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ミニシアター特集

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 この作品の元となったオフ・ブロードウェイのロック・ミュージカルは2年ものロングランとなり、舞台に贈られる各賞を総ナメにして……という事実はこの作品の質の高さを物語る上で重要なのだが、最も重要なのはリピーターとなった人々が何度も劇場に足を運んだという事実である。この作品は、人々の心の中に住み着いてしまうほどの強烈な個性と魅力を持っている。そして折にふれて思うのだ。あの興奮をもう一度味わいたい! と。

 残念ながら舞台版を日本で見る事はできないが、この映画を観ればリピーターが虜になった理由が充分に分かる。まず、主人公のヘドウィグが強烈だ。ビニールな質感が漂う安物のカツラに、ドギツイ化粧。さらに、ヘドウィグは男性から女性への性転換に失敗した性別不詳のドイツ人で、バンドを率いてアメリカの場末のレストランを巡業しながら、あるロックスターが自分の曲を盗作したと訴える……。

 と書くと奇矯な物語だと思うかもしれないが、それは間違いなのだ。物語の持つメッセージは深く普遍的だし、時折差し挟まれるアニメーションも簡素ながらも深い感銘を与えてくれる。だが、決して重くなり過ぎることはない。ギャグは冴えているし、何より音楽のノリが最高だ。グラム・ロックにパンクにメタルにカントリーと多彩で、どの曲もどこかで聞いた事があるような……。つまりどの曲も元ネタがある。グラムなんかは、若かりし頃のデヴィッド・ボウイのスタイルそのまんまだ。だが、パクリではない。偉大なミュージシャンたちのスタイルを借りて唄われる、歌詞が素晴らしいのだ。発見と寓意に満ち満ちている。例えばなぜ人は愛し合い、セックスをするのかなんて事に「愛の起源」という曲は答えてくれる。それは驚きと同時に笑いを誘うが、示唆に富んでいて、最後には納得して思わず深くうなずいてしまう。

 音楽が好きな人なら見逃す手はない。だが、あえて同性愛者に嫌悪感を抱く人に見てもらいたい。彼らが抱く愛、孤独、自分らしくありたいと願う気持ちは異性愛者のそれとなんら変わりはないのだという事を、この作品は楽しませながら優しく教えてくれる。そして、あなたがヘドウィグに共鳴できたら、何としてももう一度彼に会いたくなるはずだ。

ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ

2001年/ アメリカ/ 2月23日公開/シネマライズ / 1時間31分/配給: ギャガ・コミュニケーションズ
チェック: オフ・ブロードウェイで熱狂的な人気を博したロック・ミュージカルの映画化作品でサンダンス映画祭で受賞を果たした話題作。主演、脚本、監督をこなすのはジョン・キャメロン・ミッチェル。この作品のもう一つの主役である音楽の作詞作曲をミッチェルと共作したのはスティーヴン・トラスク。巧みなストーリー展開、ミッチェルの圧倒的な存在感、深い感動と興奮をもたらす音楽と詩、簡潔明快なアニメーション、と全てが見事に融合した快作。

ストーリー: バンドと共にアメリカをドサ回りしているヘドウィグ(ジョン・キャメロン・ミッチェル)は、男から女への性転換者だった。彼女は若きロックスターに自分の楽曲を盗作されたと訴えていたが、誰も彼女の意見を聞こうとしなかった。
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