DC『クレイフェイス』監督、『鉄男 TETSUO』『ゴジラ-1.0』から強い影響 怪物となる主人公の人間ドラマを追求

バットマンの宿敵として知られるDCヴィラン・クレイフェイスの誕生秘話を描く映画『クレイフェイス』には、日本映画の影響が見られるという。メガホンを取ったジェームズ・ワトキンス監督がリモートインタビューに応じ、本作の作風について語った。
『スーパーマン』『スーパーガール』などを手がけるDCスタジオが、初の本格心理スリラーに挑む本作。ハリウッド期待のスターとして活躍する主人公マット・ヘーゲン(トム・リス・ハリス)は、ある事件によって役者の命である“顔”に致命傷を追ってしまい、“泥”を使った禁断の治療に手を伸ばす。施術を重ね、傷一つない美貌を手に入れたかに思えたマットだが、治療の副作用により心身共に蝕まれ、泥のように姿を自在に変える怪物へと変貌していく。
新DCユニバース(DCU)初のR指定映画として、本格的なボディ・ホラーや心理スリラー要素が期待される本作。ワトキンス監督は、DCUの舵を取るジェームズ・ガンとの打ち合わせで、R指定寄りの過激なビジュアルを見せて本作をプレゼンしたといい「彼は『最高じゃないか!』と言ってくれました。私は、観客がアトラクションのように楽しめるホラー・スリラーを目指しており、そうした表現を求めるファンのために、手加減なしで挑んでいます」と自信をのぞかせる。
すでに予告編では、マットが溶け始めた自分の目をハサミで切開しようとするシーンなど、思わず目をそらしたくなる過激な描写が含まれている。「本当にエグくて強烈な見せ場を作れると思った」と話すワトキンス監督は、特殊メイクなどのプラクティカル・エフェクトを多用し、リアリティーを追求した。「トムが自分の目を切り開こうとする演技をしたときには、撮影現場から『うわっ』と多くのスタッフが悲鳴を上げて、目を背けていました。そういう反応をしてくれる『よし、狙い通り!』と自信になります(笑)」
『クレイフェイス』には、往年のボディ・ホラー映画からの影響が見られるという。その代表が、鬼才デヴィッド・クローネンバーグ監督による『ザ・フライ』(1986)だ。「『クレイフェイス』は一人の男がモンスターに変貌していく物語です。だからこそ、クローネンバーグ監督の『ザ・フライ』のように、その側面にしっかりと踏み込む必要がありました。『ザ・フライ』はホラー描写、ボディ・ホラー、感情描写、人間関係、科学的アプローチに至るまで、まさに完璧な手本でした」
「『ザ・フライ』を挙げたのは、劇中で男がハエに変貌していく過程があまりに過激でありながら、見事なリアリティーで描かれているからです。観客は一瞬でその科学や物質転送の説得力を受け入れます。そしてクローネンバーグ監督は、無駄のない無骨なスケール感と人間の感情、そして素晴らしい演技によってそれを支えている。私たちが目指したのもまさにそこでした」
またワトキンス監督は、塚本晋也監督が手がけたSFボディ・ホラー『鉄男 TETSUO』(1989)の名前も挙げた。「『鉄男 TETSUO』は入念に観返しました。あの溢れ出るエネルギーや刺激は、間違いなく影響を受けました。デザイナーのジェームズ・プライスとともに『鉄男 TETSUO』からいくつも参照しました」
「例えば、劇中の研究所は、『アイアンマン』に登場するトニー・スタークのラボのような近未来的すぎるものにはしたくありませんでした。実際に足を踏み入れられるような現実味があり、“今から5分後の未来”に生きているような、親しみやすくリアルな空間を目指したんです。そうした発想の根底には『鉄男 TETSUO』の存在があります」
さらに、「少し意外かもしれませんが、製作を進める中で『ゴジラ-1.0』にも強い影響を受けました」と続けたワトキンス監督。戦後日本を蹂躙するゴジラと並行して描かれる重厚な人間ドラマは、異形のモンスターとなったマット・ヘーゲンの物語を構築する上でヒントとなった。
「怪獣映画という点ではなく、『物語の感情的な真実味をいかに表現するか』『物語の根底にある感情といかに真摯に向き合うか』という点において、同じカテゴリーとして捉えています。私は、ただジャンプスケアや大音量、モンスターの出現だけで観客を驚かすのではなく、観終わった後にその人の奥深くにじわじわと残るような映画が好きなんです」
クレイフェイスの完全形態は、映画公開までその姿を明かさないとワトキンス監督は明言している。「モンスターの全体像を伏せておくことで、観客にとって素晴らしいサプライズになればと思っています。私たちはクレイフェイスのビジュアルについて、果てしない議論を重ねました。コミックやアニメーションの歴史を尊重し、原作ファンを納得させると同時に、キャラクターを知らない層にとっても新鮮で驚きのあるデザインに仕上がりました。地に足のついた映画のトーンを壊さない、リアリティーを感じられるクレイフェイスの姿をお見せできるはずです」(取材・文:編集部・倉本拓弥)
映画『クレイフェイス』は10月30日(金)全国公開



