洋画界に革命!映画祭の話題作がNetflixスルーの時代に

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 海外で公開中の作品でも、日本で観られるのは数か月先……。そんな“洋画の公開時期問題”に近年変化が起きています。それは、配信サービスの登場! 特に世界最大級オンラインストリーミングサービスのNetflixが2015年9月から日本でもサービスを開始したことで、洋画界に激震が走っています。(編集部・吉田唯)

アカデミー賞作品賞ノミネート『最後の追跡』も“Netflixスルー”

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Pascal Le Segretain / Getty Images

 サービス開始前から「黒船がやって来る」と話題になっていたNetflix。しかし、日本にやってきた当初はドラマ作品が大々的に取り上げられ、いまいち波に乗れなかった“映画が観たい派”の人もいるのではないでしょうか。ところが、サービス開始から1年以上が経ちNetflixの映画コンテンツもより充実。映画ファンこそチェックしたいラインナップがそろっているのです!

 象徴的なのは、第89回アカデミー賞作品賞にノミネートされた『最後の追跡』。今年の作品賞にノミネートされていた中で、日本時間2月27日の授賞式時に日本で鑑賞可能なのは『ラ・ラ・ランド』(2月24日公開)と、劇場未公開でNetflix独占配信の『最後の追跡』だけでした。また、クエンティン・タランティーノブライアン・シンガー、今年のアカデミー賞で史上最年少(32歳1か月7日)の監督賞受賞を達成したデイミアン・チャゼルを輩出し、世界中の買い付け担当者が注目するサンダンス映画祭のグランプリにあたるドラマ部門審査員大賞作『この世に私の居場所なんてない』も、映画祭の終了から約1か月で配信され、“日本公開まで1年以上待たないといけない”という海外作品が多数ある中で異例のスピード公開が反響を呼びました。

 このように、ビデオスルーならぬ“Netflixスルー”になる映画祭&映画賞の話題作が増えているのです。多数の作品を買い付けたというサンダンス映画祭だけでなく、なんと世界三大映画祭の一つであるカンヌ国際映画祭で上映された作品までも“Netflixスルー”の時代に! さらに、ポン・ジュノ監督の『オクジャ』(2017年6月28日全世界同時オンラインストーリミング)やノア・バームバック監督の『マイヤーウィッツ ストーリーズ(ニュー アンド セレクテッド)』(原題)(2017年に全世界配信予定)といったNetflixオリジナル作品が第70回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に正式出品されるなど、世界から注目を浴びる映像作家の新たな活躍の場としてもNetflixは目が離せない状況になってきています。膨大なラインナップの中から探し出すのは大変なので、以下では“Netflixスルー”となった映画祭の話題作や、映画賞を受賞した注目作を紹介します。

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『最後の追跡』

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『最後の追跡』はNetflixにて独占配信中

【注目ポイント】
・第69回カンヌ国際映画祭 ある視点部門ノミネート
・第89回アカデミー賞 4部門ノミネート(作品賞、助演男優賞、脚本賞、編集賞)

 家族の牧場が銀行に差し押さえらえるのを回避するために銀行強盗を繰り返す兄弟と、彼らを追うテキサス・レンジャーの逃走劇を活写。ベン・フォスタークリス・パイン演じる兄弟は罵り合ってすれ違ってばかりなのかと思えば、互いへの愛情をふとした瞬間に垣間見せる渋い男の魅力で物語へと引き込んでいきます。一方、退職目前のベテランレンジャーにふんしたジェフ・ブリッジスはきわどい人種ジョークで相棒をいじりながらも、その奥には確かな絆があることを感じさせる名演でアカデミー賞助演男優賞ノミネートを果たしました。テキサスの田舎町をザラザラとした渇いたトーンで捉えるとともに、そこに映し出されるのはイラク戦争やリーマン・ショックの影響に悩まされる社会背景。『マンチェスター・バイ・ザ・シー』でも登場しましたが、白人の貧困層が今のアメリカ社会でいかに問題になっているのかを感じさせます。

『ディヴァイン』

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『ディヴァイン』はNetflixにて独占配信中

【注目ポイント】
・第69回カンヌ国際映画祭 カメラドール(新人監督賞)受賞
・第74回ゴールデン・グローブ賞 外国語映画賞ノミネート

 フランス郊外のスラム街で暮らす少女が、どん底の生活から脱出しようとドラッグの売人になり、後戻りのできない状況に追い込まれていくさまを追った作品。親友の少女との友情、若いダンサーの青年との恋といった輝かしい青春のきらめきを新鮮なカメラワークで収めると同時に、貧困層の厳しい現実とそこに生きる人々の不満をリアルに描き出しており、“フランス映画=おしゃれ”のイメージ打ち破る骨太な一本に仕上がっています。幼い少女のようだと思えば妖艶な面を見せたり、攻撃的かと思えば傷ついた獣のような寂しげな表情を見せたり、くるくると表情を変える主演女優ウーヤラ・アマムラ(本作でフランスのアカデミー賞にあたるセザール賞の最優秀新人女優賞を受賞)の演技にも注目です。

