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『パトレイバー EZY』出渕裕監督が明かす「零式」登場の真意、ゆうきまさみスターシステム導入秘話も告白

(C) HEADGEAR/機動警察パトレイバー EZY製作委員会

 現在3話から成る「File 1」が公開中の『機動警察パトレイバー EZY』。旧第二小隊から新世代へバトンを渡した必然性、ゆうきまさみ原案による新キャラクター、そして「ゆうきまさみスターシステム」の導入秘話。30分×3本のオムニバス形式で描かれる新作は、シリーズ伝統の“文化祭のような雰囲気”を保ちつつ、自由度の高い作風を存分に発揮。パトレイバーらしさを貫いた制作舞台裏を、出渕裕監督が自ら詳しく明かす。(取材・文:トヨタトモヒサ)

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リアルタイムでキャラクターが成長していく

 出渕監督は本作のために結成されたクリエイターユニット「HEADGEAR」のメンバーとして、主にメカデザインで作品に関わってきたが、作り手から見た「パトレイバー」については、「リアルタイムでキャラクターが成長していくのが他のアニメにはない点」と、その独自性を挙げる。

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 「1988年に製作された初期OVA(※『アーリーデイズ』)は、当時から10年後の1998年の近未来が舞台でした。それから3年後の2002年を舞台にした劇場版『機動警察パトレイバー 2 the Movie』になると、泉野明や篠原遊馬たちは、既に特車二課第二小隊から出ている。ですから、既存シリーズで描いている部分はすごく短い期間なんです。実際の警察組織でも、ずっと同じ部署にいるわけでもなく、異動も当然あるだろうし、リアルに考えれば2~3年で交代していくものだと思います」。

 その点を考えれば、『EZY』でキャラクターが一新されたのは必然とも言えるが、それまでファンが慣れ親しんできたキャラクターを変えることには、大きな決断もあったのではないだろうか。それについて出渕監督は「もちろん、昔のキャラが好きだという声は絶対に出ると思っていました。ですが、先ほども話したように『パトレイバー』はリアルタイムで時間軸が進んで行く作品なんです。約30年後の『EZY』では、そうなると、かつて20代だった登場人物は50代になるし、作品に則るなら、やはりキャラクターは新しくせざるを得ないと判断しました」と理由を説明する。

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 一方で、物語の舞台となる第二小隊については、「極端な話ですが、脚本家の伊藤和典さんや、監督の押井守さんが手掛けた映画『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』(1984年)的な舞台というか。もちろん遊びではなく真剣な仕事の場ですが、特に伊藤さんは、当時から学校生活のようなノリでアプローチしていたと思うんです」と語り、これを「ずっと続いている終わらない文化祭みたいなもの」と称し、『EZY』でもキャラクターは変わっても、第二小隊の雰囲気は当時から通底するものとなった。

 そして、新たなる第二小隊の面々については、2016年に発表された短編作品「機動警察パトレイバーREBOOT」(2016年)が、ひとつの指針になったそうで、「イングラム1号機操縦担当で主人公の久我十和、1号機指揮担当の天鳥桔平、それから第二小隊隊長の佐伯貴美香の3人は『REBOOT』がベースになっています。ただ、『REBOOT』では、男性隊員がイングラムに搭乗し、女性が指揮をしていたけど、そこは伊藤さんが書き難いということで、女性が操縦担当、男性が指揮担当の昔のフォーマットに戻しました」。

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 また、キャラ設定を伊藤が固める一方、デザインに関しては、キャラクター原案として関わるゆうきまさみと密にやりとりしたという。

 「たとえば、2号機キャリア担当の柚木八久万は、『鉄腕バーディー』のネーチュラー・ゲーゼを優しくするイメージとして描いてもらいました。ですから、実際には目つきとか全然違いますけど、雰囲気を伝えるために挙げたところがありました。また、2号機の指揮担当の平田紗季は今のデザインに落ち着くまでにかなりの数を描いてもらいました」と語るが、その過程で思わぬ副産物があった。「『これは強烈なキャラでいいな』と思った平田のデザイン案があったんですけど、ちょうどそこに第2話の脚本を担当した片山一良くんが、寺田くるみという整備班の女の子を書いてきた。それで『あ、くるみにはこのデザインを使おう』って。実はくるみは平田の没キャラなんです」。

