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「べらぼう」最終回に歌麿の「山姥と金太郎」を登場させたワケ 脚本・森下佳子が明かす

最終回より脚気に倒れた蔦重(横浜流星)と、見舞う歌麿(染谷将太)
最終回より脚気に倒れた蔦重(横浜流星)と、見舞う歌麿(染谷将太) - (C)NHK

 12月14日に最終回を迎えた横浜流星主演の大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」。本作で主人公の版元・蔦屋重三郎(横浜)にとってとりわけ重要な人物として描かれたのが、絵師・喜多川歌麿(染谷将太)。これまで劇中、多くの歌麿の名画が登場したが、最終回では「山姥と金太郎」を完成させる。この絵をドラマで最後に登場する歌麿の作品として選んだ理由を、脚本の森下佳子が語った。

【画像】蔦重の臨終にキャスト大集合!最終回

 大河ドラマ第64作「べらぼう」は、江戸時代中期、貸本屋から身を興して書籍の編集・出版業を開始し、喜多川歌麿、葛飾北斎、山東京伝、滝沢馬琴、東洲斎写楽らを世に送り出し、のちに江戸のメディア王として時代の寵児となった蔦屋重三郎の物語。歌麿は初回から登場(幼名は唐丸(演:渡邉斗翔))。江戸で明和の大火と呼ばれる大火事が発生し、取り残されていた身寄りのない彼を蔦重が助け、共に暮らすように。しかし5回で突然蔦重の前から姿を消し、第18回で再会したのち、歌麿の壮絶な生い立ちが浮かび上がる。歌麿のアイデンティティーを形作った存在が毒母(向里祐香)で、彼が絵師として変遷していくカギとして描かれた。

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 最終回(第48回)では、蔦重が脚気の病に倒れこのドラマらしい“べらぼう”な結末が描かれた。「山姥と金太郎」が登場したのは、脚気に倒れた蔦重を歌麿が力づけようとする場面。歌麿は泣きたい気持ちをこらえて「俺のおっかさんがタネなんだよ。金太郎は俺でさ」「おっかさんとこうしたかったってのを二人に託して描いておこうと思って」と説明し、「この先この二人がこの後どうなってくか見たくねえか?」と言う。

 「「山姥と金太郎」を、歌麿とお母さんとして解釈し、この絵を最後に登場させることは初めから決めていました。前半(18回)に歌麿の少年時代の話があって、お母さんと“おっぱい吸うかい”(母)、“出てくるの?お酒じゃないの”(歌麿)という会話があったと思いますが、実際に金太郎がおっぱいの代わりに酒を飲んでいる絵もあるわけで、この絵から逆算してこのシーンを作りました」

蔦重に見せた「山姥と金太郎」

 史実でも歌麿は蔦重と組んで多くの名作を生みだしたが、なぜドラマであまたいる絵師の中で歌麿に焦点を当てたのか。

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 「実は、蔦重がのちにいわゆるビッグネームとなる人物の中で、見いだし育て切った人は歌麿だけなんです。(恋川)春町や(朋誠堂)喜三二は蔦重と出会ったころからすでに“先生”でしたし、(北尾)政演、京伝先生も育てたのは(北尾)重政や鶴屋なので、そうやって見ていくと本当に歌麿しかいないんです。だからこそ、蔦重も執着する部分はあったんだと思うんですよね。蔦重にとっても歌麿は特別な存在だったんだろうなとは思います」

 歌麿は幼いころから蔦重を兄貴分として慕い、再会してからはビジネスパートナーとなる一方、歌麿の中に特別な感情が芽生え苦悩することとなった。歌麿の蔦重への決して届かない片思いの切ない描写は大きな反響を呼んだが、あらためて森下に二人の関係を問うとこんな答えが返ってきた。

 「歌麿が一番欲しかったのは安心できる場所だったと思うんです。それを蔦重に求め続けた。だけど、結局それは人が満たしてくれるものではないというか、自分の内から満たされないといけない、解決しないといけない。そういう風に見えたらという思いで書いていました。二人がどういう関係かっていうと……わたしは愛情とか友情とかっていうのが今一つ区別できない人間なんです。だからよくわからなくて。名前をつけなくてもいいかなと思います」

 大河ドラマ「べらぼう」には歌麿の「画本虫撰(えほんむしえらみ)」「婦人相学十躰(ふじんそうがくじってい)」などの制作過程が描かれ、話題に。さらには長年正体不明とされていた東洲斎写楽の役者絵を手掛けた一人であった、というサプライズも描かれ、終始視聴者をひきつけてやまない存在だった。(取材・文:編集部 石井百合子)

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