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「仮面ライダーアギト」25周年、“天使”から生まれた怪人 出渕裕が明かすアンノウン誕生秘話

「真アギト展」よりクイーンアントロード フォルミカ・レギアの立像(編集部撮影)
「真アギト展」よりクイーンアントロード フォルミカ・レギアの立像(編集部撮影) - (C)石森プロ・東映")

 今年25周年を迎えた平成仮面ライダーシリーズ第2弾「仮面ライダーアギト」(2001~2002)で、怪人・アンノウンのデザインを手がけた出渕裕。当時、15年ぶりの東映特撮に挑んだ出渕は、白倉伸一郎プロデューサーと再びタッグを組み、「天使」から動物モチーフへシフトしたアンノウンたちを誕生させた。顎を強調した力強いシルエット、古代文明の息吹を宿す衣装、そして初代ライダーや石ノ森作品へのオマージュ……。4月24日に開幕した「真アギト展」では、当時の貴重なデザイン資料の数々が展示されている。東京会場の開幕に合わせて、出渕がインタビューに応じ、造形技術の進化を実感しながら描き上げた、渾身の怪人デザインの裏側を振り返った。(取材・文:トヨタトモヒサ)

【動画】「アギト」オリキャスが25年分の濃厚トーク!『アギト-超能力戦争-』座談会

15年ぶりとなる東映特撮のキャラクターデザイン

「真アギト展」メインビジュアル - (C)石森プロ・東映

ーー「仮面ライダーアギト」放送から25年が経過した、現在の心境はいかがですか?

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出渕裕(以降、出渕):「そんなに時間が経ったんだ」と。当時、生まれた子どもが25歳になるわけでしょう。自分としては、25年前の作品だという感じはしてないんですよね。仕事としては、初めての仮面ライダーだったこともあり、今でもとても強い思い入れがあります。

ーー東映特撮でいえば、「超新星フラッシュマン」(1986~1987)から15年ぶりの参加で、出渕さんはその間に、「機動警察パトレイバー」や『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』など数々の人気作品を手掛けられており、まさに満を持しての登板といった感じがありました。

出渕:「フラッシュマン」当時、プロデューサーだった鈴木武幸さんに「しばらくお休みをください」と言ったら、これが思いのほか長い休みになってしまって(笑)。ただ、実現はしなかったけど、その間にも鈴木さんがゲーム会社と組んで進めていた格闘系ゲーム系の作品にデザインとして関わったりもしていました。その時のアシスタントプロデューサーが白倉伸一郎さんで、彼とは、そこで会っていたんですよね。

ーーでは、その縁が「アギト」への参加に繋がったと?

出渕:前作の「仮面ライダークウガ」にも、当時、東映にいた高寺成紀くん(※高=はしごだかが正式表記)からそれとなく声がかかっていたんです。僕の記憶だと、既に何人かの方が描いたデザインがある程度集まっていて、「いくつか手伝うことはできると思う」なんて話をしていたけど、そのあとなんとなく有耶無耶になって。その後、鈴木さんから「前回はごめんね。今、白倉くんと次のライダーやっているから、どうかな」「是非やらせてください」という流れで、「アギト」に参加することになりました。

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ーー白倉プロデューサーとはどのように作業を進めて行ったのでしょうか?

出渕:コンセプト自体は、白倉さんが「今回の怪人は天使みたいな存在」と固めていました。それを受けて、僕のほうで“グロテスク天使”みたいな方向性で、いくつか描いて探ってみたんだけど、どうもピンと来なかったようで……。それで従来と同じく動物モチーフで、ということになりました。そこは仮面ライダーなので、「やっぱりそうなりますよね」と。それが本当に初期段階です。後は、企画の時点で上位の怪人と通常の怪人の2系統が登場することも野の時点で予定されていたと思います。

ーーでは、それがエルロードとロード怪人(=アンノウン)に。

出渕:ええ。その両者に何等か共通項はあるにせよ、デザインラインは変えたほうがいいんじゃないかと。エルについては、主に草なぎ琢仁くん(※なぎ=弓へんに剪)が担当することになり、アンノウンに関しては、白倉さんから「動物を模した怪人じゃなくて、この天使たちの姿をもとに動物が作られた」という解釈を聞いて、あくまで裏設定だけど、そういうアプローチの仕方は面白いなと思いましたね。

アンノウンを顎で特徴付け

「真アギト展」よりヘッジホッグロード エリキウス・リクォールのヘッド(編集部撮影) - (C)石森プロ・東映

ーーアンノウンに関しては、動物モチーフを前提にどのように取り組まれましたか?

