齊藤京子、カンヌデビューもファンとの距離は不変 “恋愛禁止”破り訴えられるアイドル役に挑戦

ストイックな姿勢と圧倒的な歌唱力、抜群のバラエティー特性で、人気アイドルグループ・日向坂46を支えた俳優・齊藤京子。そんな彼女が、初主演映画で“アイドル”を演じる。新作映画『恋愛裁判』で齊藤が演じるのは、業界の常識と自身の感情の狭間で葛藤する、アイドルグループの絶対的センター。本作でカンヌ国際映画祭デビューを果たし、俳優としても新たなステージに踏み出した齊藤の快進撃の裏にはファンへの一途で変わらぬ思いがあった。(編集部・入倉功一)
『恋愛裁判』は、国際映画祭で活躍する名匠・深田晃司監督が、実在の裁判から着想を得て企画・脚本も手掛けた新作。アイドルグループ「ハッピー☆ファンファーレ」(通称:ハピ☆ファン)の不動のセンター・山岡真衣(齊藤)が、“恋愛禁止ルール”を破ったことで所属事務所から訴えられ、自己の尊厳をかけた“裁判”に挑む。
アイドル経験者が書いたのかと…
Q:本作の脚本を読んだ時、どんな部分に惹かれましたか?
齊藤京子(以下、齊藤):物語が面白いのはもちろんですが、ト書き(セリフ以外の文章)が「相当アイドルに詳しい方が書かれたんだな」と思える内容だったんです。ライブ前にOverture(オーバーチュア)が流れて客席が盛り上がる様子やリハーサルの細かな流れや空気感など、ちょっとした描写の一つ一つが、アイドル経験者が書いたのかと思うくらい詳しく書かれていて本当に驚きました。元アイドルとして、そこにリアリティーを出したいと思ったんです。
Q:グループ全体のことを考えて活動する真衣は、日向坂46時代の齊藤さんと重なる部分がある気がします。
齊藤:まさにその通りです。当時から「自分が自分が」となってしまったら、アイドルはやっていけないと思っていました。坂道グループにもそういう子たちが集まっていて「グループが上に上がれば、個人の知名度も上がっていく」という考え方でした。
Q:真衣は不動のセンターですが、メンバー全員と仲が良いですよね。メンバー間の格差や軋轢を強調するようなことがない物語も印象的でした。
齊藤:本当に仲が良いアイドルグループってたくさんあるんです(笑)。日向坂がまさにそうで、メンバーの仲の良さもファンの皆さんに愛されている部分だと思います。真衣がメンバーの誰ともぶつからない描写も、そうしたリアルな部分が反映されていると思います。
“ハピ☆ファン”への思い
Q:『恋愛裁判』というセンセーショナルな題材ですが、ハピ☆ファンの物語は、日向坂の活動を見守っているように爽やかな気持ちになります。
齊藤:いろんなグループの子が集まっているなか、私はグループを卒業していたので、顔合わせでは緊張していました。でも、撮影を重ねるうちにみんなとめっちゃ仲良くなって。笑いのツボだったり、お互いの温度感みたいなものが全部一緒で「本当にこんなグループあったら最高なのに」って思いました。「めっちゃ好き」って素直にみんなに伝えていたので、その雰囲気が出ていたらうれしいです。なんなら本当に“ハピ☆ファン”でデビューしたいくらいです。
Q:同時に、握手会のレーンに誰も並ばないような、シビアな場面も描かれています。そういった場面で、ご自身の経験が役立ちましたか?
齊藤:特にライブや握手会のシーンは、アイドルを経験していなければ、お芝居といっても戸惑っていたと思います。それこそドキュメンタリー映画のようなリアリティーは、過去の経験があったからこそ出せたと思います。また、短いリハーサル期間で歌やダンスを覚えられたのも、アイドル時代のおかげですね。その中でも、唯一アイドル経験のない小川未祐さん(大谷梨紗役)も、経験者のようにアイドル役を全うされていて、素晴らしい俳優さんだなと思っていました。
“恋愛禁止ルール”海外の反応
Q:倉悠貴さんが演じる恋人・敬との恋愛描写はとてもピュアで素敵でした。
齊藤:実は倉さんとは、撮影中ほとんど喋っていなかったんです。ただ、真衣と敬は親密だけどキャッキャしたカップルではないので、その距離感が逆に良かったのかもしれません。
Q:一方、後半の裁判シーンはとても孤独で苦しい場面でした。
齊藤:撮影はほぼ順撮りで、アイドルのシーンをほぼ終えてからの裁判シーンでした。本当に別の作品かと思うくらいの対比になっていて、2時間があっという間に感じられる作品になっていると思います。
裁判シーンの撮影では、本当に仲間がいなくなってしまったような心細さのなかで、周囲の視線もとても怖くて。メイクも作り込まず、あえて自然なままにして撮影に挑んでいます。
Q:カンヌ映画祭にも参加されましたが、海外での「恋愛禁止ルール」への反応はいかがでしたか?
齊藤:やはり海外の方からすると“恋愛禁止ルール”というもの自体が不思議というか「アイドルが恋愛して裁判になるなんてどういうこと?」という意見もありました。アイドルに対する“リアルに恋する”という概念も新鮮だったらしくて。そうした、ある意味で常識としてあるものに対して「なんでだろう?」と見つめ直す作品になっていると思いますし、深田監督のメッセージも伝わる作品になっていると思います。
“きょんこいず”との関係は永遠
Q:カンヌをはじめ国際映画祭のレッドカーペットを歩かれました。周囲の反応はいかがでしたか?
齊藤:みんな「すごいね」と言ってくれたのですが、ファンの皆さんからの反響が一番大きかったんです。本当にたくさんの嬉しい言葉をいただきました。
Q:劇中でも「私を守ってくれたのもファンの人たちだった」という真衣のセリフが印象的です。齊藤さんにとって、ファンの皆さんはどのような存在ですか?
ファンの皆さんがいてくれるからアイドルとして活動できましたし、今の私がいるのも皆さんのおかげという思いは変わりません。卒業してもたくさんの方がファンでいてくれて、バースデーイベントを開催させていただいたり、“きょんこいず”(ファンの総称)との絆を実感しています。
卒業後は仕事環境が変わりましたが、ファンの皆さんとの向き合い方は何も変わっていません。皆さんからもメッセージアプリなどを通じて、“カンヌに行っても自分たちとの付き合い方が変わらないから安心する”ってめっちゃ言われます。その言葉に私も安心していますし、これからどんな立場になっても、ファンの皆さんとは、ずっと“きょんこ”と“きょんこいず”でいたいって思います。
Q:最後に、本作を経て今後挑戦したいことはありますか?
齊藤:初めての主演映画でカンヌまで連れて行っていただき、深田監督やスタッフの皆さんには感謝しかありません。素晴らしい俳優になって恩返しをしたいと思いますし、いつかまたカンヌに戻ってきたいという目標もできました。そして、日向坂を卒業する時に秋元康先生からいただいた卒業曲である「僕に続け」という言葉を胸を張って言えるような存在になっていきたいです。
映画『恋愛裁判』は1月23日より全国公開
ヘアメイク:木戸出香/スタイリスト:高橋美咲(Sadalsuud)※高=はしごだか


