ロカルノ国際映画祭で最高賞と審査員賞を受賞した三宅唱監督最作『旅と日々』追加場面写真が公開!著名人からコメントも

『ケイコ 目を澄ませて』や『夜明けのすべて』で知られる三宅唱監督の最新作『旅と日々』(11月7日全国公開)の追加場面写真と各界著名人からのコメントが一斉に公開された。本作は、第78回ロカルノ国際映画祭インターナショナル・コンペティション部門にて最高賞である金豹賞とヤング審査員賞特別賞をダブル受賞している。
『旅と日々』は、行き詰まった脚本家・李(シム・ウンギョン)が、旅先での出会いをきっかけにほんの少し歩みを進めるロードムービー。原作は、つげ義春の漫画「海辺の叙景」と「ほんやら洞のべんさん」。主演のシムのほか、ものぐさな宿主・べん造を堤真一、李の脚本世界に登場する渚を河合優実、夏男を高田万作が演じる。さらに、佐野史郎が一人二役で出演している。
公開された場面写真には、定食屋で読書をする李(シム)や、べん造(堤)が李をもてなそうと台所に立つ姿、夏の海辺で風を受ける島の青年・夏男(高田)、同じ島にいるのにどこか陰をおびた女・渚(河合)の姿などが収められ、それぞれのキャラクターが垣間見える。また、李がつげの「海辺の叙景」を原作にシナリオを書いた映画のなかで、原作さながらに表現された、嵐の中で海辺の小屋にポツンと座る夏男の姿も切り取られている。
映画監督の濱口竜介、テレビプロデューサーの佐久間宣行、シンガー・ソングライターで詩人の柴田聡子など、映画を鑑賞した各界の著名人12名からコメントも寄せられている。濱口は「癒やされた」、佐久間は「滅法面白い」と語り、テレビディレクター・作家の上出遼平は「この作品はもはや国宝だと思います」と賛辞を寄せた。著名人からのコメント全文は以下の通り。(加賀美光希)
濱口竜介(映画監督)
粒子のうごめきを見つめる時間。私たちを生かしているものに思いを馳せる。冷え冷えとした画面を眺めているうちに、体の深部が熱くなるのを感じる。人生に必要な時間が、この映画に凝縮されている。癒やされた。
瀧本幹也(写真家)
俳優陣の豊かな存在感と、画に映らないほどの匂い立つ気配に満ちた名作。
原風景と心の景色が見事に響き合う映像世界に感嘆した!
糸井重里(ほぼ日代表)
「こういうのも、ありだ!」という驚きに似た思いをかつて「つげ義春」のマンガで味わったのだけれど、また同じ思いをこの映画で味わってしまった。マンガと映画とは別のものなのに!
イ・ラン(音楽家/作家)
“生”とは、見知らぬ土地で物たちの名前を覚え、不思議で仕方なかった景色がやがて日常になるその瞬間を待つ、長い旅だ。今も新しい言葉はどこかで生まれ続け、私たちは永遠に言葉を学びながら、いつでも“外人”になる準備をしている。
上出遼平(テレビディレクター/作家)
私のこころは今ホクホクです。観た後に旅に出たくなる映画はたくさんあるけれど、観ている時間そのものが旅でした。
この作品はもはや国宝だと思います。
柴田聡子(シンガー・ソングライター/詩人)
海のシーン、映像から溢れ返る詩情が言葉をさらっていった。もう言葉は戻ってこないのかもしれないと思った。けれども雪が引き留めた。人が言葉とぎこちなく可笑しく向き合う様子を映像が見つめていた。
伊藤亜紗(美学者)
接続詞のない日記みたいにとつとつと転がっていく物語。思わぬ結末にふて寝するべん造の背中が愛おしくて、ケラケラ笑ってしまった。
奥山由之(映画監督/写真家)
夏と冬、虚と実、ユーモアと哀しみのあわいで心地よく揺らされながら、気がつけば言葉の檻から解放されていた。情緒と静寂がたっぷり染み込んだ三宅監督流ヴァカンス映画、大好きでした。
佐久間宣行(テレビプロデューサー)
美しさとユーモア。儚さと退屈。刺激と癒し。
人生の相反するようで似ている瞬間が、この映画にはたくさん転がっている。
さりげなく、それはもう滅法面白く。
伊賀大介(スタイリスト)
「積極的逃避」こそが、人生を豊かにしてゆく。
金川晋吾(写真家)
つげ義春の漫画でしか経験できないはずの捉え所のない「よさ」が映画という時間のなかにたちあらわれている。なんでこんなことが起こり得るのだろう。これは確かにつげの漫画なのだけれど、同時に全く別の『旅と日々』という映画以外の何者でもないものになっている。
柴崎友香(小説家)
自分のいる場所が変わると、気持ちも少しずつ変わる。
小さいようで大きいかもしれない旅が、長く心に残り続ける。


