スピルバーグ監督、大切なのは「他者に対して好奇心を持つこと」『ディスクロージャー・デイ』インタビュー

スティーヴン・スピルバーグ監督
スティーヴン・スピルバーグ監督 - (C) Universal Studios. All Rights Reserved.

 SF映画の金字塔『未知との遭遇』(1977)や『E.T.』(1982)などを手がけた巨匠スティーヴン・スピルバーグ監督が、最新作『ディスクロージャー・デイ』(全国公開中)で初タッグを組んだ主演のエミリー・ブラントと共にリモートインタビューに応じ、本作に込めた「他者に対して好奇心を持つこと」というメッセージや、劇場での映画体験に対する思いを語った。(編集部・倉本拓弥)

【動画】エミリー・ブラント、巨匠スピルバーグとのタッグを回顧

 UFOの謎や人類と地球外生命体の接触を、さまざまな形で探求し続けてきたスピルバーグ監督。本作で描くのは、人類の存在に関するミステリーとその真実をめぐる攻防だ。世界をひっくり返すほどの秘密と深い繋がりがある気象予報士マーガレット(エミリー)が、その秘密を“開示”しようとする中で、謎の組織に追われることになる。

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秘密を守り通すことは非常に難しくなった

(C) Universal Studios. All Rights Reserved.

Q:映画はすでに世界中で公開され、日本が最後の公開地域となりました。近年、SNSの発達に伴い、観客はネタバレに対して非常に敏感になっています。日本でも、試写会から1か月以上も映画の秘密を守り続けなければなりませんでした。SNSが主流となった現在と過去を比較して、お二人は映画のネタバレに対する向き合い方に変化はありましたか?

スティーヴン・スピルバーグ(以降スピルバーグ):基本的には映画について本当に話したくてたまらないこと、どうしても伝えたい内容を自分たちで検閲し、抑えるしかありません。ストーリーを台無しにせず、観客が「もう体験してしまった」と感じることなく自分の目で確かめる機会を持ってもらうために、言えることの60パーセントくらいは発言を控えなければなりません。

 アルフレッド・ヒッチコックの時代など、昔はマナーや信頼によって観客が結ばれていました。『サイコ』を観に行った人々は、結末を誰にも話さないという約束を守っていたのです。1971年に『激突!』が公開された際も、非常に衝撃的なラストでしたが、観客は結末を明かさないという暗黙の了解を守り、誰もが約束を果たしてくれたと思います。

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 しかし、それはSNSが存在する以前の話です。今では誰でも劇場にデバイスを持ち込み、違法に画面の写真や動画を撮影して投稿できてしまいます。今日において、秘密を守り通すことは非常に難しくなりました。

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 政府でさえ、地球上の空に浮かぶ物体や世界中で人々が目撃した事象について、地球規模の公衆から秘密を隠しきれなくなっています。政府は私たちに知られたくなかったのかもしれませんが、長年にわたって私たちはその真実を知りつつあるのです。

エミリー・ブラント(以降ブラント):私も最初から徹底しています。この作品のために初めてスティーヴンに会ったとき、ハリウッドの誰も彼が何を企画しているのか知りませんでした。通常ならエージェントが把握していて「こういうプロジェクトで、脚本が手に入った」と教えてくれるものですが、私は何のために彼と会うのかすら知りませんでした。

 私自身もエージェントも何も知らず、それがかえって素晴らしかったのです。スティーヴンに会った際、紙の脚本を手渡されて家に持ち帰り、読み終わったらその紙の脚本を返却しました。これこそが、情報を極めて限定的に保ち、保護する手法なのだと思います。このような脚本を大勢が読むと、すぐに噂が広まってしまいますから。だからこそ、今作は常に非常にクリエイティブで、密密で、守られた体験だと感じていました。

スピルバーグ作品らしいキャラクター

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Q:(スピルバーグ監督へ)1964年の自主制作映画『ファイアライト』から『ディスクロージャー・デイ』に至るまで、監督は約60年間にわたり、UFOの謎や人類と宇宙生命体との接触を様々な形で探求し続けてきました。『ディスクロージャー・デイ』は、『E.T.』『未知との遭遇』『宇宙戦争』といったSF作品を通じて築き上げてきたものの集大成のように感じられます。