2号機指揮担当の平田紗季

 『EZY』の新キャラクターで、出渕監督の好みが顕著に表れているのが、イングラム1号機キャリア担当の柳井雄太である。「柳井は当初、若い頃のカツシン(※勝新太郎)のイメージで描いてもらっていたんだけど、最終的には、自分が演出しやすい方向性で、『佐藤允でよろしく』と変わりました」。

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 佐藤允と言えば、“和製チャールズ・ブロンソン”とも称された往年の東宝映画のスター俳優で、岡本喜八監督の常連としても知られている。

 「僕が監督した『ラーゼフォン』(2002年)の弐神譲二も佐藤允がモデルで、ゆうきさんからは『またやっちゃっていいの?』と言われたけど、『いいの、いいの。持ちキャラみたいなものだから』って(笑)。柳井役の声優の佐藤せつじくんにも、『独立愚連隊』(1959年)を観ておいてね、と役づくりの参考にしてもらいました」。

1号機キャリア担当の柳井雄太

 また、声優が決まることでキャラクターのイメージがより明確になった側面もあり、「イングラム2号機操縦担当の間昭彦は、伊藤さんのキャラ設定では、隊内の調整役みたいな立ち位置だったけど、実際にはオヤジ臭いというか、かつての第二小隊隊長の後藤を幾分感じさせるキャラになったかな。ビジュアルは全く違うけど、なんかちょっと“後藤感”があるというか。もちろん、伊藤さんのキャラ設定やゆうきさんのデザインがベースにはなっているんですけどね」。

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ゲストキャラで考案された「ゆうきまさみスターシステム」

 本作で出渕監督が拘ったひとつが「ゆうきキャラを徹底すること」で、そこで考案されたのが「ゆうきまさみスターシステム」であった。

 「ゆうきさんが描くカッコいい男女は、スタンダードがあるかもしれないけど、それ以外の子どもとかおじさん、おばさんも実に魅力的なんですよ。『REBOOT』でも庵野(秀明)くんの要望でゆうきさんに描いてもらっていたし、『EZY』でもレギュラーをはじめ、各話のメインゲストくらいまではお願いするつもりでしたが、さすがに連載を抱えていて、忙しいゆうきさんに全部のキャラを起こしてもらうのは難しい。特に『File 1』の第3話(「ホンモノが一番」)は大勢の映画関係者が登場しますしね。そこで、設定制作の石塚征人くんに、シナリオに書かれている登場人物を、ゆうきさんのマンガの中から『このキャラならこの辺りでしょうか』と何人かピックアップしてもらい、そのあとオーディションのように選ぶことにしました」

 「つまり、ゆうきまさみキャラを一人の俳優のように扱う、手塚(治虫)先生じゃないけど、ゆうきまさみスターシステムですね。第1話(「トレンドは#第二小隊」)も、番出たけしだけは、コンテを切ってもらった、もりたけしさんをモデルにオリジナルで描いてもらったけど、町内会の人たちはスターシステムを存分に活用しました。第3話でもスターシステムを使いつつ、それに漏れた端役は、僕の記憶を頼りに樋口真嗣くんのコンテに、この人物は『鉄腕バーディー』のギーガー、この子は『究極超人あ~る』のしぃちゃん(堀川椎子)といった感じで指定していきました。他にも大勢いますから“ゆうきまさみマニア”の人は、元キャラを探してみると面白いと思いますよ」。

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長編ではなくオムニバス形式の映画

 「パトレイバー」は、過去に『機動警察パトレイバー 劇場版』(1989年)、『機動警察パトレイバー2 the Movie』(1993年)、『WXIII 機動警察パトレイバー』(2001年)と3作の劇場版が製作されているが、『EZY』は、新旧OVA(※「アーリーデイズ」「NEW OVA」やテレビシリーズ(※「ON TELEVISION」)を踏襲した30分フォーマット×3本のオムニバス形式が採られている。

 「バラエティに富んだエピソードが並び、必ずしもロボットもののフレームに入らないところもあるけど、それがまた『パトレイバー』のいいところ、らしいところなんです。ホラーでもファンタジーでもコメディでもスラップスティックでもいけるし、日常話でも、学園ものでも、お仕事ものとしても成立する。色々なことが許容される素地があって、それが『パトレイバー』の強みでもあり、カラーになっている。これはたぶん他のロボットアニメでは真似ができないフォーマットなんじゃないかなと思います」と力を込める。

