「ばけばけ」小日向文世「ペリーが憎らしい」勘右衛門がヘブンを斬りつけようした真意

連続テレビ小説「ばけばけ」(NHK総合・月~土、午前8時~ほか ※土曜は1週間の振り返り)で、高石あかり(高=はしごだか)演じるヒロイン・トキの祖父・松野勘右衛門を演じている小日向文世。2015年度前期放送の「まれ」以来、10年ぶりに朝ドラ出演を果たした小日向が、勘右衛門の魅力や第5週・22回(28日放送)で描かれたレフカダ・ヘブン(トミー・バストウ)との初対面シーンについて語った。
朝ドラ113作目の「ばけばけ」は、松江の没落士族の娘で、作家・小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の妻・小泉セツがモデルのオリジナルストーリー。島根や熊本などを舞台に、急速に西洋化が進む明治日本の中で埋もれていった人々や、怪談を愛する夫婦の何気ない日々を描く。
トキの祖父・勘右衛門は、幕末をたくましく生き抜いた生粋の武士。明治になっても、この国を守るのは自分だと信じ、髷(まげ)を結い、剣の稽古を続ける“ラストサムライ”。トキにはめっぽう弱い。
Q:「ばけばけ」出演が決まったときの気持ち
朝ドラ「まれ」への出演から、もう10年がたったんですよね。久しぶりに声をかけていただいて率直にうれしかったですし、「おじいちゃん役で」とお話が来たこともうれしかったです。諸先輩方でおじいちゃん役ができる人がたくさんいる中で、勘右衛門さんというおじいちゃん役をいただけたことが、とても光栄でした。
Q:演じる勘右衛門について
勘右衛門は、武士の時代を終えて、まだ武士の格というものにこだわっています。その中で、おトキを「おじょ」と呼び、本当にかわいがっています。
勘右衛門の魅力は、喜怒哀楽を表に全部出してくるところだと思っています。うまい具合に話を合わせるとか、大人として少し控えようと考えるようなことはなく、思ったことを全部口に出しているような人です。僕は、「ラストサムライ」とは、もっと生真面目で無口な人なのかと思っていたんですけれど、どんどんおっちょこちょいのおじいちゃんのようなシーンも出て来ます(笑)。
時代の流れからはちょっとずれちゃっているんだけど、僕個人としては、切ないけれども必死に頑張っている姿も、愛らしく感じています。
Q:トキ役・高石あかりの印象、松野家の人とのエピソード
高石あかりちゃんは、全身からパワーがあふれている感じがして、すごいなぁと思っています。疲れた顔を見たことがないし、自分の境遇とか、今の現場も含めて、自分が置かれている状況というものをすごく楽しんでいると思います。いつも、ニコニコしていますからね。
勘右衛門と司之介は、おフミさんがいなかったらとんでもないことになっていると思います。フミさんは、松野家のいわゆる扇の要の部分ですよね。池脇(千鶴)さんと岡部(たかし)君とは、休憩時間もよく3人でおしゃべりしちゃうんですけれど、それがとても良い時間なんですよね。お芝居って、やっぱりキャッチボールだから、それがお互いにやりやすい関係性になっていると思います。視聴者の方にも、「松野家はこの人たちでよかった」と見てもらえたら、一番うれしいですね。
Q:“ラストサムライ”としてヘブンと対峙するシーンを演じた感想
勘右衛門は、来日したヘブンに対して、「ペリー!覚悟ぉ!!!」と木刀で斬りつけようとするのですが、ヘブンが憎いのではなく、武士の時代を終わらせたペリーが憎らしいんですよね。ヘブンは、サムライの写真を持っていてリアルにサムライを見て感動してくれているのに、勘右衛門は飛びかかっていきますが、勘右衛門は大真面目なんですよ。「日本人を馬鹿にするなよ」という気持ちだと思いますが、誰も馬鹿にはしていないのにね(笑)。
Q:「ばけばけ」の見どころ、視聴者へのメッセージ
「ばけばけ」で、僕が一番気に入っているのは、松野家が貧しいながらも笑って過ごしているところです。親子のつながりみたいなのがしっかりと描かれている作品だし、そんな家族の「温かみ」みたいなのを受け止めてもらえたらいいなと思っています。
勘右衛門にとって一番大事なものは、家族だと思います。武士の格というものにこだわっているけど、それが時代の流れの中で少しずつ消えていくんですよね。そうなった時のよりどころとして、家族がものすごく大きな存在になっていくんじゃないかなと思っています。その中で、江戸の時代を引きずりながら頑張っている勘右衛門のさまも、見て楽しんでもらえたらと思います。
(編集部・倉本拓弥)


