K(&TEAM)、陸上経験が生きた『ブルーロック』凪誠士郎役 難技も猛練習でクリア

FIFAワールドカップの熱狂冷めやらぬ中、累計発行部数6,000万部を突破するサッカー漫画を実写映画化した『ブルーロック』が公開中だ。主演の高橋文哉が注目の若手俳優たちを率いるこの映画で、スピンオフ漫画・アニメ映画・舞台も制作された人気キャラクターの凪誠士郎を演じたのがK。オーディション番組を経てデビューを果たした9人組グローバルグループ・&TEAMのメンバーである彼が、初めてのソロ映画出演で挑んだ凪役について語った。
全国から300人の高校生を招集し、日本をワールドカップ優勝に導くストライカー育成のため、容赦ないサバイバルを繰り広げる極秘プロジェクト“青い監獄(ブルーロック)”を描く金城宗幸・ノ村優介による人気漫画に基づく本作。Kは「まず原作が素晴らしくて。それを僕達が生身のこの体で表現し、実際にサッカーで戦うからこそのダイナミズムは実写ならではの魅力としてしっかり伝わるはず」と前のめりで参加したという。
自身が過去に参加した超大型プロジェクト「I-LAND」との共通点も感じたらしく、「閉ざされた空間で、携帯もインターネットも使えず、『ブルーロック』はサッカー、僕らは歌とダンスの練習をするしかなかった。だから原作を読んで、勝手ながら親近感が湧きました。なんか知ってるぞ! って」と笑う。
そんな彼がこの映画で演じた凪誠士郎は、かなり独特なキャラクター。「めんどくさい」が口癖で一見すると何事においてもやる気がなさそう。ある日、同じ高校に通う玲王(綱啓永)に誘われてまったく経験のないサッカーをやってみると、その才能や潜在能力は天才的だった──。そんな凪をKは「意志が強い人だと思う」と言い、「僕もちょっと似ている部分があるのですが、ひとつのことに集中したらそれしか見えなくなり、そこに向かうエネルギーも他とはかけ離れています。だから最初はサッカーにやる気がなかったのではなく、ゲームにやる気があっただけなんじゃないかなと。本気になったときの凪は生まれ持った能力にプラスして大きなエネルギーを注いでいくので、他のキャラクターにとっては恐ろしい存在になるんです」と独自の分析を明かす。
そんな凪が多くの読者を惹きつけたことについては、「人気を得る要素のすべてがつまっている気がします」とK。「身長190cmの9頭身、面倒くさがっているのに誰よりも優れていて、白髪でマッチョでイケメン……って、史上最強レベルのキャラクターじゃないですか!? 天才的なプレーを際立たせるための“めんどくさい”でもあって、ギャップ萌え! なのかも」と自身も魅了されたよう。
凪を演じる上でサッカー技術の習得は避けて通れないが、「小学生のときに5年間やっていたので大きな問題があったわけではないのですが、凪の場合、セットプレイでのアクロバティックな技やトラップが多くて。しかも天才なので両利きで、目の前にボールが来たときには近い方の足で蹴ります。僕自身は右利きなので、撮影期間中は、左足でなるべくボールに触るように心掛けていました」と地道な努力を明かす。
今回、サッカー監修を担ったのは元日本代表の松井大輔。凪の技の一つである“背中トラップ”でも指導を受けたそうで、「あのシーンは何回も練習しました。松井さんにやってみせていただいて、また原作を見て。それで練習で一度成功したんです。いまだに僕の中では、ちょっとした武勇伝なんですけど(笑)。そのときの感覚を元に本番を迎えたら、割とすぐに出来ました」というから、その運動神経の高さに驚かされる。
それにはもちろん、K自身が高校時代、駅伝の強豪校に所属した元アスリートだったことも奏功しただろう。走ることを極めようとしていた彼の目から見ても、凪のランニングフォームは「カッコいい」そうで、「サッカー選手は前傾になることが多いですが、凪は身体能力が高い人の走り方。それを演じる上では、自分の陸上経験が活きたと思います。あのフォームは、これまでの経験があったからこそ、表現出来たんだろうなって」と自信をのぞかせる。
尽力したのはサッカーだけではない。凪を演じる上では、「無表情の演技」を大事にしたそう。「監督から『言葉の“温度”もなるべく変わらないように』という指示をいただいて。彼の中に流れる時間は他の人のそれとは時差があるというか、ちょっと速度が遅いような感覚があるというか。そんなことを意識しながら演じ、そこに目の表情がついていった感じです」
そのためにはかなり高いレベルの演技力が求められたはずで、「めちゃくちゃ高度でした……。僕が演技経験をたくさん重ねた上でこの役を演じたのなら、また違った凪が生まれたと思います。でも、今の僕に出来る凪誠士郎があるはず。それがより自然で、いまだからこそ出来る凪があるはずだと思っていました」と確かな手ごたえを感じている。
初めての映画でそうしたいくつもの高いハードルを超えることができたのは、彼自身の性格もあったようで、衝撃的なエピソードを振り返るK。「コロナ禍に外で陸上の練習ができなくなったとき、ゲームにどハマりしてしまって。寝ないで、ずっと起きていたことがあったんです。“いまゲームを止めるのは、自分に負けることだ”と勝手に思い込み、“絶対に負けない!”って(笑)。すると目が充血して真っ赤っかになり、目から血が出ました……。そのころ、僕にとってのゲームの師匠のようなYouTuberの方がいて。オンラインバトルで世界ランク3位という実力でしたが、最終的にはその人に勝ってしまったんです! スポーツをしていたせいか、根本的に、自分に負けることが好きじゃないのだと思います。負けたくない! と気合いが入るみたいで」
そうして凪誠士郎を演じ終えたKは、「凪はすべてにおいて人間離れしていて、ビジュアルを含め、現実の世界では存在しえない人にも思えます。そういう人であり続けながら、『ブルーロック』という作品の世界観のなかに存在するのは、大変な集中力が必要でした。ちょっと気を抜くと僕自身が出てしまうようで。そこが大変でしたね」と振り返る。
人気漫画の人間離れしたキャラクターに血肉を通わせ、映画として構築された世界観の中でリアリティを持った人間として立つこと。演技経験が少ない中での挑戦は、確かな手応えを残した。「映画の完成への期待感はとても大きいものでした。一生懸命にやりましたから。もちろん自分自身、悔しい部分はたくさんありますが、それを含め、今の自分だからできる100%の凪誠士郎ができたと思っています」と続ける。彼にとって、アーティストの顔とは違った一面の新たなスタートを切ったことを予感させる充実した表情だった。(文:浅見祥子)
ヘア:富樫明日香/メイク:金光柚香/スタイリスト:櫻井賢之



