「VIVANT」話題の「V_Log」誕生秘話 ディレクターが約1年密着した舞台裏「挑戦の記録を残したい」

(C)TBS

 日曜劇場「VIVANT」第2シーズン(TBS系・毎週日曜よる9時~)の撮影現場に約1年間帯同し、撮影現場の舞台裏をカメラに収めてきたTBSスパークルのディレクター・山本伸。彼が撮影・編集を担当する「VIVANT-Adventure Log-」(TVerで独占配信中)には、本編だけでは見えないキャストやスタッフの姿、世界各地でのロケの舞台裏が詰まっている。「-Adventure Log-」(以降V_Log)は当初、現在のような形で配信することさえ決まっていなかったという。約1年にわたる“冒険”を記録し続けた山本は、その撮影現場で何を見つけたのか。

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「挑戦の記録を残したい」白紙から始まったV_Log

 山本は普段、TBS系列のドラマ撮影に入り、現場の裏側を取材してPR番組などを制作している。「VIVANT」第1シーズンにもメイキングとして参加。その縁から今回、飯田和孝プロデューサーに声をかけられた。ただ、最初からV_Logを作ることが決まっていたわけではない。

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 「飯田さんから相談されたのは、『このドラマの挑戦の記録を残したい』ということでした。どう使うかは追々考えるとして、1年間記録を収めてほしい、というところからのスタートだったんです」

 撮影開始から1~2週間ほどで、山本は「通常のPR番組では収めきれない」と感じたという。そこで飯田プロデューサーに、毎週ドラマの裏側を届ける企画を提案。V_Logとして正式に形が決まったのは、放送開始の約3か月前だった。通常のPR番組なら、決められた放送尺から逆算して、撮るものを選ぶこともある。しかし今回は、「記録を残す」ことが主目的。だからこそ、目の前で起きる出来事にカメラを向け続けた。

 「先入観なく、がむしゃらに目の前で起きる面白そうなことに飛びついて撮影できました。関係者の皆さんがよく『冒険』と言いますけど、撮影現場自体が本当に冒険みたいで。僕自身も発見を楽しみながら取材していました」

 その姿勢は、V_Logに収められた映像の幅広さにも表れている。#12では、乃木の別人格“F”(堺雅人/三役)が、第1シーズンに続いてテント元幹部のアリの家族を人質に取り、再び尋問する場面に密着。今回は何も知らないアリが再び尋問される形となり、演じる山中崇は実際にイスへ拘束され、Fを演じる堺と対峙した。台本にして15ページに及ぶ場面を7分以上の長回しで撮影し、ほぼ撮り直すことなく演じきった。

 しかも撮影は予定より6時間も早く終了。本編ではカットされた、再び家族を巻き込まれたことへの怒りをアリが乃木にぶつけ、乃木が思わず土下座するアドリブまで収められている。完成したドラマだけでは見えない、俳優が役と向き合う時間。その熱量をできるだけ削らず届けられることも、V_Logならではの醍醐味だ。

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カメラが捉えた、部署を越えて助け合う“優しさ”

 山本のカメラが追うのは、俳優だけではない。#13では、別班が誇るスーパーコンピューター・AIハヤト(声・高山みなみ)の部屋の裏側を紹介。700枚を超えるLEDパネルで360度を囲んだセットで、映像をリアルタイムにコントロールするスタッフの奮闘も映し出された。前例の少ない撮影を前に、LEDオペレーターからは無事に終わることを願う本音も。福澤克雄監督が撮影方法を模索し、巨大なLEDを前に堺から次々と芝居のアイデアが生まれていく過程まで、カメラは追っている。

 また、#17では、シャキ城に捕らわれた別班員5人に施す、拷問による傷の特殊メイクの工程にも密着した。山本がスタッフに積極的にカメラを向ける背景には、福澤監督が若手に語った「テレビの、あなたたちの未来がかかっている仕事なんだ」という言葉がある。

 「V_Logを見た人が『映像を作る世界に入りたい』と思ってくれたらうれしいですし、『こういう業界を応援したい』と思ってもらえたらありがたい。そんな思いもあって、キャストだけでなく、さまざまなスタッフにも取材していきました」

 約1年、撮影現場の内側に入り続けるうちに、もう一つ見えてきたものがある。それが「VIVANT」チームに根付く“優しさ”だった。メイキングは本来、撮影本隊から一歩引いた存在になりやすいという。しかし「VIVANT」では、人手が必要なときは山本にも「ちょっと手伝って」と声がかかる。暗い場所で小さなライトを使って俳優を取材していると、照明スタッフが機材を持ってきて照らしてくれる。衣装スタッフが周囲に声をかけ、インタビューしやすい環境を作ってくれることもあった。

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 「担当の垣根を越えて助け合うことが当たり前になっているんです。無理に“優しさ”を狙って編集しているわけではなく、現場で起きていることを素直に追っていくと、自然とそういう一体感がにじみ出てくる」

 ロケ先のアゼルバイジャンでは、当初は文化や仕事の進め方の違いに戸惑っていた日本と現地のスタッフを通訳たちがつなぎ、最後には涙を流しながら抱き合って別れを惜しむまでになった。その変化も、長期間カメラを回し続けたからこそ残せたものだった。

