カナダの若手映画集団が制作した本作は、ヴィンチェンゾ・ナタリ監督の長編デビュー作にして、不朽の名作として語り継がれる傑作に。低予算ながら美的センスを感じさせる美術と、その予算を逆手にとったワンアイデアを軸に展開する緊迫した密室劇。人間のどす黒い本性をあらわにしたドラマ展開は、アルフレッド・ヒッチコック監督の映画『救命艇』にも匹敵すると絶賛された。
ストーリー:
謎めいた立方体の部屋で目を覚ました数人の男女。それぞれ面識はなく、年齢も職業もバラバラ。その部屋から脱出する方法はただ一つ。出口を見つけることのみ。しかしハッチ式扉を開いた先には同じような立方体の部屋が無数に存在しており、箱の迷路と化していた。そんな中彼らは出口を見つけるための暗号を発見するが、ひとたび部屋を間違えれば、そこには死のトラップが待ち構えていた。暗号を解きながら出口を探す彼らだったが、死と隣り合わせの緊迫した状況に彼らの本性はあらわになり、脱出劇は狂気を帯びていく。
映画『ソウ』に先駆けること7年、ソリッド・シチュエーション・スリラーの原点ともいえる本作は、衝撃を持って迎えられ、ナタリ監督ノータッチで続編が制作されるなど、多数の便乗亜流作品を生み出した。この後ナタリ監督は映画『カンパニーマン』『NOTHING ナッシング』など新作を発表。その非凡な才能に根強いファンを持つが、やはりデビュー作のハードルは高い。エイドリアン・ブロディ、サラ・ポーリー共演の新作映画『Splice』(原題)ではバイオホラーに初挑戦。日本公開を期待するとともに、傑作であることを願う。
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第42回シッチェス・カタロニア国際ファンタスティック映画祭では『Splice』(原題)が特殊効果賞受賞!ヴィンチェンゾ・ナタリ監督
Robert Marquardt / WireImage / Getty Images |
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