山下智久&山崎努、『正直不動産』でプライベートと地続きの関係 川村泰祐監督が明かす

大谷アキラ(漫画)・夏原武(原案)・水野光博(脚本)による同名漫画を、山下智久主演で実写化したドラマの映画版『正直不動産』が公開中だ。同作には2022年放送の連続ドラマシーズン1、2024年放送のスペシャルドラマ、シーズン2に続いて山崎努(※崎=たつさき)が出演しているが、あらためて同シリーズでの山崎の存在の大きさを川村泰祐監督が語った。
本作は、かつて“ライアー永瀬”の異名をとるほど息をはくように嘘をついて営業成績ナンバーワンを誇っていた営業マン・永瀬財地(山下智久)を主人公に、不動産業界の内幕を描いたコメディー。ドラマシリーズでは、ある日、祠を壊した祟りによって嘘をつけなくなった永瀬が四苦八苦しながら“正直営業”に奮闘するさまが描かれた。劇中、耳慣れない不動産用語をテンポよくわかりやすく解説し、リスク回避にもつながるハウツーの側面も好評を博し、2シーズンの連続ドラマのほか、スペシャルドラマ(2024)、永瀬のかつての先輩・神木(ディーン・フジオカ)を主人公にしたスピンオフドラマ(2025)も制作されるなど人気シリーズに成長した。
川村監督がドラマ初期から意識していたのが、「弱者の目線」。「原作者の夏原先生ともお話した時に、正直者が馬鹿を見る世の中であってはいけないと。そのためにも正しい知識をつけ、弱者を守るためのドラマにしたいと思っていました。実際、シリーズの監修をしてくださっているREDSさん(不動産流通システム)はすごく喜んでいて。視聴者の方に正しく知識をつけてほしい、そうすれば正直に一生懸命に働いている不動産屋さんが頑張れるからと」
主人公・永瀬は嘘をつけなくなって以来、成績はみるみるうちに落ちてタワーマンションからおんぼろアパートに転居せざるをえなくなり、“正直営業”に悪戦苦闘。しかし、“カスタマーファースト”を貫く後輩の月下(福原遥)の影響もあり、やがていまだかつてない充実感をかみしめるようになる。そうした永瀬の成長を促しているのが、山崎演じる和菓子職人の石田努。ライアー永瀬時代の顧客の一人で、一度は永瀬が口車に乗せて土地を売約させようとした。
「イッシー(石田)は、全てを見通している感じ。永瀬と出会った時も、永瀬が嘘をついているのがわかったうえであえて乗ってあげていたんだろうなという気がします。いつか気づくだろうと見守ってあげているというか。時々出てきては永瀬にさりげなく指針を示し、導く。ドラマのシーズン1、2では初回と最終話に登場していて、映画でどこに登場するのかはお楽しみですが、彼を通じて成長した現在の永瀬が伝わればと思いました」
イッシーは原作から大幅に膨らんだキャラクターであり、唯一永瀬の秘密を知る人物でもある。風が吹くのと同時に現れるシーンもあり、どこかファンタジックな趣もあるが、そうしたイメージは監督が山崎本人と話し合いの上、生まれたものだという。
「イッシーは、正直でもちゃんと営業はできるんだと永瀬を目覚めさせた人なんですけど、山崎さんとは風の精のようなイメージにしようとお話していました。風の又三郎みたいなものだよねと。裏設定ではそうなっています。時々永瀬の前に現れては、間違えていたら正し、正しいときは肯定したり、永瀬の事を見守ってくれる存在。ちょっとファンタジックだけど、山崎さんも面白いと言ってくださって。山崎さんと山下さんは別作品でも組まれていますが、ずっと続いている友情、関係をリンクさせられたらいいなと考えていました」
実際、山崎がドラマに続いて映画への出演を決めた背景には「山下のため」という思いもあったようだ。
「映画にもぜひ山崎さんに出演していただきたかったのですが、ドラマのシーズン2の撮影が終わった後にガンが判明して。寛解されるまで1年かかって映画に出演がかなうかギリギリのところだと言われていました。でも「智久のためなら出るよ」と言ってくださって、お二人のシーンは感動しかないです。山崎努さんは日本の宝ですよね。柄本明さんにスペシャルドラマに出ていただいたんですけど、柄本さんも努さんにお会いしたかったとおっしゃっていて。あの草刈正雄さん(登坂社長役)でさえ、山崎さんとの共演シーンでは緊張されていて。まさに皆の憧れの存在です。なので映画にも出てくださったのはとてもとても嬉しいことでした」
映画版では、永瀬がライバル会社ミネルヴァ不動産による悪質かつ巧妙な値上げ、かつての同僚で不動産ブローカーの桐山(市原隼人)が6万坪の土地を舞台に進める謎の大規模開発計画など、数々の難題に突き当たる。そこから見えてくるのは、仲間と力を合わせること、そして他者に耳を傾けることの大切さだ。
「仲間というのがテーマの1つでもあって、やはり助け合ってこそ答えが出てくると思うんです。信頼できる仲間というのはなかなか得難いもの。それはどんな仕事でも一緒で、僕自身も感じていることで。年を重ねるにつれて“本当にそれでいいの?”と意見を言ってくれる人が減ってくるんですよ。もちろんこちらは“絶対これが正しいんだ”と集中して取り組んでいるので、指摘されてムカっとくることもあります。でも、そうしたときに“ん?“と立ち止まることがとても大事で。永瀬もこれだけ仲間がいるから前向きになれるし、本音で物を言ってくれる人間が身近にいるというのは彼の強みと思います」
山崎演じるイッシーも永瀬にとってかけがえのない存在だが、本作ではいついかなる時に現れるのか。シリーズを重ねるにつれて絆を深めつつある二人の関係に注目したい。(取材・文:編集部・石井百合子)