 長期密着には、もう一つの意味もある。撮影から放送まで時間が空けば、当時の苦労もやがて思い出に変わっていく。だからこそ山本は、大変な撮影のさなかにこぼれる言葉や表情を、その時にしか残せないものとしてカメラに収めてきた。

数秒のためにも妥協しない 画面の裏にある“泥臭さ”

 「VIVANT」といえば、世界を股にかける圧倒的なスケールも大きな魅力だ。V_Logを見ていると、そのスケールが決して完成映像だけのものではないことが分かる。劇中には50以上ものセットが登場し、乃木が務める丸菱商事のオフィスには300人を超えるエキストラが集結。本編第11話の別班員が入院していた病院の爆破シーンにも100人を超えるエキストラが参加した。タイのロケでは、普段は夜ににぎわう通りを昼の市場として見せるため、3日間かけて約100メートルに及ぶ架空のマーケットを作り上げた。

 また、#15では、アゼルバイジャンの砂漠地帯で、人を乗せた経験のないラクダに堺が乗る撮影や、約4000人のエキストラが参加した、乃木の父親で解体した国際テロ組織「テント」のリーダーでもあったノゴーン・ベキ(役所広司)と最高幹部の葬儀の舞台裏も紹介されている。

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 一方で、壮大な映像を支えているのは、驚くほど地道な作業でもある。#16では、“中国の別班”こと民間情報組織「シンシー」の拠点フロアの撮影に密着。画面では広大な空間に見えるが、スタッフは一つの場所をさらに広く見せるため、ブースを何度も移動させながら撮影を重ねていた。本編では10~15秒ほどの場面でも、その数秒のために手間を惜しまず試行錯誤を続けていたという。山本は、そこに「VIVANT」チームならではの泥臭さを見る。

 「考察できるストーリーや俳優さんの素晴らしいお芝居ももちろん魅力的ですけど、根本にあるのは『どうしても見ちゃう』『目が離せない』という画面からあふれ出る熱量だと思うんです。スタッフやキャストの意地と工夫が、この作品を面白くしているんじゃないでしょうか」

 V_Logが捉えるのは、計画されたものばかりではない。警視庁公安部外事第4課の野崎守(阿部寛)の北京駐在時代を描いた第16話。エージェントのチョウ・ケイシ(高橋光臣)が接触していた毛じいさん(Amnaj Karnsumnut)とのシーンの舞台裏も紹介している。撮影用に用意された毛じいさんの屋台を本物の店と勘違いし、観光客が次々とやって来るという思わぬ出来事も起きた。長期間撮影現場を見守り続け、面白いと感じた瞬間にカメラを向けるからこそ、そんな偶然まで記録されていく。

猫も街並みも記録する 視聴者も一緒に“冒険”へ

 撮影した時には予想していなかった映像が、本編放送後に大きな意味を持つこともある。その一つが、迫田孝也が演じる丸菱商事の社員でテントのモニター(協力者)だった山本巧が登場する前作の再現シーン(#13)だ。JR豊橋駅(愛知県)およびその周辺での撮影は、わずか1~2時間。山本は夜遅くにスケジュールを見て気付き、慌てて新幹線に飛び乗ったという。その後、本編で山本巧が話題になると、「ここは視聴者が見たいはず」とV_Logでも大きくフィーチャーした。

 「奇しくも僕自身も同じ『山本』なので、山本界の価値を上げたのか下げたのかは分かりませんが(笑)。完成間もない本編を見て、『ここは視聴者が絶対に見たい裏側のはずだ』と思ったところは、想定以上に膨らませています」

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 乃木とアリ、乃木と元公安部外事第4課の諜報員でテントのモニター・新庄浩太郎(竜星涼)の尋問シーンのように、俳優の熱量がぶつかる場面では、過度な説明を加えず、芝居そのものをできるだけ生かす。気づけば20分、25分を超える回が生まれ、「皆さんの頑張りやお芝居を、あまりカットしたくないんです」と山本は語る。

 最新の#18でも、ベキ、乃木の命の恩人でジャミーン(本間さえ)の父親・アディエル(Tsaschikher Khatanzorig)、テントの最高幹部・バトラカ(林泰文)の回想シーンや、複数の言語が飛び交うテントの作戦会議、新たな現地エージェントたちの撮影に密着。タイの有名実業家・チョッキー・テーパーニットを演じるOhm-Tanapak(オーム・タナパック)の初挑戦など、本編の展開とともに新たな“裏側”が記録されている。

 一方で、緊張感あふれる撮影の合間には、海外の街並みや現地で出会った猫も登場する。動物を撮るのが好きな山本さんが何げなくカメラを向けていたものだが、V_Logにちょっとした紀行番組のような味わいを与えている。

 「一番の命題は、『VIVANT』をより深く知って、もっと好きになってもらうこと。その中で、視聴者の皆さんにも僕らと一緒にロケ地を冒険しているような気持ちになってもらえたらと思っています」

 俳優たちが見せる芝居の熱量。最先端の技術と地道な作業で作品を支えるスタッフ。数千人が動く大規模撮影。そして、ロケ先で偶然出会った人や動物たち。山本さんのカメラが約1年かけて拾い続けたのは、本編だけでは見えない「VIVANT」のもう一つの物語だ。

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