ADVERTISEMENT

『べビわる』チーム参戦!『果てしなきスカーレット』ヒロインの戦いが超リアルなワケ

園村健介&伊澤彩織
園村健介&伊澤彩織

 世界的にも注目を集める細田守監督の4年ぶりの新作アニメーション映画『果てしなきスカーレット』(公開中)には、アクション界で注目を浴びる『ベイビーわるきゅーれ』シリーズの主演・伊澤彩織&アクション監督・園村健介コンビも参加している。これまで主に実写のアクション作品で活躍してきた二人が、本作で担った役割や裏側を語った。

【画像】園村健介&伊澤彩織、ゴールデンコンビ夢の顔合わせ

 本作は、シェイクスピアの戯曲「ハムレット」をモチーフに、国王の父を殺された王女・スカーレット(声:芦田愛菜)が、その復讐に失敗して墜ちた“死者の国”で看護師の青年・聖(声:岡田将生)と出会いつつ、再び復讐を果たそうとする旅を通して、“人は何のために生きるのか”を問いかける。スカーレットとさまざまな敵との戦いも見どころで、園村はアクションシーンの動作を設計するアクションコーディネーターとして、伊澤はそのアクションシーンの見本となる実写映像(ビデオコンテ=Vコン)でスカーレットのアクションを実演するスタントアクターとして参加している。

ADVERTISEMENT

『バケモノの子』参加がきっかけに

仲良しの二人

 園村は細田監督の『バケモノの子』(2015)で、冒頭のシルエットの演舞シーンのモーションキャプチャーコーディネーターを務めている。テレビゲームや3DCGアニメにも参加経験のある園村は、細田作品のCG制作に参加している映像制作会社デジタル・フロンティアとの仕事も多く、同社から『バケモノの子』に続いて声をかけられ、脚本を読んだ上で細田監督との打ち合わせが行われた。

 「細田監督が今回はいつもと違う表現をやりたくて、自分のような実写畑のアクション演出技法を取り入れてみたいとのことでした。それで絵コンテやキャラクターデザインや舞台設定などを見せていただき、各シーンの意図や見せ方を説明していただいたのが最初でした。僕の方からは脚本の解釈に差異がないかを確認した程度で、細田監督からは絵コンテの流れを元にしつつも、絵コンテ通りのアングルでなくていいので、自由に膨らませて作ってみてくださいとのことでした」(園村)

ADVERTISEMENT

 そこで園村が、Vコンでスカーレット役を演じるスタントアクターとして声をかけたのが、「付き合いが長くて声をかけやすいし、芝居としてアクションの中で感情表現ができる上で、最も適任」と信頼する伊澤だった。園村が所属するユーデンフレームワークス(『キングダム』「今際の国のアリス」シリーズなどのアクション監督の下村勇二が代表を務める会社)の作品に参加経験の多い伊澤は、園村のことを「アクションを始めた頃から10年位の成長を見守ってくださっている方の一人なので、心の中で師匠や兄弟子だと思っています」と語る。実は『ベイビーわるきゅーれ』シリーズで組んだのも、伊澤と高石あかり(※高=はしごだか)が映画『ある用務員』(2021・阪元裕吾監督)で演じた女子高生の殺し屋コンビが好評を得て、二人のダブル主演で映画『ベイビーわるきゅーれ』(2021)が企画された際に、伊澤が尊敬する園村を阪元監督に推薦したことがきっかけだったそう。

スカーレットの心情や体格からアクションを構築

映画『果てしなきスカーレット』よりヒロインのスカーレット

 アニメーションといえど作品との関わり方は実写と近く、園村は制作過程を「まず脚本を読み、戦うキャラクターや舞台設定を見た上で、このシーンのスカーレットはこのぐらいの体格だからこういう技を使おうとか、敵は鎧を着ているから少し重めに動こうといったふうに、スタントマンを使って各アクションシーンをカット割りまで含めて作り込み、それをVコンで撮って提出し、監督のイメージと違うところは修正するといったやりとりをしていきました」と振り返る。伊澤は「わたしも脚本を読んでスカーレットが誰とどういう心情で戦うのかを踏まえて演じてみて、“もっと女性が戦う時の重量感の違いを出してみて”“バランスを崩してほしい”“このシーンではどう動ける?”といった演出を受けながら、園村さんの頭の中のイメージを具現化すべく演じていきました」と、園村とのイメージをすり合わせつつ演じていった。最初のコーネリウス(声:松重豊)との戦闘シーンまでのVコンを制作し、中盤以降の騎馬戦や群衆の戦闘場面などのアクションシーンは、モーションキャプチャーなど、それぞれのアクションシーンにあわせた方法で制作し、伊澤は前半のVコンのみに参加したという。

