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「べらぼう」治済の能面は何を意味する?生田斗真の想像掻き立てる巧みさ、チーフ演出が語る

第37回より能面を手にする一橋治済(生田斗真)
第37回より能面を手にする一橋治済(生田斗真) - (C)NHK

 横浜流星主演の大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」(毎週日曜NHK総合よる8時~ほか)でいわゆる“ラスボス”として描かれた一橋治済。チーフ演出を務めた大原拓が、これまで意味深に登場していた治済の能面、そして最終回冒頭での衝撃的な末路の裏側を語った。

【画像】治済(生田斗真)衝撃の最期!

 江戸時代中期、貸本屋から身を興して書籍の編集・出版業を開始し、のちに江戸のメディア王として時代の寵児となった蔦屋重三郎(横浜流星)の生涯を描く本作。治済は、八代将軍・徳川吉宗の後継者対策に端を発して作られた「御三卿」のひとつである一橋徳川家の当主。吉宗の孫にあたり、十代将軍・家治(眞島秀和)は“いとこ”にあたる。次々と将軍後継者が早世する中、最後に残った治済の息子・家斉(城桧吏)が十一代将軍となり、治済は「将軍の父」としてすべての富と権力を得た。

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 治済は劇中、家斉の乳母であった大崎(映美くらら)らを使って邪魔者を次々と排除し、人を意のままに操る傀儡(くぐつ)師のような存在として描かれた。そんな治済の場面で印象的に用いられたのが能面。第47回では老中・松平定信(井上祐貴)らが治済の替え玉に仕立てた能役者・斎藤十郎兵衛(生田斗真の一人二役)が能面をつける場面もあったが、能面を用いた意図について大原はこう語る。

 「能面について(脚本の)森下(佳子)さんとお話ししていたのは、一橋家には立派な能舞台があったと。治済が能を好んでいたという史実もあるので、そうしたことからも能面を一つの小道具として用いたということがあります。十郎兵衛が能役者だからとか、彼が治済の替え玉になるから、という意図ではありません」

 治済と十郎兵衛、二人とも能面をつける意図を尋ねると「治済に関しては何を考えているのか視聴者に想像を膨らませていただきたかった。十郎兵衛について言うと脇役者なのでああした立派な面をつけられるのは喜ぶかなと。また、演出的には面をつける前、外した後の表情の違いを見せたかったという狙いがあります」

 これまで将軍候補だった徳川家基(奥智哉)、老中首座・松平武元(石坂浩二)、老中・田沼意次(渡辺謙)の嫡男・田沼意知(宮沢氷魚)、そして平賀源内(安田顕)ら多くの命を奪ってきた治済。失脚した老中・松平定信もまた治済の陰謀の犠牲者で、第46回から47回にかけて、定信が元大奥総取締・高岳(冨永愛)、火付盗賊改方・長谷川平蔵宣以(中村隼人)、意次の元側近・三浦庄司(原田泰造)、儒学者の柴野栗山(嶋田久作)ら治済に恨みを持つ者たちと手を組み、治済を葬るべく画策。蔦重まで巻き込んだその計画は紆余曲折を経て成功し、治済は阿波へと送られたが最終回の冒頭では逃走した挙げ句、雷に打たれて絶命するという衝撃的な最期を遂げた。

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最終回より。逃げ出した治済だが雷に打たれ……

 この展開について「いずれにせよ、治済は諦めない男なので。結局天罰が下ったというのは、初めから予定していたことです」という大原。

 「あのシーンの前後は治済が拉致されて視界を奪われ、さるぐつわもをまされ、手足も縛られて一切音とかも出せないという状態をまず確認して。そのうえでどうやって逃げるのかということを生田さんと殺陣師と相談しながら進めていきました。治済は追い込まれれば追い込まれるほど楽しくなるだろうし、史実では長生きするので、視聴者に“まだ生きるの?”“どういう復讐劇が始まるの?”と興味を持っていただけるといいですよね、という話をしました。そういった話は生田さんとも一致していて、治済の最後の一言もどこに向かって話すのか。やや天を仰ぐのか、正面にするのか、そういった話し合いをして。森下さんが常にドラマの中で“天”を意識されていたので、上の方を意識して最後のセリフを言う、という風に着地しました」

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 大原は、本作を通じてあらためて感じた生田の魅力について「何をするにしても泰然自若としているところ」と語る。

 「生田さんはとにかく動じないというか。何をするにしても泰然自若として、変に癖を強めないというんですかね。ある意味、視聴者が想像するようなキャラクター作りをしてくださったように思います。例えば、視聴者の方からも疑問として挙がっていた“能面を見ていることに意味があるのか”と言ったことについては、治済が能が好きだからという背景もあるわけですが、視聴者やキャストなど受け取る側が勝手に動く、忖度していく。とても上手に持っていく方だなと。そのあたりが、治済のキャラクターが増幅していった要因ではないかなと思います。演出部とも結構話したりはしたんですけど、とにかくやりすぎないようにしていきましょうというのが大きいところでした」

平賀源内(安田顕)を思わせる人影も……

 「それでいて、インパクトを残すのが生田さんの巧さ、表現力の豊かさ」とも言う大原。「視聴者が全てを感じ取っていく。治済が単に不気味だよね、怖いよねだけじゃないのは、森下さんの脚本の力もありますけど、台本上の「……」の間を生田さんがどう表現するのかという部分も多々ありましたし。芋を食べているだけで悪そうに見える人もなかなかいないですからね(笑)」と生田の巧みな演技に舌を巻いていた。(編集部・石井百合子)

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