サム・ライミ、きっかけは『ドクター・ストレンジ』“復讐ヒロイン”にレイチェル・マクアダムス起用の理由

逃げ場のない無人島で人間の狂気と復讐心を炙り出す新作映画『HELP/復讐島』。メガホンを取ったのは、『死霊のはらわた』や『スパイダーマン』シリーズなどでおなじみの鬼才サム・ライミ監督だ。先が読めない前代未聞の“ノンストップ・復讐エンターテインメント”を完成させたライミ監督が、製作のザイナム・アジジと共に、製作当初のエピソードやキャスティング秘話を語った。(編集部・倉本拓弥)
【動画】パワハラ“クソ”上司と無人島で二人きり…『HELP/復讐島』予告編
主人公は、上司ブラッドリー(ディラン・オブライエン)からのパワハラに悩まされる会社員・リンダ(レイチェル・マクアダムス)。二人はある日、出張中の飛行機が墜落したことで無人島に漂着してしまう。負傷したブラッドリーは動けない一方で、リンダは食料の確保や火起こしなど、サバイバル番組で培ったノウハウを発揮していく。極限状態のなか、二人の力関係は徐々に逆転しはじめ、島での攻防の果てに、大どんでん返しが待ち受ける。
米大手映画批評サイト Rotten Tomatoes では、批評家スコアが94パーセントを記録し、サム・ライミ史上最高評価を叩き出している(28日現在)。スプラッターを得意とするライミ監督の大胆な演出も話題を呼び、新たな代表作として世界中から熱い視線が注がれている。
自分の手で正しく映画にしてみたい
Q:ものすごくクレイジーな映画で、まさにそこが狙いなのですが、そもそも本作の企画はどうやって始まったのですか?
サム・ライミ(以降、サム):そこはザイナブに話してもらいましょう。彼女が始めたのでね。
ザイナム・アジジ(以降、ザイナム):始まりは2019年、私が脚本家マーク・スウィフトとダミアン・シャノンと、特定の目的のないミーティングを持ったことでした。私は彼らの大ファン。私たちの好みは似ていますし、「一緒に映画を作るにはどうしたらいいか」と話したのです。彼らはいくつもの違ったアイデアを出してくれ、その中に「リンダ・リドルという女性がいる。彼女は『サバイバー』に夢中。働きすぎで、仕事ぶりを過小評価されているため、職場では面白くない思いをしている。そこに奇妙なことが起き、最悪の上司と一緒に無人島で生き延びることになる」という短いコンセプトがありました。私は「この映画を見てみたい」と思い、そこから一緒に詰めていって、プロデュースしてもらえないかとサムに見せたのです。すると、サムはすごく気に入ってくれて、自分が監督すると言ってくれたのですよ。それが始まりです。
Q:監督は企画のどのようなところが気に入ったのですか?
サム:脚本家たちが作り上げた、キャラクターたちの関係がとても良いと思いました。それに、常に変化していくことも。脚本を読みながら、次はこうなるなと思っていたら、違う展開になって驚かされるのです。「これはこういう話か」と思っていても、違う話になる。その間ずっと、私はページから目を離せませんでした。さらに、「この人は良い人だ」と思っていたキャラクターが途中で悪い人になったりするところも、すごくユニーク。これを自分の手で正しく映画にしてみたいと、私は思ったのです。
Q:ジャンルが混じり合い、ユーモアもバイオレンスもある本作を製作する上で、一番こだわったことは何ですか?
サム:リンダ・リドルというキャラクターの真実を見失わないことですね。ストーリーが展開していく中で彼女の秘密が明かされたり、彼女がとんでもないことをやらかすことになったりしても、観客がまだ彼女だと感じ、受け入れられるようにすることが大事。レイチェルがそれを見事にやってくれたおかげで、達成できました。
ディラン・オブライエンが放つジョーク&笑えるセリフの数々
Q:レイチェル・マクアダムスとディラン・オブライエンを起用した理由は?
サム:『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』でレイチェルと仕事をして、彼女のすばらしさに感嘆させられました。彼女はどんなことにも躊躇なく飛び込んでいきます。才能豊か、実力もあって、人柄も素敵。彼女とまた仕事をする機会があることを、私は望んでいました。そこにこの映画が現れたのです。
ザイナム:ディランは『メイズ・ランナー』シリーズの主演で知られていますが、『キャドー湖の失踪』を見て、彼の演技の奥深さに私たちは感心させられました。彼の演技にはいくつもの層がありました。そこはブラッドリーにとって重要。彼は薄っぺらい悪者ではありません。彼には弱い面もあります。映画の中で「モンスターは生まれつきではない。作られるのだ」というセリフがありますよね。それは両方のキャラクターに言えることなのです。
Q:たしかに、ブラッドリーは嫌な人ですが、どこかに優しさがあるかもとちらりと感じさせます。二人と仕事をしてみて、驚いたことはありましたか?
ザイナム:ディランはコメディーのセンスが抜群。タイミングも完璧です。彼は映画にたっぷりのユーモアを持ち込んでくれました。完成作にあるジョークや笑えるセリフの多くは彼が出してきたものなのですよ。それは驚きでしたね。
Q:本作はあっと驚くどんでん返しが待ち構えています。ラストは最初からあのように決まっていたのですか?
サム:最初からあのように決まっていました。そこは、私がこの映画に惹かれた重要な部分でもあります。
映画『HELP/復讐島』は全国公開中


