるのか?」と問うと、川村監督は「ありません」ときっぱり。河内の起用に関しては、キャスティングディレクターから推薦されたことがきっかけだったという。

 「もう絶対この人だなと思いました。初めはゲームの“おじさん”にそっくりだったことがきっかけでしたが、河内さんはもともと舞台俳優で、ご本人から舞台の上で歩くことをずっとトレーニングしてきたというお話を聞いて最高だなと。河内さんの役は歩く芝居がメインだったので、こんなに適任はいないと。毎回規則正しく歩いて、機械のように曲がる……といった演技は、彼の舞台俳優としてのキャリアの集大成みたいなところがあって。河内さんの芝居にも相当助けられています。河内さんには、能のような、幽霊的な歩き方をしてほしいとお願いしました」

二宮和也演じる主人公は、繰り返し“おじさん”とすれ違い続ける

 川村監督の前作『百花』(2022)にもAIとCGで人工的に作られた歌手が登場したが、川村監督が注目しているのが「不気味の谷現象」(CG表現が限りなく人間に近いていくが、どうしても違和感を感じるようになる)。本作では「歩く男」がその気分を担っている。
 
 「あのおじさんは、ゲームだとCGなわけです。その動きを生身の人間が再現すると、それだけで怖い。AIの人間が笑った時に感じる違和感もそうです。限りなく人間に近いんだけど、やっぱり何か違うと思う感じ。あのおじさんも、ただ笑っているだけでも、すごく嫌じゃないですか。そういう表現を随所でやっていて、一番気に入っている恐怖描写です」

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 「歩く男」が恐怖のかなりの部分を担っているが、川村監督が考えるピークは意外なところにあった。

 「僕にとって1番怖いのは、『出口8』の黄色い看板。何回も何回も出てくるうちに、ただの看板のはずなのにまるで神のような、悪魔のような、不気味な生命体のように見えてくる。大前提として、人って説明されないことが一番怖いもので。この場所が一体何なのか。主人公の心の中を表しているのかもしれないし、人間の胎内のようにも感じるし、人が死んで生まれ変わる場所なのかとか、いろいろなニュアンスを含ませています」

 「河内さんをこの映画でスターにしたいという気持ちが強かったです。この映画を観た人の夢の中に、河内さんが演じたおじさんが出てくるようになれば」と河内にほれ込む川村監督。その言葉通り劇中、河内は一度見たら忘れられない強烈なインパクトを放っており、いつの日にか、川村監督とさらなるタッグが実現することを期待したい。(取材・文:編集部 石井百合子)

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