 そうしてアニメーションとして完成した映像は、園村が「リアルなフルCGアニメの場合はモーションキャプチャーがかなり反映されますが、今回のような手書きアニメーション風のセルルックCGの場合、Vコンやモーションキャプチャーは、アニメーターの方が作画する上での効率的なガイドとして使われているように思います」と語る通り、Vコンやモーションキャプチャーをそのままトレースしたわけではなく、活かすところは活かしつつもアニメならではの演出を加えた上で映像化されている。Vコンは一つのカメラに対して効果的なアクションをアングルやカット割りまで具体的に提示し、モーションキャプチャーはアクションの振付的な動きの素材を360度カメラで撮って委ねる。おそらく細田監督も時間が許せば実写のアイデアをより取り入れるため、Vコンで撮ったアクションを基にしたかったようだ。

ADVERTISEMENT

細田監督のこだわりが強かったコーネリウス戦

スカーレットに襲い掛かるコーネリウスの声は松重豊

 完成した作品はVコンがすべて反映されたわけではないが、二人共に「不思議な気持ち」だそうで、園村は「よく見ると名残がありつつ、アニメらしさに変換されて統一性のある形に落ち着いた感じがします」と感慨深い様子。Vコンで作り込んだ、復讐に燃えるスカーレットが幼少期から戦うための訓練を積むシーンなどは成長過程の一部としてしか使われていないが、特にVコンが活かされていたのは、スカーレットが“死者の国”で初めて本格的に戦う一連のシーン。スカーレットが剣を持った3人の兵士、槍を持った2人の兵士、鎧を着た大柄な剣士と連戦後、父の敵の一人のコーネリウスと戦う一連は、二人にとっても特に思い入れが強いという。

 「この一連はすごく好きで、イチオシです。例えばスカーレットが槍を持った兵士と2対1で戦うシーンは一瞬ですけど、槍を構えた2人に挟まれたスカーレットがナイフを出すと、敵が足をあげたり飛び跳ねたりして挑発するような表現をする。そこにはこだわって何回も撮り直したVコンの動きがそのまま使われていますし、他のシーンでもスカーレットの目線の動きや拳の跳ね返り方など、細かいアイデアまで反映されていたのが嬉しかったです」(伊澤)

ADVERTISEMENT

 「コーネリウスのキャラクター性を反映したアクションは、細田監督もこだわりが強く、1回撮ったVコンを丸々作り直しています。キャラクターデザインを見て、最初は体格の大きい人物がやるような大振りや怪力的な動きで作ってみましたが、細田監督は“歴戦の勇士なのでシャープにしたい”と。そのため、使う技に戦闘経験の深みが伺える玄人好みのアクションにしていますが、綺麗でカッコ良い動きよりは、リアルで泥臭いものの方が監督の反応が良かった。例えば、スカーレットの足の甲を踏んで動かせないようにして攻撃するとか。逆に劣勢のスカーレットは力の差を出すため、動きがすごく粗いし、出す技を全部返される感じで、拳を拳で打ち返されたり、蹴った足裏を拳で弾き返されたりと、どうすれば印象に残るやられ方になるかを考えて組み立てています」(園村)

 園村、伊澤共に、新たな制作参加の形や表現の幅の広がりなどを感じて、得たものが大きかったという。本作は様々な新しい表現や技術に挑戦しているが、アクションシーンも実写のようなリアリティある動きにアニメならではのケレン味も融合した魅力的な作品となっている。新たな表現や相乗効果の可能性を感じるアニメ業界と実写のアクション業界の融合の機会は、今後も増えていきそうだ。(取材・文:天本伸一郎)

映画館で上映中の最新映画がお得に楽しめるキャンペーン実施中!|U-NEXT

※このリンクにはアフィリエイトタグが含まれており、リンク先での会員登録や購入などでの収益化を行う場合があります。

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • ツイート
  • シェア
ADVERTISEMENT