「ダウンタイム」松岡茉優の提案で変更されたクライマックスの裏側

キーアート 左:沼田文(松岡茉優)/右:遠山凜(仲里依紗)
キーアート 左:沼田文(松岡茉優)/右:遠山凜(仲里依紗)

 美容整形業界を舞台にしたNetflixシリーズ「ダウンタイム」(配信中)で形成外科医から美容整形外科医へと転じる主人公を演じた松岡茉優。本作のメガホンをとった Yuki Saito 監督が、松岡の提案により想定外の仕上がりになったというクライマックスの裏側を語った(※一部ネタバレあり)。

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 本作は、美容整形業界を舞台に、美を追い求める人々の希望や葛藤、そしてその裏側に潜む光と闇を描き出すオリジナルストーリー。松岡が演じたのは、天才的なオペ技術を持ちながら「医療で命を救う」という信条に従い行った緊急オペが原因で、勤務していた大学病院を去ることになる形成外科医・沼田文。文はひょんなことから遠山美容外科クリニックのカリスマ美容外科医・遠山凜(仲里依紗)にスカウトされ、異なる価値観を持つ彼女と対立しながら思いがけない秘密の数々に遭遇していく。脚本を、映画『孤狼の血』シリーズやNetflixシリーズ「極悪女王」などの池上純哉、監督をドラマ「アンメット ある脳外科医の日記」で注目を浴び、先ごろ「薬屋のひとりごと」実写ドラマ版の制作が発表された Yuki Saito が務める。

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文をスカウトする凜

 「松岡さんは理論的で、しっかりした演技プランがあり、疑問や意見をはっきり伝えてくれる」という監督。そんな松岡の撮影中の様子をこう振り返る。

 「大体松岡さんが現場の近くで、キャンプ椅子を持ってご自分の居場所みたいなものを作るんです。そこで時々一人で考え事をされている。なので毎回、その松岡さんの居場所を確認したうえで段取りの前に僕と2人で“このシーンはこう思うんだよね”といったふうにお話させていただいていました」

 松岡は基本的に脚本に書かれた通りの芝居をするのではなく、疑問点があれば逐次監督と話し、積極的に提案していたという。

 「松岡さんは相手役のセリフも全部頭に入っているんじゃないかというぐらいで、カメラが回っていなくても沼田文になりきっている状態だったので“文ちゃん”と呼んでいました。松岡さんは僕の狙いというか、脚本家も含めたチームの狙いを理解しようとしつつ、“そこにたどりつくためには何かが足りない。きっと文だったらこうは動かない”といったふうにしっかりとした考えを持っていらっしゃる。なので、松岡さん=文が納得しないようであれば無理やり進めても感情が乗らないので別の手を考える。そうしたコミュニケーションの積み重ねで、もう松岡さんと話しているのか文と話しているのかわからなくなる感じがありました(笑)」

~以下、ドラマのネタバレに触れています~

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手術中の文と凜

 「疑問や意見をはっきり伝える」。その最たる例が、文と凜が患者と美容外科医として対峙するクライマックスのシーン。ワケあってクリニックを去ったのちに交通事故に遭い、顔に重篤なケガを負った文が、凜に整形手術をしてほしいと請う。これまで美容整形を否定していた文の劇的な変化を示すシーンで、文は全身を複雑骨折しており顔は包帯で覆われ、唯一右目と口が覗いているという状態だ。

 「松岡さんが疑問を呈された大きなところで言うと、最終話で文がクリニックのパンフレットを手に“新しい羽をつけて飛ばしてください”と凜にお願いする重要なシーン。当初はパンフレットを差し出す設定はなく、台本上ではセリフの応酬だったのですが、松岡さんから“顔が壊れている状態でそんなに喋れないと思います”と相談があって。物語のテーマに触れる大事なセリフの応酬だったので、かなり悩んだんですけど、松岡さんがおっしゃる通り、やはりリアリティを優先しようということになりました」

 そうして松岡の提案をふまえてシーンの流れを再考することとなった。そこで松岡が出したアイデアが、文にクリニックのパンフレットを持たせることだった。

 「“新しい羽で飛ばしてください”っていう言葉を文にどうしても言ってほしいんだけど、この状況で凜に面と向かってそれを言うかなと。なおかつ文らしくないセリフでもある。そこで、“確かクリニックのパンフレットにその言葉が書かれていたから、それを差し出す形だったら言えるかもしれない”と松岡さんから提案いただいて。では文はパンフレットをどこで手に入れるのかと考え、ヲ蔵ちゃん(長井短)が文のお見舞いに来るシーンで文にパンフレットを手渡す描写を追加しようと。そんな試行錯誤を日々繰り返していました」

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 文と凜の対峙シーンは「一発撮り(ワンテイク)」を目指したという監督。それはクライマックスでも同様で、二人の芝居を「逃さない」ことに徹した。
 
 「松岡さん、仲さん共にそれぞれを前にすると思ってもみない芝居が出てくる。特にあのシーンは松岡さんが準備してくださった明確なプランを超える瞬間が見られた気がします。なので、文と凜の大事なやり取りは必ず2カメ、1発撮りで長回しで、両方クローズアップから挟んで撮るスタイルでした。松岡さん、仲さんそれぞれをまとめて撮るのだと臨場感は伝わらないので」

 松岡と仲が迫真の演技を見せるクライマックスは、数奇な縁で結ばれた文と凜の言葉にし尽くしがたい関係の着地点を表すシーンであり、最大の見せ場となっている。(編集部・石井百合子)

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