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カルティエの秘められた歴史

映画に見る憧れのブランド

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カルティエ
In Pictures Ltd./Corbis via Getty Images / ゲッティ イメージズ

 「王の宝石商、宝石商の王」とイギリス国王エドワード七世に言わしめたカルティエは、1847年にジュエリー職人であるルイ=フランソワ・カルティエにより創業されました。その後、息子アルフレッドから孫の三兄弟ルイ、ピエール、ジャックまでの三代の間に、新しいダイヤモンドのカットを取り入れたり、プラチナを初めて宝石の台座に使用したり、東洋的なデザインを取り入れたりなど、革新的な技術、素材やデザインで宝石界の先駆者となったカルティエ。

 世界を股にかけて王族、富豪や映画スターの顧客をもつ史上最大の宝石商になったカルティエの歴史を語る5つのアイコンを、映画と共に振り返ってみましょう。

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1:懐中時計から腕時計の移行期に大ヒットした、サントス

 ニューヨーク・ウォール街の若き金融マン、パド(チャーリー・シーン)と天才投資家ゴードン・ゲッコー(マイケル・ダグラス)が織り成すインサイダー取引事件を描いた映画『ウォール街』(1987)。「強欲は善だ」という名(?)セリフを放ったゴードンがこのときに着用していたのが、金無垢のサントスです。

 実際に、ウォール街のビジネスマンが身につけているのは、タフなイメージのあるロレックスが圧倒的に多いそう。その中で、美術収集家の側面をもつゴードンはあえてサントスを選んだのではないか、と時計ジャーナリストの広田雅将氏は推察しています。*1

ウォール街
『ウォール街』より - 20th Century Fox / Photofest / ゲッティ イメージズ

 1900年代初頭、多くの時計メーカーは腕時計の製作を始めていました。女性の腕時計は装飾品としてすでに1800年代後半に出回っていましたが、この頃、男性の間では未だに懐中時計が主流でした。1911年、ブラジル人富豪で飛行家のアルベルト・サントス・デュモンは、両手が塞がった飛行機の操縦中でも正確な時刻を確認できるような時計を創業者の孫、ルイ・カルティエに依頼。この時作られたのが、丸いケースの懐中時計ではなく、角形ケースを打ち出した精度の高い男性用腕時計“サントス”だったのです。サントスは大ヒットし、現在でもカルティエのアイコニックな時計としてメゾンの歴史を刻み続けています。

 ちなみに、『ウォール街』のオリバー・ストーン監督は、実在の投資家をモデルにしたゴードンを通して、人よりも利益を優先する金融ビジネスの在り方に警鐘を鳴らしたつもりでしたが、監督の意図に反して、ゴードンの生き方や服装に憧れて金融マンを志望する若者が続出したそうです。

2:カルティエNY店に客が殺到した“アール・デコ”リング

 第一次世界大戦後の戦争特需で富裕層にのし上がった労働者階級出身の青年ギャツビー(ロバート・レッドフォード)と名家出身のデイジー(ミア・ファロー)のラブストーリーを通して、階級社会が大衆社会へと変化しつつあった狂騒の1920年代を浮き彫りにした名作『華麗なるギャツビー』(1974)。1900年代初頭に起こった工業の発展により、自動車、映画、ラジオ、衣服や身の回りの商品が大量生産されて、資本階級が台頭してきた時代です。過剰な装飾“アール・ヌーヴォー”は、機能性を重視するシンプルでシャープな“アール・デコ”に取って代わられていました。

華麗なるギャツビー
『華麗なるギャツビー』より。ミア・ファロー演じるデイジー、指には大きな婚約指輪が! - Paramount Pictures / Photofest / ゲッティ イメージズ

