『バックルームズ』21歳の俊英監督、日本のクリエイターとのタッグ熱望 「メタルギア」小島秀夫も才能絶賛

映画『バックルームズ』を手がけたケイン・パーソンズ監督がプロモーションのために来日し、4日にTOHOシネマズ六本木ヒルズで行われた公開初日舞台あいさつに出席。ゲストとして登壇したゲームクリエイター・小島秀夫と共に、映画製作について語り合った。
インターネット発の都市伝説から生まれ、アメリカで一大ブームを巻き起こした『バックルームズ』。存在するとうわさされる現実世界の裏側に足を踏み入れてしまった者たちが、黄色い壁紙の部屋が無限に連なる空間から抜け出そうと奔走する。
ケイン監督が16歳で発表したYouTube短編動画「The Backrooms (Found Footage)」が伝説となり、17歳で映画化を企画、19歳で気鋭の映画スタジオ・A24とタッグを組んで長編映画として撮影。全米では5月29日に公開がスタートすると、オープニング興行収入8,100万ドル(約129億円)を突破し、全米ボックスオフィスランキングで初週1位の快挙を達成した。
ケイン監督は「ここに来ることができて本当にワクワクしています」と笑顔を見せると「『バックルームズ』という作品・アイデアに何年もの間関わってきましたが、それがこのように世界中に広がり、これほど多くの人々に届いたことを、少し奇妙な、不思議な気持ちで見ていました」と率直な胸の内を明かす。
ケイン監督に花束を贈呈した小島監督は「映画は一足先に観ているのですが、いよいよ日本公開ということで僕も興奮しています」と語ると、「彼は21歳、僕は63歳。デジタルで育った人が、デジタルの感覚をアナログのフィルムに焼き込んだらこんなにすごいことになるのか、という結果を目の当たりにすると思います。本当に特別な体験になると思います」とこれから作品を観る会場のファンの期待をあおった。
初来日のケイン監督は「初めての日本ですが、とても楽しんでいます。仕事でいろいろな国に行きますが、日本の建築や芸術的な文化、そしてテクノロジーとアートが美しく融合している点は、今まで訪れた中でも一番好きかもしれません」と語り、「日本がとても気に入りました。近い将来、日本でどなたかとコラボレーションしたり、仕事をする機会があればいいなと強く思っています」と未来に思いを馳せる。
A24からのオファーについてケイン監督は「2021年頃、無料のオープンソース3Dソフトウェアを使い、VFXを使って『進撃の巨人』のアニメーションを実写風に制作しオンラインで公開していました。そして2022年の初めに『バックルームズ』の短編を作り始めるなか、徐々に色々な方からメールが届くようになり、その中にA24からの連絡もありました」と説明する。
それを聞いた小島監督は「僕は23歳で『メタルギア』を作ったんですが、A24から連絡があったのは59歳くらいの時なので、全然状況は違います。彼が素晴らしい結果を生んだのは、彼自身の選択や才能はもちろんですが、やはり運や縁がすごくある方だなと思います。A24と出会えて、この作品が世界中で大ヒットしたということは大切にすべきですし、本当の勝負や旅はこれからだと思います」とエールを送りつつ、「それにしても羨ましいですね。僕が25歳の頃はA24なんてありませんでしたから。当時連絡してくれたらよかったのにと思います」と発言して会場を笑わせていた。
デジタルネイティブでありながら、アナログな手法で作品を作ったことに、ケイン監督は「僕自身2000年初頭の生まれなので、デジタル世代でありますが、幼少期にはアナログメディアが身近にあり、馴染みがありました」と語ると、「ここ数年、自身の中でアナログメディアとの向き合い方が深まってきました。『バックルームズ』でも、先ほど触れた『進撃の巨人』の映像でも、フィルム映像の再現を試みてきましたが、僕が強く惹かれているのは、観客と、作中のアイテムとしてのカメラとの関係性です」と説明。
続けて「現代のようなクリアな4K映像から離れると、センサーに焼き付くノイズや、機器そのものの物理的なメカニズムをより強く感じられるようになります。それによって、描かれているシーンがより物理的で、生々しいリアリティーを持つようになる。ホラーという文脈においてファウンド・フッテージが効果的に機能する理由は、そこにあるのではないかと思っています」と自身の狙いを述べた。
ケイン監督の話を聞いた小島監督は「エンターテインメントでありながら非常にアート的で、サウンドの扱いも含めて極めてクレバーです。それを見ていて嫉妬を覚えるくらいで『僕も若返りたいな』と思ってしまいました」と笑うと、「ビジュアルの設計も、音の配置も、ストーリーテリングもすべてにおいて計算されていて『これは敵わないな』と感じました」とケイン監督を絶賛していた。(磯部正和)



