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猫を預かって人生激変!名匠がエンタメに全振りしたオースティン・バトラーの痛快作『コート・スティーリング』

オースティン・バトラーが猫から始まるトラブルに巻き込まれていく『コート・スティーリング』
オースティン・バトラーが猫から始まるトラブルに巻き込まれていく『コート・スティーリング』

 『ブラック・スワン』『レスラー』の鬼才ダーレン・アロノフスキー監督が、オースティン・バトラーを主演に迎えた新作映画『コート・スティーリング』が来年1月9日から日本公開。強烈なインパクトを伴うビターなドラマに定評のあるアロノフスキー監督だが、隣人の猫を預かった男に次々と降りかかるトラブルを描いた本作は、そんな監督が“エンタメに全振りするとこうなるのか!”と嬉しくなる、ハードで楽しさに満ちたクライムエンターテインメントに仕上がった。

【画像】オースティン・バトラー主演『コート・スティーリング』場面写真

 “楽しい”とは言っても、オースティンが演じる主人公ハンクの人生はハッピーとは言い難い。メジャーのドラフト候補になるほど将来を有望視される野球選手だったが、凄惨な交通事故で夢破れ、心と体に深い傷を抱えながら、ニューヨークのバーテンダーとして贔屓の野球チームの勝敗に一喜一憂する日々。恋人のイヴォンヌのおかげでそれなりに平和な生活を送っているが、ままならない思いを抱えている。そんな彼に、こんな不幸ってある!? と笑えてくるほどのトラブルが降りかかるところから映画は走り出す。

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 始まりは、変わり者のパンクな隣人ラス(マット・スミス)の猫を預かったこと。そこから、ラスを探すマフィアたちに次々と痛めつけられるハメになったハンクは、裏社会の大金が絡んだトラブルの連鎖に巻き込まれていく。

イメージを一変させたマット・スミスが演じるラスとオースティン・バトラーが演じる主人公ハンク

 まず何と言っても、オースティン・バトラーが演じる、等身大の主人公が愛おしい。潰えた夢と抱えたトラウマに悩み、酒に頼らずにいられない日々を送るハンク。そこそこ幸せだが、何をすればいいのかわからない。そんな青年像が共感を誘う。酔っ払って潰れる姿も妙にリアルで、近年の出演作で常に爪痕を残し続けるバトラーの演技を追っているだけで楽しい。

 ワルたちのなかにあって、ハンクの助けとなるのが、ゾーイ・クラヴィッツ演じる恋人のイヴォンヌだ。救急救命士としてハードな日々をすごしながらハンクを支える、頼れるパートナーである彼女は、猫と並んで映画の良心として彼を支える。その存在感は『THE BATMAN-ザ・バットマン-』で演じたキャットウーマン並みに強くてセクシーなヒロイン像を体現していると言っても過言ではない。そんな彼女にもハードなトラブルが待ち受けているのだが……。

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ゾーイ・クラヴィッツが演じるイヴォンヌも魅力的なキャラクター

 映画を包む楽しさの理由は、アロノフスキー監督が、出世作『π』(1997)の制作時に過ごしたという、ニューヨークのイースト・ヴィレッジをメイン舞台に選んだことが大きいだろう。本作の舞台は、ずばり1998年のニューヨーク。劇中で再現された当時の街の空気は、どこか無邪気で自由な空気に満ちている。次々に登場する悪党たちのルーツや宗教的な背景もさまざまで、そんなところにもニューヨークらしさがのぞく。

崖っぷちトラブルに巻き込まれたハンクに逆転のチャンスはやってくるのか

 タイトルの“コート・スティーリング”とは、盗塁失敗を意味する野球用語で、チャンスを得ようとして逃すという意味を持つ言葉。ぬぐえない罪の意識とトラウマを抱えながら、謂れのないトラブルの連続でどん底に落とされるハンクの物語は、あまりにもハードな贖罪の試練でもあり、アロノフスキー監督らしい作家性がのぞくが、それでも最後には痛快な余韻を残す味わい深い一本だ。事件のカギとなる猫は、少しかわいそうな目に遭うが、ふわっとした毛並みのかわいらしさは格別で、全編にわたって登場するので猫好きを虜にすることは間違いない。(編集部・入倉功一)

映画『コート・スティーリング』は2026年1月9日より全国公開

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