『アクエリアス』

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ヒロインを演じたソニア・ブラガ - Robin Marchant / Getty Images

【注目ポイント】
・第69回カンヌ国際映画祭 コンペティション部門ノミネート

 カンヌ国際映画祭で無冠に終わるも批評家たちから絶賛を集めた本作は、ブラジルの海辺にある建物「アクエリアス」の再開発を推し進める業者から立ち退きを交渉された元音楽評論家の女性が、最後の住人となっても立ち退きを拒み、自らの居場所を守ろうとする姿を描き出しています。本作はとにかくヒロインが魅力的! 水着姿で海に繰り出す活発さや、年老いても女であろうとするしなやかな力強さ、自身の大切なものを守るために業者と闘う凛とした姿には、ほれぼれします。また、ヒロインが元音楽評論家という設定だけあって、劇中の音楽も良く、富裕層と貧困層の生活の違いをサラッと映し出すなど社会要素への気配りも◎。メガホンを取ったクレベール・メンドンサ・フィリオ監督は、今年の第70回カンヌ国際映画祭で批評家週間の審査委員長を務めることが決定しており、ブラジル期待の星として注目されています。

『生と死と、その間にあるもの』

【注目ポイント】
・第68回カンヌ国際映画祭 ある視点部門 国際映画批評家連盟賞受賞

 歌って踊るだけがインド映画じゃない! というのは映画ファンの間ではもはや常識になっていますが、いざそうしたインド映画を観ようと思うと日本で視聴可能なものは選択肢が限られているのが現実です。インドのガンジス川を背景にした本作は、4人の主人公それぞれの悲劇を偏見やカースト制度といった社会的要素を織り交ぜて紡ぎ出したドラマ。身分違いの恋に悩む青年、古い道徳観に苦しむ女性、逮捕された娘を守るために警察への賄賂を必死でかき集める父親……歌って踊る華やかなインド映画も楽しいですが、本作はリアルなインド社会を覗き見ることができる貴重な一本です(ちなみに原題の『Masaan』は「火葬場」の意味で、劇中ではインド式の火葬シーンも登場するなどインド文化を知る上で興味深い場面も多数)。信じがたいほどに古い価値観や汚職がはびこる社会でもがきながらも、新たなインドの未来へと一歩を踏み出していく主人公たちの姿がじんわりと胸に染み入る秀作なので、歌って踊るインド映画にハードルの高さを感じる人やインド映画を見慣れていない人にもおすすめです。

『ビースト・オブ・ノー・ネーション』

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『ビースト・オブ・ノー・ネーション』はNetflixにて独占配信中

【注目ポイント】
・第72回ベネチア国際映画祭 マルチェロ・マストロヤンニ賞受賞(エイブラハム・アッター
・第73回ゴールデン・グローブ賞 助演男優賞ノミネート(イドリス・エルバ

 ベネチア国際映画祭のコンペティション部門にも出品され注目を浴びた本作は、西アフリカのとある国を舞台に、内戦で家族と引き裂かれた少年が生き残るために少年兵へと変貌していく姿を臨場感あふれる映像で描いたNetflix初のオリジナル映画。オーディションで起用された素人のエイブラハムは、平穏な日常を破壊された末に戦争の狂気に染まっていく少年兵を見事に体現し、同映画祭で最優秀新人賞にあたるマルチェロ・マストロヤンニ賞に輝きました。また、少年を捕らえて兵士へと鍛え上げる武装集団の指揮官にふんしたイドリスは、見ているだけで縮み上がってしまいそうな圧倒的なカリスマ性を発揮。「もし自分がこの場にいたら正気を保っていられるか?」と考えざるを得ない結末が、人の命を奪い、生き残った人の運命も狂わせる戦争の恐ろしさを物語っています。

『サンド・ストーム』

【注目ポイント】
・第89回アカデミー賞 外国語映画賞 イスラエル代表で出品
・第66回ベルリン国際映画祭 パノラマ部門出品
・第32回サンダンス映画祭 ドラマ(ワールドシネマ)部門 審査員大賞受賞

 本作は、イスラエルの砂漠に住む一家を追ったヒューマンドラマ。とある家父長制の家族が、若い二番目の妻を迎えるところから物語は始まります。そのことにいらだつ第一夫人や、親が決めた相手ではなく自分が愛する人と恋愛結婚することを望む娘だけでなく、盛大な歓迎を受けて第一夫人よりも良い家を与えられた第二夫人ですらこの結婚に満足していない様子で、劇中に登場する女性は誰一人幸せに見えません。女性であるだけで従属を求められる文化の中で、どうすれば女性であっても幸せに生きていくことができるのか。葛藤しながらも、必死に己の道を探ろうとする母子の姿に思わず共感してしまう女性は多いはずです。

