NHKのSF大作「火星の女王」は多言語で撮影 「きれいのくに」演出・西村武五郎が裏側明かす

NHK放送100年特集ドラマ「火星の女王」(NHK総合、BSP4Kで12月13日より毎週土曜よる10時~11時29分、全3回)の取材会が24日に都内で行われ、演出の西村武五郎が多言語で撮影された本作の裏側を振り返った。
本作は、直木賞作家・小川哲の小説を原作にしたSFサスペンス。火星に10万人が移住した100年後の世界を舞台に、未知の力を持った謎の“物体”が現れたことで新たな時代が動き出すさまを描く。演出を「きれいのくに」(2021)、「17才の帝国」(2022)などの西村武五郎らが務める。会見には西村のほか菅田将暉(白石アオト役)、シム・ウンギョン(ガレ-J0517役)、岸井ゆきの(チップ役)、滝藤賢一(北村役)も登壇した。
西村は放送100年を記念した本作について「テレビというものは昔から見えないものを見せてくれるものであり続けていた。自分も見たことがないものをお届けしたいという思いで集まった人たちとここまで作り上げてこられたことは感無量です」と本作の完成に感慨深げ。ドラマの軸となったのは未知なる物体と、地球から見ると見えない火星という未知の惑星という二つの未知だったといい、「見えないものをなきものにしないための戦いのドラマにした。未知なるものの中にロマンや恐怖や生活を描いている」と話す。
火星を表現するためロケ地にもこだわったといい、西村は「洞窟という洞窟、日が入る場所と入らない場所を撮影場所に選んだ」と振り返る。「火星が舞台なので、水が映り込んだら消していた」と制約もあったそうで「大谷石の石切場をロケ地に使い、VFXで描き換えたりもしました。あとは茨城の浄水場、ゴミ処理場も使いました」と話す。
本作ではヒロイン・リリ-E1102役に台湾出身のスリ・リンがオーディションで選出されたほか、同じく台湾からサンディ・チャン、韓国からシム・ウンギョン、ナイジェリアからデイェミ・オカンラウォンら各国の俳優が出演している。多言語で撮影された本作について、西村は「大変だったし一番それが大事なところ」と回顧。日本語、英語、韓国語、中国語の入り乱れる撮影環境にこだわりを持って臨んでいたようで、「ハリウッド映画とかでVFXが凄いとかはあるけれど、マルチ言語でやりとりするのはなかなかない。舞台でも難しい。おそらく映像作品だから許された一つのトライアルじゃないかなって思うんです」と持論を述べる。
西村は「多言語の人を集めてオーディションをするときに、英語とか日本でやるわけですけど、やっぱり母国語で演技をした時の生き生きとした感じはすごい。エネルギーが全然違う」とオーディションを見て、それぞれが母国語で演技をする必然性を感じたことも紹介。「実際やり始めると、『セリフ終わった?』『なんて言ってたの』という問題はたくさん起きた。リハーサルを多めにしました」ともいい、「大事なセリフの時に字幕というのはもどかしいなと思うこともあった」と言語の壁といかに対峙するかが本作の重要な課題であったことを明かしていた。(取材・文:名鹿祥史)


