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“人を不安にさせる天才”アリ・アスター、否定的なレビューは気にしない「賛否が激しくなる」最新作の狙い

来日したアリ・アスター監督
来日したアリ・アスター監督

 映画『へレディタリー/継承』『ミッドサマー』などのトラウマ作品を手がけ、“人を不安にさせる天才”とも称される鬼才アリ・アスター監督が、最新作『エディントンへようこそ』(全国公開中)の来日プロモーション時にインタビューに応じ、「あえて賛否が激しくなるように製作した」という本作について語った。

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 『エディントンへようこそ』は、コロナ禍でロックダウンされたニューメキシコ州の小さな町を舞台に、IT企業誘致を掲げる野心家の市長テッド(ペドロ・パスカル)と、マスク着用をめぐる小競り合いから選挙戦に立候補する保安官ジョー(ホアキン・フェニックス)の対立を描いた炎上スリラー。ネット炎上、陰謀論など現実社会のいまを、アスター監督らしいシニカルな切り口で反映している。

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 アスター監督は『ヘレディタリー/継承』『ミッドサマー』『ボーはおそれている』と「家族」という概念を軸に長編映画を撮ってきたが、最新作では「SNS」を主要なテーマとして扱っている。「SNSは、あまりにも私たちの生活の大部分を占めています。今や、SNSを使っているかどうかは関係なく、誰もがインターネットの中で生きている。インターネットによって世界そのものが変わってしまったし、その“言語”は日常生活の中に深く埋め込まれています。僕たちは皆、その影響を受けて変わってしまったんです」とアスター監督は語る。

(C) 2025 Joe Cross For Mayor Rights LLC. All Rights Reserved.

 「前提として、SNSは邪悪だと思っていません。あくまで“道具”なのです。その使用方法が人類にとって壊滅的だったというだけで、善のためにも、つながりのためにも、同様に使えるはずなんです。でも実際には、非常にシニカルな形で“武器化”されてしまった。この映画には、『この道を進み続けたいのか?』という問いが内在しています。世界はますます苛立たしい場所になっていて、『エディントンへようこそ』もまた、同じように苛立たしさを感じるように設計されています」

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 SNSが発展した今、映画のファーストリアクションやレビューは瞬時に全世界へと拡散される。賞賛するレビューもあれば、時には辛辣な低評価も見られる。アスター監督は、自身の作品に対するSNSレビューをどのように捉えているのだろうか。

 「基本、否定的なレビューは気にしないタイプです。『エディントンへようこそ』に関して言えば、分断をテーマにした映画なので、賛否が激しくなるように意図して製作しています。批評の中には、私の意図を誤解していると感じるものもあります。時には、映画の途中で結論を決めてしまったように感じるレビューもある。というのも、この作品は中盤で非常に大きく方向転換するからです。最後まで観ないと、本当の意味では理解できない作品だと思っています」

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 アスター監督が手がけた長編3作は、いずれもラストショットが観客に強烈なインパクトを与えた。アスター監督は「オープニングとエンディングは本当に重要です。特にラストショットは、一番鮮明に残るものですから。今回のエンディングも、この映画で最も重要なショットです」と強調する。「この映画が何を語っているのか、核心はラストにあります。私は、単に読み解けないもの、観客に考察を強いるものを作りたかった。明確な答えは提示していません。それは、私自身が明確な答えを持っていないからです」

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 本作は“炎上スリラー”とカテゴライズされているが、劇中では西部劇、コメディー、アクションとさまざま要素がうまく組み合わさっている(※アスター監督はもともと、次回作を西部劇と表現していた)。アスター監督は「ジャンルで遊ぶのが好きなんです」と笑い、「ひとつのジャンルから別のジャンルへ飛び移りながら、それでも全体としては調和の取れた作品にしたい。陰謀スリラー、政治ドラマ、西部劇、そういった要素を扱っていますが、何よりもこの映画は“風刺”です。政治風刺であり、社会風刺であり、ダークコメディーなのです」と映画を表現した。

 毎回、ジャンルを超越した予測不能な新作を放つアスター監督。次回作について尋ねてみると、具体的な内容は避けつつ「ひねりのあるヒッチコック的スリラーに興味があります」と告白。世界にその名を知らしめた『へレディタリー/継承』『ミッドサマー』のようなホラー映画を再び撮る可能性については「いずれは作ると思います。まずは、良いアイデアが必要ですね」と笑顔で答えていた。(取材・文:編集部・倉本拓弥)

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