出渕:毎回異なる動物モチーフになるとはいえ、パッと見の統一感は欲しい。今回、タイトルが「アギト」だし、だったらと顎で特徴付けることにしました。顎の骨だったり、女性の怪人だったらちょっと生っぽい感じで唇まで付けたりして。これも裏設定として、顎が露出していて中の顔は描いていないけど、兜を被っているという想定です。後は、草なぎくんがデザインしたベルトのバックルと左胸の羽根飾りですね。バックルは凶悪なアンモナイトというか太古の生物のアレンジで、ショッカーマークみたいなワンポイント。この辺りは草なぎくんと話しながら決めました。それから羽根飾りは、羽根ペンみたいだけど、本当にそのつもりでデザインしてもらったんです。

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ーーというのは?

出渕:当初、白倉さんとの話では怪人が人間が契約する設定があったんですよ。言ってみれば「天使との契約」みたいな。その際にこれを外して契約書か何か分からないけど、サインをする感じで。残念ながらその設定自体はなくなってしまったけど、これはその名残りですね。

ーー「クウガ」のグロンギ怪人同様、アンノウンも衣服を身に着けていますね。

出渕:衣服や装飾品から、古代エジプトやギリシャといったさまざまな文明の要素を散りばめることで、エンシェントな雰囲気を出す狙いがありました。たとえば、スネークロード(第5話登場)なんか分かりやすいくらいエジプトっぽくしています。太古の文明の裏で、そういう存在がいたのではないか、といった匂わせにもなるし、太古から生き続けてきた使徒のような存在ということで、衣服を着せることにしました。後は、人が入る造形物である以上、皺とかバレ隠しの問題。それを誤魔化すために衣服や腕輪を付けたというのも理由としてあります。「クウガ」との関係で言うと、当初はその続編ということだったので、何かしら繋がりを考えなくちゃいけないのかなとも思ったんです。G3とかクウガの未確認生命体に対するものって事でしたしね。ファンモードからすると、バラのタトゥの女とか、再登場したら面白かったですよね。

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ーー放送中、当時の東映の公式HPで時間軸が矛盾している点について説明があり、「続編ではない」ということになりましたね。

出渕:そういう繋がりが生まれたら、今とはまた違うテイストが、作品にも加わっていったんじゃないかと思います。

ーー造形技術も15年の間にかなりの進歩が見られましたが、その辺りについてはいかがでしょうか?

出渕:それは如実に感じました。その辺りは造形でもかなり頑張ってもらっていると感じました。それこそ、スーパー戦隊をやっていた頃の怪人デザインは、イメージイラストに近いラフな感じだったんですよ。それでもレインボー造型企画の前沢範さんからは「出渕のデザインはうちを破産させる」なんて言われましたからね(笑)。当時は、造形が大変になるので凝った背面は描いてくれるなというので省略したり、レインボーさんにお任せみたいなこともあった気がします。

「V3」オマージュのアンノウンたち

「真アギト展」アンノウン展示コーナー(編集部撮影) - (C)石森プロ・東映

ーーそれを思うとアンノウンは、かなり緻密にデザイン画を描かれていますね。

出渕:ええ。僕がリスペクトしている高橋章さん(初代仮面ライダーの美術・デザイン)にしても、当時はそこまでカッチリは描いてなかったと思います。レインボーの造形力やセンス、それに素材や技術もものすごくスキルアップしているから、今回はその手腕を存分に発揮できるようにしたかった。だから、背面も描いているし、人形は顔が命じゃないけど、顔に関しては、図面的に正面と横のデザイン画も別途描きました。「アギト」では戦隊をやっていた頃みたいな制約もなかったし、逆にカッチリやってみよう、ということですね。

