「ばけばけ」ヘブン役トミー・バストウは“役づくりの鬼” 「生活リズムも変える」制作統括も認めるプロ魂

高石あかり(高=はしごだか)が主演を務める連続テレビ小説「ばけばけ」(NHK総合・月~土、午前8時~ほか ※土曜は1週間の振り返り)の第22回(28日放送)より、ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)をモデルとしたヘブン(トミー・バストウ)が本格登場を果たす。制作統括を務める橋爪國臣が、第22回で描かれたヘブンの松江上陸シーンの制作秘話、ヘブンを演じるトミーの演技について語った。
【明日の場面写真】ヘブン(トミー・バストウ)、幻想的な朝に感動する…
連続テレビ小説の第113作「ばけばけ」は、松江の没落士族の娘・小泉セツとラフカディオ・ハーン(小泉八雲)をモデルに、西洋化で急速に時代が移り変わっていく明治日本の中で埋もれていった人々をフィクションとして描く。「怪談」を愛し、外国人の夫と共に、何気ない日常の日々を歩んでいく夫婦の物語。
これまでアメリカでの姿がわずかに映し出されるだけだったヘブンが、第5週・第22回でついに松江に初上陸。トキとヘブンが握手を交わすシーンが、とても印象的に描かれた。橋爪は「史実的なこと言うと、このあたりの船着き場に降りたということまではわかっています。それはセツさんの住んでいた家の近くで、彼女の家から徒歩20秒~30秒の距離。当時は野次馬も来たでしょうし、セレモニーも行われたので、彼女も見に行った可能性があると想像してのもと、あのシーンを撮影しました」と同シーンを振り返る。
続けて、橋爪は「二人の出会いがどうであったかは、史実ではよくわかっていないのです」とセツとハーンの出会いについても言及した。「船着き場が家から近く、ハーンが当時泊まっていた旅館から歩いて1分~2分の距離にセツがいて、二人は同じ生活圏で暮らしていました。どこかできっと出会っていただろう、その中でどう出会うかを想像してシーンを構成しています」
ハーンをヘブンに落とし込む過程では、脚本のふじきみつ彦と人物像の構築について話し合いを重ねた。「史実では、ハーンは教師でもないのに松江にやってきた人物。彼を、聖人君子にしたくはないという思いがありました。彼も一人の人間です。彼が日本に来た時、どう思っていたかということをふじきさんとお話ししました。実は、教師として教えることに対する恐怖があったかもしれない。彼の心には、人間としての不安や心配が渦巻いていたんじゃないかと思います」
「小泉八雲ファンは、全国にたくさんいらっしゃいます。私たちも調べれば調べるほど、人間臭さを持った人で、まあまあめちゃくちゃな人です。わがままにも見えるし、好き放題言っていたりもする。それをそのまま“変な人”として見せても仕方がない。その裏には、緊張だったり不安があったりして、そういう行動に出ていたんだろうと思います。そういう思いを馳せて、この物語を作りました。これから、史実にあるエピソードもたくさん登場します。一見すると変人ですが、ヘブンは筋が通っていると思って行動をしています。そんなヘブンの姿を楽しみながら観てほしいです」
ヘブンを演じるトミーは「役づくりの鬼みたいな人」と表現する。「あまり苦労はしていないみたいです。トミーは日本語が上手な方で、オーディションの時は、逆にカタコトの日本語、話せないように見える演技を心がけていて、そんな彼の姿勢に感心しました」
また、橋爪は「トミーは役づくりを大切にする人。撮影シーンがあって、それまでに自分の役が何をしていたのかをすごく大切にしていて、役に入るための準備にすごく時間をかけています」とトミーの役に対する向き合い方を絶賛。「ハーンの書いたものを英語で全部読み尽くしていて、アメリカ時代に書いた、本になっていない記事まで読んでいました。日本に至るまでのハーンは、日記をつけるようなマメな人だったのですが、それを真似してトミーも日記を書き、葉巻が好きだったと聞いて煙管を吸ったり、ハーンになりきるために生活リズムを変えたり、歩く姿勢まで真似しているんです。そんな彼だからこそ、現場に立つとハーンに成り切り、何でもできるのだと思います」と厚い信頼を寄せていた。(取材・文:名鹿祥史)


