「岸辺露伴」チームが描く妖怪スネコスリの裏側 高橋一生「何通りもの解釈ができる」

ドラマ・映画「岸辺露伴は動かない」シリーズの渡辺一貴監督、主演・高橋一生コンビによる映画『脛擦りの森』(読み:すねこすりのもり)が公開中だ。本作の舞台裏を、渡辺監督と高橋がオフィシャルインタビュー内で明かしており、渡辺監督は題材となる妖怪・スネコスリの描写について「映像表現としては“妖怪を妖怪ビジュアルとして描かない”ことを目指した」と語っている。
本作は、渡辺監督が4年間過ごした岡山で森に足を運び、この地に古くから伝わる物語からインスピレーションを得たオリジナル脚本のストーリー。人里から離れた深い森で、足に傷を負った若い男(黒崎煌代)は、女の甘い歌声に導かれ、古い神社にたどり着く。そこには謎の男(高橋)と若く美しい妻(蒼戸虹子)が暮らしており、若い男はそこで夢のような、時の止まったような時間を過ごす。
妖怪スネコスリについて、渡辺監督は「スネコスリは、人に危害を加える妖怪でも、何かの恨みから生まれた妖怪でもなく、「旅人の足にじゃれつき、まとわりついて転ばせてしまう」という伝承のように、どちらかというと可愛らしいイメージを持っている方が多いように感じます」と説明しつつ、「今回はそのようなスネコスリの特質は大事にしつつ、映像表現としては“妖怪を妖怪ビジュアルとして描かない”ことを目指しました。見た目で驚かせるのではなくて、時間の経過の中で怖さというか、小さな違和感、少し変だな、という感覚がじわじわと増幅されていく。そういう存在にしたいという考えがベースにありました」と本作での意図に触れる。
一方、高橋は「(渡辺)一貴監督が妖怪をこのような解釈によって脚本にされたということが非常に興味深かったです。妖怪というものが、どういう風に物語化され、語られ、伝記になっていくのか、いわゆる“継承”の要素がこの脚本には描かれています。それに余白が多い分だけ、演じる僕たちも、映画をご覧になる方々も、何通りもの解釈ができると感じました」と渡辺ならではの脚本の印象を話す。
高橋と渡辺監督は2020年に始まった「岸辺露伴は動かない」シリーズや、NHKの大河ドラマ「おんな城主 直虎」(2017)、単発ドラマ「雪国 -SNOW COUNTRY-」(2022)など数々の作品で組んでおり、高橋は「一貴監督とは長くご一緒していますが、芝居において余白を信じてくださる方」と信頼を寄せる。本作では若い男と老人を演じ分けているが、そのアプローチにおいては人物デザイン監修・衣装デザインの柘植伊佐夫ら「岸辺露伴」シリーズのスタッフの力も大きかったようだ。
「まず老人について考え、若い男はそこから逆算して考えていきました。(人物デザイン監修・衣装デザインの)柘植さんとは『岸辺露伴は動かない』シリーズでもご一緒していますから、まずこの男がどんな人物なのか? どのような服を着ているのが良いのかということを話す中で、過去にこの男に何があったのかを想像していく。彼が山に深く入り込んでしまったところから始まって、あの家で暮らすようになり……そこまでの流れを一貴監督や柘植さんをはじめとするスタッフの皆さんと話しながらつくっていきました。柘植さんの担当されている“人物デザイン”は、他の作品とはまた違う、独自で重要な役割を占めているんです。俳優だけでなくそれぞれの部署がそれぞれ孤独に作業しなければならないことは多いんですけれど、柘植さんたちがいることで、そういう作業を分担したり、共有したりしながら進めていくことができる。それはチームが一丸となって作品をつくる上では本当に心強いことなんです」
渡辺監督も柘植とのやりとりを「それぞれのキャラクターについては、脚本を踏まえながら雑談を重ね、意見を出し合って決めていきました。特にさゆりの巫女姿に関しては、完璧な着こなしではなく少し着崩して違和感を出すなど、微妙なズレやノイズを感じさせたいという方向性の元、試行錯誤を繰り返しました。また、厳寒の冬山で撮影するので、防寒対策をしっかりするというのも扮装の重要な課題でした」と回顧。「柘植さんは“もうひとりの監督”とでもいいますか、僕とは違うアプローチから作品に対する問いかけをしてくださるので、とても刺激になります。人物設定や衣裳デザインを構築すると同時に、作品にとってそのキャラクターがどうあるべきか、キャラクターの周囲には何を配置すればよいのか、それを撮影するにはどんな準備が必要なのかまで思考を広げ、トータルなご提案をしてくださるんです」と柘植の貢献の大きさを強調する。
高橋演じる老人のメイクには毎回4時間ほど費やされ、高橋は「最初は特殊メイクをやりすぎてしまうことで、身体に制約がかかり芝居の邪魔にならないだろうかという心配はありました。ただ、『岸辺露伴は動かない』シリーズでもお世話になった特殊メイクの梅沢(壮一)さんの技術が素晴らしく、まったく負荷がかからなかったんです。顔と首、手まで特殊メイクで作っているんですけれど、まったくブレないですし、芝居をする上でまったく邪魔にならない。最初に抱いていた懸念は、初日に払拭されました」と振り返っている。
“謎の男”の正体を巡るミステリーに加え、渡辺監督が映した神秘的な森の映像の数々が奇妙な余韻をもたらす61分となっている。(石川友里恵)