以下、各話のポイントを挙げてもらった。

 「1話目(「トレンドは#第二小隊」)は、伊藤さんの要望で段取りを踏まない形にしました。つまり段取り的な十和の入隊を描くのではなく、彼らが第二小隊として既に仕事をしている世界にお客さんがポンと入って行き、目の前で繰り広げられる出来事を体感してもらうということです。そういう意味では、よくある第1話ではないけど、彼らが普段どうレイバー事件を取り締まっているのか、っていう基本的なフォーマットを伝えるエピソードになっています。とは言っても彼らがどんな仕事をしてるかは、実は冒頭で園児たちにという体で説明してたりしてるんですけどね」。

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 第2話の「閑中妄あり」は、暇を持て余す隊員たちが入れ代わり立ち代わり、日誌に妄想を書き加えていく一風変わったエピソード。「これは要するに、突然1話からカオスな状況に投げ込まれたお客さんに向けてのキャラクター紹介にしてるんです。柚木八久万が乙女チックな性格だったり、平田紗季は自分がきっちりしてなくちゃいけないと思い込んでいたり、柳井雄太は、自分が主役になると、その熱血ぶりが垣間見えたり。各人の妄想を通じて、新しいキャラクターたちがどういう人物なのか理解してもらう感じで」。

 さらに第2話では「その妄想にアクションが盛り込まれています」と語り、『機動警察パトレイバー 劇場版』の零式の登場は、File 1の予告映像解禁時には大きな話題を集めた。「当初は違うレイバーのはずだったんですよ。だけど、妄想だし、そこは『零式にしちゃえ!』と(笑)。もちろん、予告で『えっ? なんで零式が?』って食いついてくれるだろう、という狙いもありました」。同時に零式の登場については、「『パトレイバー』は、コミック、OVAなどいくつものパラレルな世界観があり、主にテレビシリーズ(※「ON TELEVISION」)から「NEW OVA」の流れと、旧OVA(※「アーリーデイズ」)から劇場版2部作の押井さんの流れに分けられがちだけど、基本的にはどれも同じ『パトレイバー』なんです。2話を通じて、そういった意思表示をしたい気持ちもありました」と隠された意図を明かす。

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 第3話「ホンモノが一番」は、特撮時代劇の撮影現場を舞台にした内幕もので、出演者やスタッフの人物模様、そして警備要請を受けて赴いた第二小隊が数々のトラブルをいかにして克服していくかが描かれる。「実は『EZY』は当初、60分ものを6本でやる構想があり、今みたいな完全な読み切りではく、別個の事件がありつつシリーズとしての連続性があるストーリーを想定していました。第3話は、その際に2~3本くらい上がっていた脚本の1本がベースになっています。これは伊藤さんの脚本で、単独でも使えると感じたので『こちらで30分ものに刈り込んでいいですか?』と受け取り構成し直しました。またコンテについては、こんな大変な回をどうしよう?と思ったけど、実写の現場を知っている人間ということで、樋口真嗣くんにお願いしました。怪獣出て来ますしね(笑)」

伝説の第二小隊メンバーも登場する第3話「ホンモノが一番」

 第3話では、かつての第二小隊で活躍した太田功と進士幹泰がゲスト出演しており、これもまたシリーズのファンにとっては嬉しいサプライズとなっている。「この2人が若い隊員を温かく見守っている的なところも観てもらえればと思います。太田は相変わらず酷い目に遭うんですけど(笑)」と語り、『劇場版1』での液体窒素を浴びるオマージュシーンが盛り込まれている。

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『EZY』の面白さをひとりでも多く人と共有できれば嬉しい

出渕裕監督

 公開が始まり、SNSなどでも様々な反響が寄せられているが、作品についての手応えを問うと、「テレビフォーマットで作っていたので、結果としてオムニバス形式にはなっています。各話全て違う個性を持っているので、皆さんの好きな話数を是非教えてほしいですね」と出渕監督。

 「今回、監督として『パトレイバー』に携わって改めて感じたのは、自由度の高いフォーマットを活用して、自分たちがやりたいこと、試したいことをやっていける作品なんだと再認識しました。演出手法にしても、普通は一人の監督で全編のカラーが決まってしまうと思うけど、ジャンルによっては切り口を変えてもOKだし、決まり事が緩いんですよ。たとえば2話でやったけど、富野(由悠季)さんみたいにカットインさせても、あの話は妄想だから成立する(笑)。そういう意味では作っている僕らもとても楽しい。もちろんキャラクターの軸は外さないけど、まるで別作品を作っているような面白さがある。その面白さをひとりでも多く人と共有できれば嬉しく思いますね」。

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