スピルバーグ:SFとは、想像力を解放してくれるジャンルです。歴史的事実に縛られることなく探求できるジャンルであり、私が作ってきたSF映画の多くも、それに基づいているわけではありません。それらはすべて「想像の翼を広げたもの」でした。

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 『未知との遭遇』もUFO現象を扱っていますが、人類が高度な外宇宙文明と遭遇したときにどうなるかを描いた、非常に想像力に満ちた投機的物語であり、音楽と光の祝福でもありました。そして『E.T.』のような郊外を舞台にしたファンタジーでさえ、事実的な要素以上に想像力に満ちています。

 しかし『ディスクロージャー・デイ』は、私がこれまでに手がけたSF映画の中で初めて、私や脚本家のデヴィッド・コープが想像し得たもの以上に、過去80年間に人類が発見してきた事実に基づいていると感じられる作品かもしれません。

Q:(ブラントへ)マーガレットはカンザスシティのローカル気象予報士として登場し、その後、まさかの出来事に巻き込まれていきます。彼女はスピルバーグ監督の作品でよく知られる「誰もが深く共感できるキャラクター」だと感じました。監督のビジョンを表現するにあたり、どのようなアプローチで臨みましたか?

ブラント:最初に脚本を読んだとき、ページの中の彼女は本当に活き活きとした人物でした。彼女の落ち着きのない、どこか尖った部分を含め、笑わされると同時に心が温まりました。人生において自分が果たすべき役割を何とか掴み取ろうと模索し、一般的な人間の癖や人間味をすべて備えた共感できる人物と共に旅に出る感覚です。

 彼女はエリートのアクションスターではなく、ある意味、手に負えない状況に放り込まれた存在です。私はまさにそういった主人公が好きですし、演じるのも大好きです。最初から答えをすべて持っている人物ではなく、必死にしがみついて乗り切ろうとする人物を演じたいのです。

 そして、彼女は非常に「スピルバーグ作品らしいキャラクター」だと感じます。スティーヴンが描くのは、私たちが思わず抱きしめたくなるような人物であり、「私たち自身」が彼らだからです。だからこそ、マーガレットは、スティーヴンが生み出してきたヒーローたちの系譜にとても忠実なキャラクターだと感じました。

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Q:(ブラントへ)あの不気味なエイリアン言語について、スピルバーグ監督にいくつかのパターンを提案したと伺いました。惜しくも不採用となった音の中に、「これは絶対選ばれるはずだ」と特に自信があったものはありましたか?

ブラント:どれが採用されて、どれがボツになったかは定かではありませんが……でも、長期間にわたってスティーヴンと私は、あの音声に関するボイスメモをお互いに送り合っていたんですよね。

スピルバーグ:本当に不気味だったよ(笑)。もう一つ、ここだけの話があります。エミリーはニューヨークの録音スタジオで、サウンドデザイナーと一緒に一連の声を吹き込みました。そして、彼女はそれらの声をすべて自力で生み出したのです。あれは加工ではなく、さまざまな方法でカットして繋ぎ合わされたものです。

 時にはいくつかの異次元的な声を組み合わせていますが、元を辿ればすべてエミリーから発せられた音なのです。どうやって出したのかはわかりませんが、彼女は録音スタジオでその日にそれらの声を編み出しました。

 一緒にやったセッションは1回程度で、たった2回のセッションからあの声が生まれたのだと思います。さらに付け加えると、その約1週間後、私はひどい風邪をひいてしまいました。肺炎ではなかったものの、本当にひどい風邪で、息を吐くたびに胸から奇妙な音が鳴っていたのです。私はスマホを取り出して録音モードにし、胸に当てて自分の喘鳴を録音しました。そして、私が風邪の時に収録したその喘音を使って、エミリーのエイリアンボイスをより味わい深いものに仕上げたのです。

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ブラント:素晴らしいわ! なんで今まで、その話を知らなかったのかしら!

映画館に行く誰もが体験する「旅」

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Q:幼い頃から映画館へ行く体験が大好きでした。スピルバーグ監督は以前、同じ空間で一緒に映画を観る「共有体験」こそが映画文化の核心であるとおっしゃっていましたね。日本では価格の高騰や配信サービスの普及により、映画館離れが進んでいます。この大切な空間を守るため、お二人にとって「映画館で映画を観ること」がなぜそれほど特別なのか教えていただけますか?