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ーーさらに文字でも細かく指定されていて。

出渕:これもスーパー戦隊の頃にはやってなかったことです。当時は、上手い方、たとえば当時レインボーに所属していた品田(冬樹)くん辺りに当たれば間違いなかったけど、時にはこちらが意図したものと全然違う感じで仕上がってくることもあったので。そういう、当時の「ちゃんと先方に意図が伝わるようにしておくべきだったかもしれない」という反省からです。「アギト」は初めてのライダー怪人だったから、「今やるならこうだよな」という気持ちが自分の中に溜っていたんでしょうね。

ーー基本ペアで登場するのもアンノウンの特徴ですが、その差別化もあったかと思います。

出渕:これは白倉さんのアイデアだったと思うけど、こちらはそれを聞いて、これは「仮面ライダーV3」だ! と思ったんです。要はハサミジャガーとカメバズーカ(笑)。しかも前作の「クウガ」は、第1話がクモ(ズ・グムン・バ)、第2話はコウモリ(ズ・ゴオマ・グ)と初代「仮面ライダー」を踏襲していたから、なおさらね。打ち合わせで白倉さんに「最初はヒョウとカメにさせてください」「え、何でですか?」「次はV3なのだと思うからです」と話したのを覚えています(笑)。それで、第1話&第2話はヒョウでジャガーロード、第3話&第4話はカメでトータス&タートルロードに決まりました。

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「真アギト展」よりジャガーロードのデザイン画 - (C)石森プロ・東映

ーージャガーロードは、第1話ということもあって、3体登場したのもインパクトがありました。

出渕:第1話だけは、3体登場することが決まっていて、ヒョウにしておけば、ノーマルなヒョウ、黒豹、雪豹と変化を付けられるなと、ノーマルがパンテラス・ルテウス、トリィスティスはケープの色味とかマサイチックなテイストに寄せて黒豹、アルビュスは雪豹です。次のタートルロードのテストゥード・オケアヌスがウミガメ、トータスロードのテレストリスがリクガメで、両者の違いは手に顕著に表れていますが、頭部もそれっぽくデザインを変えています。また、カッパーとシルバーの色味に関しては、「イナズマン」のウデスパー兄弟のカラーリング(笑)。石ノ森(章太郎)テイストで言うと、次のスネークロードの2体(アングィス・マスクルスとフェミネウス)は、漫画版の「仮面ライダー」のコブラ男と蛇姫メドウサのオマージュですね。

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ーーオマージュと言えば、スコーピオンロード(第13話登場)は、「仮面ライダーV3」のドクトルGですよね。

出渕:ゾル大佐の狼男とか地獄大使のガラガランダはいいけど、ブラック将軍はなぜヒルカメレオン!? みたいなのがあるでしょう(笑)。自分なりに、ドクトルGの怪人態はこうだろうとデザインしたのがスコーピオンロードです。もともとデストロンのシンボルはサソリだったし、武器も盾と斧にして。もちろん、盾のサソリはマストです。当時のカニレーザーも嫌いじゃないんだけど、サソリを使わず、カニで来るんだと思ったんですよ。でも、考えてみたら、鎧大元帥はザリガーナだし、ラスボスは以外と甲殻類のイメージで統一されていましたね。

ーー怪人デザインの醍醐味を挙げるといかがでしょうか?

出渕:醍醐味と言っていいか分からないけど、何を目指すかによります。まずはコンセプトを最初にきちっと決めて、それがビジュアルなり、スーツなりにいい形で反映されたときが、一番快感を覚える部分です。それは細部のディテールがどうとかではなく、「アギト」で言えば、顎とマスクと古代の意匠とか、そういったコンセプトで作品の世界観を支える存在になっていればなと。「このコンセプトで攻めていけば勝てる」みたいなのを発見して、それを実践するのが醍醐味でしょうか。

仮面ライダーアギト25周年記念「真アギト展」5月12日(火)まで池袋・サンシャインシティ 展示ホールAにて開催中(営業時間:10時~20時)

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