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2018年カンヌ映画祭総評!受賞作&傾向まとめ

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 現地時間5月8日~19日までフランスで開催された第71回カンヌ国際映画祭。是枝裕和監督作『万引き家族』が日本映画として21年ぶりに最高賞パルムドールに輝くという素晴らしい結果で幕を閉じましたが、コンペティション部門には他にもクオリティーの高い映画がたくさん! 今年の受賞結果を振り返ります。(取材・文:編集部・市川遥)

無視されてきた人々に光を:強いテーマ性を持った映画がそろう

『万引き家族』
(C) 2018『万引き家族』 製作委員会

 授賞式では審査員長のケイト・ブランシェットが、今年のコンペ作は「無視されてきた人々(Invisible People)に声を与えた」と称賛しましたが、まさにこのテーマが今年の受賞作に共通したものでした。『万引き家族』は生活のために犯罪を重ねる家族の姿を美しさも醜さも丹念に描いた作品で、是枝監督は「今の日本の社会の中で、隅に追いやられている、見過ごされがちな家族をどう可視化するかということ考えました」と語っています。公式上映では本当に熱のこもったスタンディングオベーションが続き、海外メディアも大絶賛。会見場で授賞式の中継を観ていた各国の記者たちも『万引き家族』のパルムドール受賞に拍手喝采でした。彼らは普通にブーイングしたり罵声を浴びせたりするので、皆が歓迎できる結果になるのは結構まれなんです。

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『ブラッククランズマン(原題) / Blackkklansman』

 パルムドールに次ぐグランプリに輝いたのは、スパイク・リー監督の『ブラッククランズマン(原題) / Blackkklansman』。黒人警官が白人至上主義団体KKKに潜入するという1970年代初期に起きたまさかの実話を基にした作品で、これがめちゃくちゃ面白い! デンゼル・ワシントンの息子であるジョン・デヴィッド・ワシントンが“黒人の英語”と“白人(至上主義者)の英語”を巧みに使い分ける主人公をひょうひょうと演じていて、社会派のメッセージを伝えるのにユーモアはこんなにも有効なものなのだと再認識させられます。リー監督が映画の完成後に加えたというシャーロッツビル事件(白人至上主義者が、シャーロッツビルで行われた反人種差別デモに車で突っ込んで若い白人女性を殺害した事件)の映像には否定的な声もありました。しかし、過去を舞台にしていながら描いているのは現代であるという強い思い、そして当時とあまり変わらない現状への監督の強い怒りは痛いほど感じられました。

『カペナウム(原題) / Capharnaum』

 そしてグランプリに次ぐ審査員賞を受賞したのは、社会の底辺で暮らす12歳の少年ゼインの視点で中東レバノンの貧困・移民の問題を描いた『カペナウム(原題) / Capharnaum』。大人を頼ることなどずっと前に諦めて、妹だけでなく他人の赤ん坊まで守ろうと孤軍奮闘するゼインの哀しげな眼差しには、否が応でも心を揺さぶられます。デビュー作『キャラメル』で高く評価された女性監督ナディーン・ラバキーは、そんな彼が両親に向ける静かな怒りまでシームレスなカメラワークと編集によって見事にスクリーンに刻みました。重いテーマを次々に提起しながら観客をぐいぐい引き込むパワーを持っており、映画としての出来も抜群。キャストは皆ストリートで見いだされた、キャラクターと重なる人生を送ってきた人々で、ゼインを支えるエチオピア移民を演じたヨルダノス・シェラウは「これはわたしの物語なんです。伝えさせてくれてありがとう」と涙ながらに監督に感謝を伝えていました。

『ドッグマン(原題) / Dogman』
小男ぶりが最高な『ドッグマン(原題) / Dogman』のマルチェロ・フォンテ

 監督賞は、鉄のカーテンで隔てられた東西を行き来しながら、10数年にわたって別れと再会を繰り返す男女のラブストーリー『コールド・ウォー(英題) / Cold War』のパヴェウ・パヴリコフスキ監督の手に。細部までこだわられたモノクロの映像は全てのショットが絵になり、すぐにサントラが欲しくなるほど音楽のセンスもよくて監督賞も納得。男優賞は『ドッグマン(原題) / Dogman』で暴力的な友人に支配され、身動きが取れなくなってく小男を演じたイタリアのマルチェロ・フォンテ(コミカルで会見でも大人気!)、女優賞は『アイカ(原題) / Ayka』で出産直後にモスクワ病院を抜け出し、血を流しながら借金返済のために街を駆けずり回る不法移民にふんしたサマール・イェスリャーモワが受賞しました。

 カンヌ常連のオールスター的だった近年のラインナップに比べると、新しい顔ぶれが目立った今年のコンペティション部門21作。初カンヌにしてコンペ選出という快挙を成し遂げた『寝ても覚めても』の濱口竜介監督も、これをきっかけに今後いっそう世界で存在感を示すことになっていくことでしょう。

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継続中のセキュリティーと数十年ぶりの大きな変化

 フランスでのテロ事件を受けて2年前から強化されているセキュリティーは、今年も継続。会場の入り口では手荷物チェックが行われ、門型の金属探知機をくぐる必要があり、爆発物探知犬の姿も。会場周辺は、機関銃を手にしたフランス共和国保安機動隊がパトロールしていました。

セルフィー禁止
映画祭で配られたセルフィー禁止ポストカード

 今年からの変化となったのが、レッドカーペットでのセルフィー禁止です。もっと言えば、セルフィーだけでなく写真を撮るのもNG。レッドカーペットへの入り口には注意を促すポスターが掲げられ、実際にスマホを出して撮影を始めてしまった人たちの元にはタキシード姿のスタッフが光の速さでどこからともなく現れて注意をするなど、なかなか徹底した措置が取られていました。

 また、コンペティション部門をはじめとしたメインの部門の作品に関しては、公式上映(キャスト・監督がレッドカーペットを歩き、観客と一緒に鑑賞する上映)前に行われていたプレス試写が廃止に。公式上映前にTwitterなどでレビューが出てしまうのを防ぎ、公式上映を正真正銘の“ワールドプレミア”にしてその価値を上げることが目的だそう。記者からは結構な不満が出ていましたが、このご時世、仕方のない措置だといえそうです。

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