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アカデミー賞、有力は『ワン・バトル・アフター・アナザー』 作品賞&監督賞予想

第98回アカデミー賞

『ワン・バトル・アフター・アナザー』デジタル配信中 権利元:ワーナー ブラザース ジャパン 2/4発売 ブルーレイ&DVD発売元/販売元:ハピネット・メディアマーケティング
『ワン・バトル・アフター・アナザー』デジタル配信中 権利元:ワーナー ブラザース ジャパン 2/4発売 ブルーレイ&DVD発売元/販売元:ハピネット・メディアマーケティング - (C)2025 Warner Bros. Entertainment Inc. and Domain Pictures, LLC. All Rights Reserved.

 第98回米アカデミー賞のノミネーションが発表された。本投票はアメリカ時間2月26日から3月5日まで。アカデミー会員がまだ観ていない作品を見たり、考えを固めたりする時間は、たっぷりある。今後、大きな影響力を持つ全米製作者組合賞(PGA)やアクターズ・アワード(旧・全米映画俳優組合賞)の発表も控える。それを踏まえつつも、現段階での作品賞・監督賞の予想を考察してみた。(文/猿渡由紀)

【画像】『ワン・バトル・アフター・アナザー』キャラクタービジュアル

 今回のノミネーションで特筆すべきは、『罪人たち』が16という史上最多のノミネーションを獲得したこと(これまでの記録は14)、そして、昨年10部門で候補入りした『ウィキッド ふたりの魔女』の後編である『ウィキッド 永遠の約束』が完全スルーされたことだろう。『永遠の約束』には映画のために書かれた新曲が2曲あるのだが、歌曲部門においても無視された。

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 『ウィキッド』には巨大なファンベースがあるため、視聴率を気にするアカデミーとしてはショックだったはず。しかし、『罪人たち』、13部門で候補入りしたレオナルド・ディカプリオ主演の『ワン・バトル・アフター・アナザー』、ブラッド・ピット主演の『F1(R)/エフワン』はすべてヒット作だし、『フランケンシュタイン』も先日Netflixが発表した2025年下半期の「エンゲージメント・レポート」(視聴データ)で多くの視聴者を惹きつけたことが明らかになっている。『マーティ・シュプリーム 世界をつかめ』も、A24作品で過去最高の全米興行成績を上げてみせた。一般人に興味を持ってもらえる土壌は多少なりともあるはずだ。

 作品賞のその他候補作は『ハムネット』『トレイン・ドリームズ』『ブゴニア』、そして外国語映画である『センチメンタル・バリュー』(ノルウェー)と『シークレット・エージェント』(ブラジル)。外国語の映画が2本も作品部門に入ったのは、近年のアカデミーの多様化を表すものと言える。

 この中で現在フロントランナーと考えられるのは、ポール・トーマス・アンダーソン監督の『ワン・バトル~』だ。社会派の要素あり、アクションあり、ユーモアあり。原作はだいぶ前(1990年)に書かれたにもかかわらずタイムリーさもありで、アンダーソンのフィルモグラフィーの中でも「最高傑作」と言われている。上映時間は約2時間40分とやや長いものの、娯楽性としっかりしたストーリーがあり、これまでの彼の作品に比べて入っていきやすい。

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映画『罪人たち』より デジタル配信中 権利元:ワーナー ブラザース ジャパン合同会社 ブルーレイ&DVD発売元/販売元:株式会社ハピネット・メディアマーケティング(C)2025 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND DOMAIN PICTURES, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

 ノミネーション総数では『罪人たち』に負けるとは言え、『ワン・バトル~』は、ここまでのアワード戦線(全米批評家協会賞、NY批評家協会賞、LA批評家協会賞など)で作品賞をごっそりとつかんできた実績もある。それらのアワードは主に批評家、つまり映画を「観る」ことを仕事とする人たちが投票するもので、映画を「作る」人たちの団体であるアカデミーの投票者とはかぶらず、必ずしも指標にはならないのだが、これほどまでに圧倒的な支持を受け、受賞実績を築いてきたというのは、2023年の『オッペンハイマー』を彷彿とさせる。ただ、オスカー受賞には「盛り上がりのピーク」も大事であり、早くにそれが来てしまって失速、というケースもある。『オッペンハイマー』同様、『ワン・バトル~』もそこを逃れられるか(逆に昨年の『ANORA アノーラ』は後半になって急速に盛り上がり、その勢いで受賞となった)。

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 作品が評価されたのは当然として、『オッペンハイマー』の受賞の裏には、業界で長いこと尊敬されてきたクリストファー・ノーラン監督に“いよいよ彼に値する賞を授与する時”との思いもあったと思われる。そこは、4度目の監督賞ノミネートとなるアンダーソンにも通じる。

『ワン・バトル・アフター・アナザー』のポール・トーマス・アンダーソン監督(写真右)(C)2025 Warner Bros. Entertainment Inc. and Domain Pictures, LLC. All Rights Reserved.

 ライアン・クーグラーももちろん同列に語られる名監督。ヴァンパイアもの、ホラーというジャンルで人種差別、奴隷制度の歴史を語り、ブルース音楽も盛り込んでみせた『罪人たち』は、彼にしか作れない映画だ。しかし、『罪人たち』がアメリカ在住の人たちにより強く響いたことは、北米と北米外の興行成績を比べれば明白。アカデミーが過去のようにアメリカ在住の、ハリウッド映画を作っている人たちの団体だったら最有力だったかもしれないが、この10年に海外在住者が大幅に増えた今はどうだろうか(去年、新会員に招待された人を見ても、5割以上は北米外在住だった)。

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 その流れで、監督部門も現段階ではおそらくアンダーソンが受賞、クーグラーは次点かと憶測される。ただし、あくまで「現時点では」だ。というのも、この部門の受賞者は、かなりの高確率で、全米監督協会賞(DGA)の結果と一致するのである。昨年も、『ANORA~』のショーン・ベイカーが両方を受賞した。

 DGAの発表はアメリカ時間2月7日。ここでどんでん返しがあるかどうかが鍵となる。DGAの候補5人とオスカー監督部門の候補5人のうち、4人(アンダーソン、クーグラー、『ハムネット』のクロエ・ジャオ、『マイティ・シュプリーム~』のジョシュ・サフディ)は同じ。違っているのは、5人目にアカデミーは『センチメンタル・バリュー』のヨアキム・トリアー、DGAは『フランケンシュタイン』のギレルモ・デル・トロを選んだこと。

 つまりこの二人の監督賞受賞の確率は低いと言っていい。しかし、『センチメンタル~』『フランケンシュタイン』は俳優部門にも入っており、複数部門で受賞する可能性がある。

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