『プレデター:バッドランド』最速レビュー:こんなプレデター見たことない!刺激的で泣ける新章開幕

銀河最強の狩人・プレデターを初めて主人公に据えた映画『プレデター:バッドランド』は、過去作の「狩る快感」はそのままに、未熟なプレデターの成長譚や異種族とのバディアクションといった新要素を盛り込んだ、シリーズ新章にふさわしい挑戦的な一本に仕上がっている。
強敵を求めて銀河を渡り歩いてきたプレデターだが、本作の主人公デクは未熟さゆえに一族から追放されてしまう。戦闘スキルはあるものの実戦経験は少なく、歴代の猛者たちと比べればその差は歴然。己の力を証明するため、宇宙で最も危険とされる惑星で“武者修行”のように狩りを重ねていく姿は、RPGや少年漫画の主人公のようでもあり心を熱くする。
デクが放り込まれた惑星「バッドランド」は、未知の危険生物がひしめく無法地帯。しかも、プレデター最大の武器であるハイテク装備のほとんどを序盤で失うという過酷な展開が待ち受ける。獲物の素材から武器や道具を生産する「モンスターハンター」的な要素も加わり、デクの成長がアクションとともにダイナミックに描かれ、サバイバル映画としての見応えも十分だ。
そんなデクの頼れる相棒として登場するのが、上半身しかないアンドロイド・ティアだ。寡黙で無骨なデクに対し、ティアは陽気でおしゃべり。天真爛漫なキャラクターを数多く演じてきたエル・ファニングのチャーミングな演技も相まって、ティアは今作屈指の愛されキャラクターに仕上がっている。破損したティアを背負いながら黙々と進むデクの姿は、まさに『スター・ウォーズ』のC-3POとチューバッカそのもの。プレデターとアンドロイドというこれまで想像もしなかった組み合わせが、新章の象徴的バディとして見事に機能している。
アクション面の進化も見逃せない。開幕早々、プレデター同士による白熱のソードバトルから始まり、デクとバッドランドの怪物たちとの死闘、アンドロイド小隊とのステルス戦など、戦闘スタイルは実に多彩だ。環境を利用した戦術やトラップなど、デクならではの知能戦も見どころで、過去作にはない新たなプレデターの狩猟を提示している。
そして本作は、シリーズ初の“泣けるプレデター映画”でもある。プレデターを主人公にしたことで、その感情の起伏や孤独、誇りと葛藤が初めて真正面から描かれる。一族を追放された若者の痛み、相棒ティアとの交流、そしてバッドランドでの思いがけない出会いを通して、デクは心身ともに“真のプレデター”へと成長していく。これまで「醜い顔だ」と言われてきたプレデターに胸を打たれる。
さらに、『エイリアン』シリーズでおなじみのウェイランド・ユタニ社の暗躍など、フランチャイズをまたぐ展開も必見。前作『プレデター:ザ・プレイ』で鮮烈な印象を残したダン・トラクテンバーグ監督らしいオタク心全開の演出が随所に光り、『エイリアン2』を想起させるオマージュ演出もファン心をくすぐる。今作が成功を収めれば、トラクテンバーグ監督版『エイリアンVS. プレデター』の実現も夢ではない。鑑賞後、そんな期待が自然と膨らむ。(編集部・倉本拓弥)
映画『プレデター:バッドランド』は11月7日(金)日米同時公開


