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ミニシアター特集

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  デビッド・リンチの作品には暗い夜道がよく出てくる。典型的なのは、『ロスト・ハ イウェイ』の冒頭に描かれる黄色いセンターラインの入った夜道だろう。センターラインが、くねくねと不思議なリズムで揺れ動く。それは現実と非現実のあわいをつなぐ夜道の象徴として、見事な妖しさを発していた。そう、リンチ・ワールドにおいて、暗い夜道は異界へと続くトワイライト・ゾーンなのだ。

 この『マルホランド・ドライブ』も、いきなり夜道のシーンから始まる。まさしく『ロスト・ハイウェイ』の冒頭を思わせる郊外のハイウェイを、黒髪の美女を乗せた車が走っている。運転席と助手席にはスーツを着た厳しい表情の男たちが座り、後部座席にはドレスを着た美しい女がひとり。彼らが何者なのか、なぜそこを走っているのか、状況はまるでわからない。だが、画面から伝わってくるテンションは尋常ではない。なぜなら、そこはすでに暗い夜道であり、異界へのとば口だからだ。

 案の定、すぐさま事件は起きる。衝突事故が発生し、黒髪の美女は一切の記憶を失してしまうのだ。そして彼女は、ふらふらとよろめきながら夜のハリウッドへとさ迷い出てゆく。そこは『ブルー・ベルベット』の夜であり、『ツイン・ピークス』の夜であり、『ロスト・ハイウェイ』の夜につながる夜である。すでにトワイライト・ゾーンの向こう側だ。女は──そして観客も──その時点ですでにリンチ・ワールドに取り込まれているのである。

 この黒髪の美女と、ナオミ・ワッツ演じるブロンドの美女ベティが出会うところから、映画の物語は動き出す。ベティが、黒髪の美女──彼女はリタ・ヘイワースのポスターを見て「リタ」と名のる──の記憶探しの手助けを申し出て、二人はハリウッドの街を探索することになる。これに、スポンサーと対立して破産しそうになる映画監督や、ついてない殺し屋の話などが絡まっていき、映画は迷路のように入り組んだ道をひた走っていく。

 謎、陰謀、暴力、嫉妬、殺人、倒錯したセックス。ほんのはずみ心から始まったはずの探偵ごっこが、いつのまにか狂気の世界にはまり込む。どこまでが現実で、どこからが妄想なのか。読み解けそうで読み解けない、狂気の際を疾走する複雑怪奇なストーリーと、ダークでシュールな独特の映像美に圧倒され、観客は衝撃的なエンディングまで一気に運ばれることになる。
 くらくらする。映画に酩酊するような快感がここにはある。映画に興奮を求める人、それにとりわけ、悪夢が大好きな人には、ぜひ観てもらいたい作品だ。

マルホランド・ドライブ

2000年/ アメリカ・フランス/ 2月16日公開/シネマスクエアとうきゅう /2時間26分/配給: コムストック
チェック:鬼才デビット・リンチ監督待望の最新作。ハリウッドを舞台に二人のヒロインが繰り広げる全く新しいタイプのミステリーロマンス。本作は2001年カンヌ映画祭で監督賞も受賞している。禁断の愛におぼれる二人のヒロインを『タンク・ガール』のナオミ・ワッツ、『リトルニッキー』のローラ・エレナ・ハリングが官能的に演じている。欲望と謎が渦巻く出口のない迷路へ観客を引きずり込む、独特のリンチワールド。

ストーリー:女優を夢見てハリウッドへやって来たベティ(ナオミ・ワッツ)は、ある日ブルネットの美女(ローラ・エレナ・ハリング)に出会う。彼女は、マルホランド・ドライブで起きた自動車事故の唯一の生存者。だが、すべての記憶を失っていた……。
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