吉沢亮、『国宝』『キングダム』Pと10年前のターニングポイント 「芝居の捉え方が変わった」

原泰久の人気漫画を山崎賢人(※「崎」は「たつさき」)主演で実写映画化したシリーズの第5弾『キングダム 魂の決戦』(7月17日公開)で、秦(しん)の国王・エイ政 (※エイ政のエイは、上に亡、中に口、下左から月、女、迅のつくりが正式表記)を演じる吉沢亮が、約8年にわたって出演する同シリーズと共に成長を遂げてきた俳優としての 現在を語った。
紀元前の中国春秋戦国時代を舞台に、天下の大将軍になる夢を抱く戦災孤児の少年・信 (山崎)と、中華統一を目指す秦国の若き王・エイ政を描く本シリーズ。七つの大国が覇権を争う戦乱の中、今回は中華統一を目指す秦の勢いを脅威に感じた敵同士の六国が手を組み、総勢50万の“合従軍”が秦に攻め入って来る。国家存亡の危機に瀕した秦は、国門・函谷関(かんこくかん)に全勢力を結集し、20万の軍勢で迎え撃つ総力戦を挑む。吉沢演じる秦国王・エイ政は、首都・咸陽の王宮内で廷臣たちと共に、事態の対応に奔走する。
シリーズ5弾ではこれまでと異なるアプローチ
シリーズ2~4作目は約1年かけて一気に撮影されたため、今回は約4年ぶりにエイ政を再演した吉沢。「懐かしさは多少感じても8年くらいの積み重ねがあるし、スタッフ・キャストの皆さんもみんな顔馴染なので、もはや久々という感覚はない」といい、ヘアメイクやコスチュームを仕上げて撮影現場に臨めば自然と役に入ることができ、長く演じてきたからこそ思い入れも深い。
「この役を演じさせていただいたおかげで、本当にいろんな作品で主演を務めさせていただく機会も増えたと思いますし、さまざまな経験をさせていただいた。その節目節目にこの『キングダム』シリーズがあり、僕自身の成長を見せられる現場でもあり、エイ政が王として上っていくのを表現する現場でもある。エイ政と共に僕自身も成長している感覚を得られるのは、ありがたい経験だなと思います」
劇中でも王都を奪還した1作目から最新作に至るまでは数年が経過しているが、王としてのエイ政はまだまだ若い。本作時点ではまだ成長過程の王としての貫禄や佇まいをどのように意識して演じたのか。そこには前作『大将軍の帰還』までとは異なる役へのアプローチがあった。
「前作までは、王とは何かみたいなことからすごく考えましたし、エイ政の頭の中も想像して、目線の力強さやもっと王っぽくしようなど、いろんなことを意識して役をつくり上げていました。でも前作までの完成品を見て、ちょっと力みすぎていた印象があり、もっと力を抜いた方がいいかもしれないと感じたので、今回からはやり方を変えて全部忘れるというか、ただその場に“居る”ことを意識して演じました。それは今だからこそできることかもしれないですが、これまでの積み重ねが僕の中にあるから、細かいことを考えるよりも、居るだけでエイ政になれる感覚があったんです」
快進撃続くも「常に不安の中にいる」
そうした感覚は、『国宝』『ぼくが生きてる、ふたつの世界』のようなシリアスから、 『ババンババンバンバンパイア』のようなコメディまで、ジャンルも役柄も幅広く演じてきた現在の吉沢の実力があればこそ到達できた境地かもしれない。出演作に関してはジャ ンルや役柄が偏らないように意識していた20代前半とは異なり、「出演オファーをいただいた中で、自分がやりたいと思えたり、好きな役だと思える作品を受けさせていただいているだけ」と言いながら、「今の力量では到達できないような役ばかりやっている(笑)」ともこぼす吉沢。
「いろんな課題があって大変そうでも、純粋に面白そうだからやってみたいとか、他の人 にこの役を取られるのは嫌だという思いの方が上回ってしまう。だからもう必死でやるしかないと、大変なことを覚悟した上でやっているだけなんです。それは『国宝』もそうですし、稽古中のミュージカル、舞台『ディア・エヴァン・ハンセン』もそう。自分の殻を破ったり、目の前の壁を乗り越えないと成立しない役を演じることがすごく多いので、結 果的に演じる役の幅は広がっているのかもしれませんが、特に狙っているわけではないですし、渦中にいると全然成果もわからないから、常に不安の中にいます。(取材時点は)舞台の稽古も始まったばかりで歌に苦戦中なので、今も絶望しかない(笑)。それでも舞台は、生のお客さんの反応を実感でき、映像作品とは違った勉強になって得るものも多いから、またやりたいと思う。どの役も毎回そんな感じです(笑)」
松橋Pと初めて組んだ作品で芽生えた思い
その結果、いまや日本を代表する俳優の一人として高く評価されている吉沢。これまでの俳優としての歩みの中で、『キングダム』シリーズの松橋真三プロデューサーは、「恐らくこの世界に入って最もお世話になっているプロデューサーの一人だと思う」と語る通り、『国宝』や『銀魂』シリーズなど多数の作品で組んでおり、その中でも最初の作品は特に印象深いと振り返る。
「(2016年公開の)『オオカミ少女と黒王子』は、当時2度目の共演だった山崎賢人と 初めてがっつりお芝居できた作品ですし、僕の中での芝居の捉え方が変わった作品で、いろんな意味でターニングポイントなんです。当時の僕は自分のやりたい芝居をガチガチに固めて撮影現場に入り、ある意味キャラクター的な芝居をしていた感じがありました。でも、主人公役の二階堂ふみさんの芝居がメッチャ上手くて、彼女のその場に生きている人としての芝居に憧れたのか、この作品では初めて事前に芝居を固めるのをやめて、ただ台詞だけを頭に入れ、現場で生まれるものを大事にして演じてみた。すると僕の中で結構いい感じになった新鮮な感覚があり、すごく印象深い作品なんです。この作品で松橋さんが気に入ってくださったのか、いろんなお話もいただけるようになった。そんな作品からの繋がりがあるので、松橋さんとのお仕事にも特別な思いがあります」
『キングダム』新作は、山崎との共演シーンがクランクインとなった。「4作目の『大将軍の帰還』までの流れを新たな気持ちで迎える儀式みたいなシーンを1番最初に撮れて、新しい物語が始まるなっていう思いにもなりました」としみじみ振り返っていた。(取材・文:天本伸一郎)
ヘア:KANADA/メイク:UDA/スタイリスト:荒木大輔


