『キングダム』小栗旬は「李牧そのもの」 佐藤信介監督が語る“ラスボス的”キャラの魅力

原泰久の人気漫画を実写映画化したシリーズの第5弾『キングダム 魂の決戦』(上映中)で監督を務めた佐藤信介が、見せ場の一つとなる主人公・信(山崎賢人/※「崎」は「たつさき」)とその宿敵・李牧(小栗旬)との初対決シーンの狙いや、李牧のキャラクターとしての魅力を明かした(※一部ネタバレあり)。
【画像】人気キャラずらり『キングダム 魂の決戦』場面写真<12点>
七つの大国が覇権を争う紀元前の中国春秋戦国時代を舞台に、天下の大将軍になる夢を抱く主人公・信と、中華統一を目指す秦国の若き王・エイ政(※エイは、上に亡、中に口、下左から月、女、迅のつくりが正式表記/吉沢亮)を描く本シリーズ。第5作では天才軍師・李牧が興した六国から成る“合従軍”が秦国へ侵攻。秦軍20万VS合従軍50万の大軍勢同士が、秦の国門・函谷関(かんこくかん)で激戦を繰り広げる。前作の“馬陽の戦い”から今回の“合従軍編”の間にある原作漫画のエピソードには省略もあるが、「間を繋げるために再構成したり、省略した話の中から本作に取り入れたものもありますが、今回も原先生が脚本に参加しているので、慎重に話し合いながら脚本を作っています」と佐藤監督も語る通り、原作の魅力を損なわず実写映画ならではのアレンジが施されている。
第3作『運命の炎』から登場した李牧。信にとっても秦国にとっても宿敵となる李牧は、『キングダム』シリーズのラスボス的存在ともいえるが、ヒールという枠には収まらない李牧の魅力を、佐藤監督はこう語る。
「頭の中がわからないところも魅力の一つかなと。前々作の何者かわからないところから始まり、前作で実は趙の大将的な軍師であることがわかるけど、その策略は最後まで誰も読めない。李牧は、何年も前から何歩も先を読んだ上で、頭の中で構築した作戦を徹頭徹尾、冷酷に考え抜いて実行しているだけみたいな感じで、頭がいいといったことでは収まらない、他のキャラクターとは全く違う誰よりも聡明な軍師であり武将なのかなと思う。力で戦う武将ではなく、手駒を動かして戦うような策士で、動きがなく佇んでいるだけに見えても、先々まで読んでいるような魅力を見せたいと思いました」
~以下、『キングダム 魂の決戦』の一部ネタバレを含みます~
今回の開戦前、信は李牧と他国の宰相らしき人物(春申君/斎藤工)との密会を目撃し、秦と同盟を結んでいたはずの趙の暗躍を察知する。馬陽の戦いで自身や秦国軍を苦しめた趙の軍師としてその名を耳にしていた李牧と、信が初めて直接的に顔を合わせる。実は映画冒頭のナレーションで説明される秦と趙の同盟締結について、原作ではその経緯が詳しく描かれており、同盟締結後の宴席が初対面の場だった。映画で描かれている場面は、原作では二度目の対面だったが、そこを初対決の場に変えたことで、より劇的なシーンとなった。
「信と李牧が初めて対峙する場面は、前作から今作の戦いを繋ぐ上でも非常に重要で、原作そのままのようだけど実は細かく映画なりの調整を施しています。恩師のような王騎将軍(大沢たかお)を謀殺した李牧に突然会った信は、目の前に宿敵がいるのに秦と趙の同盟があるから倒せない。パッションで生きている信にとって、その歯がゆさは納得できない部分もあるはずだけど、今回の信は千人部隊を率いる千人将となっているので、もはや憎しみに駆られて政治的な同盟を破ってしまうようなことはできない立場にある。それは信の成長でもあるけれど、“敵は倒す”みたいなプリミティブ(原始的)な思いで戦ってきた信だけに、ここでは突っかかるところも踏みとどまるところも両方ある。成長の中にも昔ながらの信らしさも仄見えるところが、今回の信のキャラクター像の面白さ。それが特に表現できた場面だと思います」
ここでの信VS李牧の直接対決については「李牧の他にはない感じを一瞬で見せたいし、力で負かすのではなく受け流す感じのアクションが李牧らしいかなと。信と李牧の対峙したヒリヒリ感を大事にしつつ、信がいきなり李牧の空気に飲まれていくみたいなことをやりたいと思っていましたね」と明かす佐藤監督。本作でフィジカル的な強さの片鱗を見せる李牧をどう演出したのか?
「李牧は軍師で宰相だけど、実はすごい剣の腕も隠し持っているのがわかる。最後まで本心や真意、その力量も隠して見せていないところに、奥深い魅力を醸し出している。何が起きても崩れないし、例えばあまり大きな声は出さないし、悩む姿や悲しむ姿も見せない。李牧には超人的であってほしいなと僕自身も思っていました」
そんな李牧を演じる小栗旬は「李牧そのもの」だという。
「秦以外の六国をまとめる暗躍ぶりが、何を考えているのかわからないミステリアスさと共に、これまで通り冷酷な形で見える一方、人間味みたいなものも少し見えてくるところが今回の李牧の面白いところ。静かに策を練っている感じや、次の一手を狙っていたり秦をどう崩していくのかを思い描いている雰囲気を、例えば声の抑揚についても静かに細かく、今までにない感じで表現したいと思いました。それを、小栗旬さんはすごく聡明に演じてくださり、醸し出す空気や張り詰めた感じ、繊細な表情など、こちらの狙いに沿った上でも想像以上に李牧の大きな世界を感じさせてくれました。小栗さんとは同じ目線で一緒に李牧を作り上げて高まっていく感じもあったし、どんなふうに演じても小栗さんなりの李牧の世界観みたいなものが醸し出されていた。現場で考えるような仕草をしている小栗さんと話していると、李牧そのものに見えて、僕は李牧と話しているのか小栗さんと話しているのかわからなくなるような瞬間さえありましたね(笑)」
さらに、李牧の独特な魅力について「ある種のセクシーさもあると思っていて、側近のカイネ(佐久間由衣)が李牧を見つめているところには、色気のようなものも感じられると思っています」とも語る佐藤監督。李牧の魅力を「簡単な言葉では言い表せない奥深さがある」と言いつつも熱く語ってくれた佐藤監督の言葉からは、李牧がただの悪役ではなく、信にも匹敵するほどの魅力的かつ思い入れの強いキャラクターであることが感じられた。(取材・文:天本伸一郎)


