『踊る大捜査線 N.E.W.』幻となったカメオ出演も 本広監督ゆかりの声優陣&映画監督キャスティング秘話

映画『踊る大捜査線 N.E.W. メトロポリスを駆け抜けろ!』(全国公開中)には、連続ドラマシリーズからのレジェンドキャスト、次世代を担う新キャストのほかにも、本広克行監督のこだわりと遊び心で多くのゲストキャストが出演している。中には、本広監督の仲間である映画監督も含まれており、マニア心をくすぐる顔ぶれが揃った。本広監督がインタビューに応じ、彼らのキャスティング秘話や裏話を明かした。(以下、映画の内容を一部含みます)
【画像】みんな変わらない!「踊る大捜査線」青島ら湾岸署メンバー
林原めぐみは亀山プロデューサーが演出
冒頭に流れる劇中アニメーション「セブンベア」の予告編は、「新世紀エヴァンゲリオン」「名探偵コナン」などで知られるレジェンド声優・林原めぐみがナレーションを務めている。アニメがオープニングになることは、亀山千広プロデューサー(以下、亀山P)の発案で急遽決まり、もともと本広監督の友人だったアニメーター・浅野恭司(株式会社 WIT STUDIO 取締役)が作成したものだ。
「亀山さんには『ちゃんと声を入れたほうがいいと思います』と提案しました。林原さんのボイスサンプルを聞いた亀山さんが決めて、演出も亀山さんです。もともと亀山さんは林原さんのファンでしたから、ものすごく楽しそうでした(笑)」
本広監督は、亀山Pに演出の仕方をアドバイスし、「いわば僕は助監督でした」と笑う。「林原さんが、それぞれのベアの声を出したりといろいろなアイデアをくださって、現状の形になりました。めちゃくちゃよかったです」
林原は『踊る』シリーズ初参加。「レジェンドの方なので、そんなにちょくちょくはお呼びできないです。『踊る』に出るのをとても喜んでくださいました。僕が『新世紀エヴァンゲリオン』を好きなのもご存じでいてくださって。あろうことか録音部のスタッフがサインをお願いしていて、いいなぁって見ていたら『監督にも!』と僕の分も書いてくださいました。家宝にしています」と喜んでいた。サインには「かっちゃんへ」と書いてあるという。
円卓会議室に集結したレジェンド声優陣
円卓会議室にいる警察上層部の面々は、前作までも声のいい俳優が多かったが、今作ではさらに美声が際立つレジェンド声優がずらり。まず、長官役は「新世紀エヴァンゲリオン」の碇ゲンドウ役でおなじみの立木文彦だ。本広監督が総合演出をした明治座の「ももクロ一座特別公演」で、立木が開演アナウンスを担当したのが縁だった。
「その時の声撮りも全部僕が演出させていただいて。今回お願いしたら『夢のよう』と参加してくださいました。ゲンドウをイメージした白手袋を、立木さんのデスクにそっと置いてあります」と秘密を明かす。また、本広監督曰く「(両手を顔の前で組む)あのポーズがゲンドウと同じなのは確信犯です」とのこと。『踊る』シリーズでは、室井慎次(柳葉敏郎)が似たポーズを取っていたが「あれは柳葉さんが自然にやっていらした。僕は『ゲンドウそっくり』と思って見てましたけど(笑)」
次長役の津田健次郎は、ドラマ「ラムネモンキー」など近年は映像出演も多く、本広監督とも舞台がきっかけで出会っている。「僕が前にやった舞台『Fabrica』のオーディションに来てくれたんです。その時は周囲とのバランスでごめんなさいしたのですが、演出を担当したドラマ『ナンバMG5』で犬の松のアテレコをしてくれて。その後は、僕がやっているクリエイター会に来てくれるようになって、そこでお願いしました」
クリエイター会とは、本広監督の自宅で定期的に開催される「オタク会」とのこと。湾岸署のマスコットキャラクター“湾岸君”のデザインを担当した漫画家でイラストレーターの岡崎能士や、ももいろクローバーZのグラフィックも手掛けているイラストレーター・ニイルセンをはじめ、アイドル、アニメ、格闘技、音楽など、さまざまな業種のクリエーターが集まるという。「次に何かやる時はここの人を呼ぼう、みたいな(笑)。映画は総合芸術ですからね。津田さんも毎回いらしてくれてるんです」
副総監役の関智一と長官官房長役の野島健児は、本広監督が総監督をつとめたアニメ「PSYCHO-PASS サイコパス」の出演声優だ。「お2人はもう、以前から『踊る』に出たいと言ってくださってました。お2人の舞台も僕はよく拝見してますが、本当に上手い方々です」と語る。「皆さんいい声すぎ。それが沖田(真矢ミキ/沖田仁美役)さんを問い詰めるわけですよ(笑)。僕はこのシーン、『カット!』と言わずに『ナイスボイス!』って言ってました」
『ONE PIECE』『侍タイ』監督がカメオ出演した査問委員会
真下正義(ユースケ・サンタマリア)がかけられる査問委員会には、アニメーション映画『ONE PIECE FILM RED』『パリに咲くエトワール』の谷口悟朗監督や、映画『侍タイムスリッパー』で昨年の映画賞を席巻した安田淳一監督らがカメオ出演している。
「お2人とも、お声がけしたら喜んで、すぐ来てくださいました。谷口監督は、僕の専門学校の後輩なんです。『ONE PIECE』のプロデューサーで今作も手掛けてる人がいて、そこでまた話が盛り上がってお願いしました」と本広監督は明かす。
本広監督は、山田洋次監督を中心とした映画監督の交流会「シネマ会」に参加しており、安田監督はそこのメンバーだ。だが、実は本広監督はそれ以前、自身がディレクターを担当していた「さぬき映画祭」の時から交流があった。「京都で農業をやりながら映画を作っていらして、『さぬき映画祭』で賞をとったりもされていて。僕は『侍タイムスリッパー』も早い段階で鑑賞して、絶賛していました」と語った。また、安田監督作品の常連俳優・沙倉ゆうのも、スリーアミーゴスを案内する署員としてカメオ出演している。「安田さんにお願いして、連れてきていただきました。あの声が最高なんです」
一方で、撮影スケジュールがずれた関係で出演が叶わなかった人もいた。「実は、堤幸彦監督(『20世紀少年』『TRICK(トリック)』など)がいらしてくださることになっていましたが、予定が合わなくなってしまって。『ごめんね』と言ってくださいましたが、こればかりは仕方ないですよね」
また、「『アメリカ横断ウルトラクイズ』などを手掛けてらした、『テレビマンユニオン』の加藤義人さんもいらっしゃるんです。僕からしたらレジェンドですからね。偉い人の席に座っていただいてます(笑)」と本広監督。「いろいろな人に会えて、すごく楽しかったです。皆さんも喜んでくださったし」と多彩な顔ぶれが今作を彩ったことを喜んでいた。(取材・文:早川あゆみ)