 時代の最先端を歩むカルティエは、アール・デコが一般に普及する前に同スタイルのジュエリーを発表。『華麗なるギャツビー』では、当時画期的だったアール・デコのジュエリーがカルティエによって再現されています。この映画で、デイジーが身につける六角形のエメラルドとパールのタッセルネックレスや、マーキスカットの婚約指輪は、世界中から注目を集めました。「デイジーの婚約指輪がほしい!」と言う客がカルティエのニューヨーク店に殺到したそう。*2

3:カルティエに生き続けるパンテール

 8月10日公開の『オーシャンズ8』は『オーシャンズ』シリーズの最新作。ダニー・オーシャンの妹デビー(サンドラ・ブロック)がルー(ケイト・ブランシェット)やナインボール(リアーナ)を始めとする新しいチームを率いて、メットガラに出席している女優ダフネ(アン・ハサウェイ)からカルティエのダイヤモンドネックレス“トゥーサン”を盗み出す犯罪サスペンスです。

オーシャンズ8
『オーシャンズ8』より - (C) 2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., VILLAGE ROADSHOW FILMS NORTH AMERICA INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

 作中において1億5,000万ドル(約165億円/1ドル=110円換算)もの価値があるトゥーサンは、映画のために作られた架空のジュエリーですが、実は、カルティエのハイジュエリー部門最高責任者だったジャンヌ・トゥーサンにちなんで名づけられたもの。

 1877年にベルギー・ブリュッセルで生まれたレース職人の娘ジャンヌ・トゥーサンは、16歳のとき侯爵家の息子と恋に落ちました。しかし家柄の違いから結婚を反対され、若い二人はパリに向かいます。この時代のパリは、ピカソモディリアーニアンドレ・ジッドココ・シャネルなど若いアーティストたちであふれ、モダニズムに沸いた新しい時代の幕開けでした。

オーシャンズ8
『オーシャンズ8』より。こちらが劇中に登場するトゥーサン - (C) 2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., VILLAGE ROADSHOW FILMS NORTH AMERICA INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

 パリで刺激的な日々を送っていたジャンヌでしたが、やがて侯爵家の息子に捨てられてしまいます。生活費を稼ぐためにバッグの制作を始めたジャンヌ。20代半ばだった彼女は、ある日、カルティエの創始者の孫、ルイ・カルティエに出会います。ジャンヌの大胆な感性に感銘を受けたルイは、カルティエのメゾンで働くことを提案。宝石の知識を貪欲に学んだジャンヌは、カルティエの作品の点検を任され、デザインの意見まで求められるような存在へと成長していきました。

 次第にルイとジャンヌの仲は、公私ともにパートナーの関係へと発展。ジャンヌとの結婚を考えたルイでしたが、父と兄弟の反対にあい、結局はハンガリー貴族の女性と結婚することに。社会はまだまだ階級によって分断されていたのです。とはいえ、ルイの右腕としてカルティエに残ることを決意したジャンヌ。

 1933年、心臓病を患ったルイはジャンヌをハイジュエリー部門最高責任者に指名しました。結婚には大反対したルイの父や兄弟もこの決断には大賛成。ルイ亡き後も、カルティエに貢献し続けたジャンヌのニックネーム“パンテール(豹)”をモチーフに、たくさんのジュエリーやパンテール ドゥ・カルティエといった時計が創られました。ルイとは結ばれなかったジャンヌですが、カルティエのアイコンとして生き続けているのです。

4:モナコ王妃グレース・ケリーの婚約指輪

上流社会
『上流社会』より - Sunset Boulevard/Corbis via Getty Images / ゲッティ イメージズ

 映画『上流社会』(1956)は、奔放な娘トレイシー(グレース・ケリー)の再婚話を軸に上流階級の人間模様をコミカルに描いたミュージカル。ジャズミュージシャンのルイ・アームストロングフランク・シナトラビング・クロスビー豪華競演が素晴らしい作品です。本作は、グレースがモナコ公国のレーニエ公と婚約後に女優として出演した、最後の映画としても有名です。出演中、グレースが左手の薬指に着けていたのは、レーニエ公から贈られたカルティエの婚約指輪だったそう。なんと、10.47カラットもあるエメラルドカットのダイヤモンドなのです!