 ブラント:スティーヴンと同感で、小さな画面であろうと大きなスクリーンであろうと、その画面上で何が起きているかこそが最も重要な部分だと思っています。しかし、素晴らしいドルビーサウンドを備えた映画館の中に身を置き、見知らぬ人々と隣り合って座り、一緒に何かを観て体験するという「包括的な一体感」には特別なものがあります。

 そこには肌で感じられるようなエネルギーの伝達が存在します。スマホを手に取ることもできませんし、メールを打つべきでもありません。自宅にいると、簡単に集中が途切れてしまいます。一時停止ボタンを押したり、物語や体験が中断されたりします。私自身もそうです。自宅で夫(ジョン・クラシンスキー監督)と何か観ているときに「ポップコーンを作ろう」となったり、子供が起きてきたりして、一瞬体験が中断されてしまうのです。

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 だからこそ私にとって重要なのは、「中断されないこと」と「映画館内のエネルギー」です。あれを自宅で再現することは不可能です。

スピルバーグ:エミリー、実に素晴らしい答えですね。私から付け加えるなら、映画を観るという行為は、日中や夜に、家族や友人、恋人やグループと一緒に何かをするために「家を出る」というイベントそのものです。文字通り家を離れ、外の世界へ出ていくことです。

 「みんなで一緒に映画を観たいから」という理由で出かける時、それに勝るものはありません。住み慣れた安全な家を離れ、未知の世界へと踏み出すこと。それは刺激的で、少しだけスリルがあります。車に乗って移動し、街を歩き、劇場に入るわけですから。

 劇場にいる全員が、そこへ辿り着くために自分の家を出なければなりませんでした。つまり、すでに共通の体験をしているのです。劇場内の誰もが、そこへ到着するまでの「旅」をしてきた。そして電気が消え、映画が始まると、さらなる次の旅が始まります。そこから皆で誰かの「夢」を共有し、それが上手くいけば、その夢があなた自身のものになるのです。

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Q:私が幼少期に『ジュラシック・パーク』を初めて観て映画の世界に魅了されたように、『ディスクロージャー・デイ』を観て映画が好きになる子供たちもきっといるはずです。最後に、この作品を通して次世代に伝えたいメッセージを教えてください。

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スピルバーグ:第一のメッセージとして「見知らぬ人の目を見つめることを恐れず、自分の知らない誰かに対して好奇心を持つこと」です。それこそが、この物語の中でマーガレットが持っている能力なのです。彼女は「スーパー・エンパス(超共感者)」であり、自分からその能力を望んだわけではありません。与えられたものなのです。

 そして今、その能力が突如として彼女の中で再び目覚めようとしています。彼女は自分に何が起きているのか分からず怯え、自ら望んだわけではない旅へと放り出されます。しかし、誰かの目を見つめるたび、相手が全くの見知らぬ人であったとしても、彼女は自分自身のことと同じくらい深くその人物を理解できるのです。もし今の世界にそうした共感や理解がもっと増えれば、各地で起きているあらゆるネガティブな出来事は激減するはずです。

ブラント:私の一番下の子と『ディスクロージャー・デイ』について話していたんです。我が家の子どもたちは、親が画面に映っているのを見るのを少し嫌がる傾向があって……単に変な感じがするのだと思います。でも下の子が先日、冒頭のシーンを観ていて、強く心に残った瞬間があると言ってくれました。警察官が威圧的かつ雑な態度で、私に車から降りるよう要求する場面です。

 娘は「ママが『あなた、今日はついてない日なのね』って言うところが大好きなの」と言ってくれました。誰かの一日の、あるいは人生の影の部分を理解することができたなら、私たち全員にとって、自分の最も悪い瞬間でさえ見守られ、理解してもらえるということは何と美しいことだろうーー娘にとってその場面が一番強く心に残ったというのは、とても興味深いことでした。マーガレットはこの素晴らしい才能(ギフティング)を持っており、それは子供たちが見て、学ぶべき非常にパワフルな要素だと思います。

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 子どもたちが映画の残りの部分を観てくれるのをまだ待っているところですが……私がパニック発作を起こしている姿を見るのが怖いらしく、「そんなママは見たくない」と言って怯えているんですよね(笑)。

スピルバーグ:つまり、見知らぬ他者に対して「好奇心を持つことを自分に許す」ということですね。それこそがこの映画のメッセージです。知らない人に対して好奇心を持ちましょう。一度も会ったことがない人物を知っていくことを恐れないでください。

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