『ホワイト・ヘルメット -シリアの民間防衛隊-』

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『ホワイト・ヘルメット -シリアの民間防衛隊-』はNetflixにて独占配信中

【注目ポイント】
・第89回アカデミー賞 短編ドキュメンタリー賞受賞

 Netflixはドキュメンタリーの宝庫なんです! なかでも、内戦で多くの人々が命を落としているシリアで活動するシリア民間防衛隊(通称ホワイト・ヘルメット)が、空爆に見舞われた人々をがれきの山から救出する姿を追いかけた本作は、Netflixオリジナル作品として初のオスカー受賞という快挙を成し遂げた注目の一本。もうすぐ2歳になる幼い子供も爆撃があると「パパ 爆弾」というほど軍用機に詳しかったり、ネットを開いたら兄弟の遺体写真が掲載されていたり……そこには想像を絶するシリアの現状が映し出されています。それでも「ひとつの命を救うことは人類を救うことだ」という標語を掲げ、希望と誇りを失わずに現場を駆け抜ける隊員たち。その姿からは、絶望的な状況のなかにあって人間がどのように生きていくべきなのかを教えられます。また、本作を監督したオーランド・ヴォン・アインシーデルは、レオナルド・ディカプリオが製作総指揮を務めた『ヴィルンガ』で第87回アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞にもノミネートされています。

『この世に私の居場所なんてない』

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『この世に私の居場所なんてない』はNetflixにて独占配信中

【注目ポイント】
・第33回サンダンス映画祭 ドラマ部門審査員大賞受賞

 Netflixが製作費を出して制作された本作は、さえない女性が泥棒の被害に遭い、変わった隣人と共に犯人を追ううちに思いがけない事態に巻き込まれていくさまを活写した犯罪ブラックコメディーです。気弱で地味な女性だったのに、犯人を追う過程で感情を爆発させるようになっていく憤怒のヒロインを演じたメラニー・リンスキーと、手裏剣を武器に戦っちゃうようなヘンテコだけど、どこか憎めない隣人役のイライジャ・ウッドの個性派コンビが最高! 世界に自分の居場所を見つけられないイケてない二人が力を合わせていくうちに絆を深めていく展開が微笑ましい一方で、『ブルー・リベンジ』『グリーンルーム』など暴力描写のすごい映画に出演していた俳優のメイコン・ブレアの監督デビュー作とあって、後半に待ち受ける怒涛のバイオレンス展開は容赦なし!(※グロがダメな人は注意が必要かも)彼の監督としての今後も期待させられます。

『タンジェリン』

【注目ポイント】
・第31回インディペンデント・スピリット賞 助演女優賞受賞(マイア・テイラー)
・第31回サンダンス映画祭 正式出品

 クリスマスイブのロサンゼルスを舞台に全編iPhoneで撮影(!)された本作は、恋人の浮気を知って激怒するトランスジェンダーの娼婦と、歌手を夢見る同業者の友人の日常を描いた切なくも力強い絶品クリスマス映画です。主人公たちの下ネタ満載のユーモラスなセリフの応酬には思わず爆笑! かと思えば、ろくでもない恋人を持つ主人公と歌手を目指しながらも現実はうまくいかない友人の友情にホロリとさせられる場面も。iPhoneで撮影したとは思えないほどスタイリッシュな映像にも注目で、メガホンを取ったショーン・ベイカーは監督だけでなく脚本・撮影・編集も担当しており、今後要チェックの才能といえるでしょう。ちなみに本作は東京国際映画祭で上映された際に話題を呼び、その後Netflixで配信され、さらに配信後で劇場上映もされ新たな興行展開が注目されました。

『不吉な招待状』

【注目ポイント】
・シッチェス・カタロニア国際ファンタスティック映画祭2015 最優秀長編映画賞

 元妻と彼女の夫から夕食に招待された男が思わぬ事態に直面するさまを描いたサイコスリラー。パーティーの場に集まった友人や元妻たちと会話をしていくうちに、主人公はこの集まりには何か不気味なものが隠されていると感じとります。怪しい友人が登場したかと思えば、奇妙なゲームが開始されるなど、ひたすら緊迫した空気が張り詰めていく中で次第に主人公が抱える過去の傷も明らかになり……最後にこのパーティーの目的が明らかになるラスト20分にはゾッとする衝撃の展開が待ち受けています(とくにラストカットは背筋が凍る!)。ちなみに、本作はNetflix配信後に「未体験ゾーンの映画たち 2017」で『インビテーション』というタイトルで上映もされています。

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