 ちなみに、二コール・キッドマン主演の『グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札』(2013)や、マドンナの監督作『ウォリスとエドワード 英国王冠をかけた恋』(2011)に登場したジュエリーは、グレースやウォリスが遺したカルティエのジュエリーを、カルティエのアトリエが忠実に再現したもの。映画が完成した後は模造されることがないように、すべて廃棄されたといいます。

グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札
『グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札』より - The Weinstein Company / Photofest / ゲッティ イメージズ

5:セレブを魅了する「LOVE ブレスレット」

 第一次世界大戦と第二次世界戦を経て、カルティエの顧客であった世界の王室の多くは絶えていきました。代わりに新しく顧客となったのが産業界の富豪や映画スターたち。1969年、現在もカルティエのアイコンとして大人気のLOVE ブレスレットが誕生しました。映画『クレオパトラ』(1963)の共演がきっかけで結婚したエリザベス・テイラーリチャード・バートン、そして映画で何度も一緒に仕事をしたソフィア・ローレンと映画プロデューサーのカルロ・ポンティなどの大物カップルが、LOVE ブレスレットを愛用しました。*3

 今ではブレスレットの他にも、イヤリング、リング、ペンダントを含むLOVEコレクション。ビスモチーフは、中世の貞操帯からインスパイアされたデザインなのだとか。ちなみに、「愛の絆」と「束縛」をテーマにし永遠の愛を象徴する“LOVE ブレスレットSM”は、着脱するために付属の専用ドライバーが必要。ニューヨークの救急病院では緊急患者のためにこの専用ドライバーを常時用意しているといわれるほど、多くの人を魅了しています。

カルティエ LOVEコレクション
カルティエの人気アイテム、LOVEコレクション - Kevin Mazur / WireImage for Cartier North America / Getty Images / ゲッティ イメージズ

 170年以上もの間、世界の富裕層とネットワークを作り宝石店を拡大したカルティエ。時代の変化を誰よりも早く察知し、それをジュエリーに取り込むことによって宝飾界の流行を作り続けてきました。カルティエは、ジュエリーの芸術性、創造性、技術性において「先駆者であり、伝達者であり、継承者」なのです。*4 だからこそ、マリリン・モンローはこう歌ったのでしょう。

 「女が年をとれば男たちは見限るけれど、スクエアカットでもペアシェイプでも宝石の形は変わらない……ダイアモンドは女の親友よ……ティファニー!……カルティエ!……」と。

【参考】
カルティエ公式サイト
*1 GQ JAPAN
*2 BEJEWELED
*3 TOWN&COUNTORY
*4 集英社インターナショナル『カルティエを愛した女たち』川島ルミ子著
集英社インターナショナル『カルティエと王家の宝石』川島ルミ子著
新潮文庫『ジュエリーの世界史』山口遼著
徳間書店『CARTIER カルティエ プラチナの芸術家』フランコ・コローニ/エリック・ヌスバウム共著

此花さくやプロフィール

此花

 「映画で美活する」映画美容ライター/MAMEW骨筋メイク(R)公認アドバイザー。洋画好きが高じて高3のときに渡米。1999年NYファッション工科大学(F.I.T)でファッションと関連業界の国際貿易とマーケティング学科を卒業。卒業後はシャネルや資生堂アメリカなどでメイク製品のマーケティングに携わる。2007年の出産を機にビジネス翻訳家・美容ライターとして活動開始。執筆実績に扶桑社「女子SPA!」「メディアジーン」「cafeglobe」、小学館「美レンジャー」、コンデナスト・ジャパン「VOGUE GIRL」など。海外セレブのファッション・メイク分析が生きがいで、映画のファッションやメイクHow Toを発信中!

 
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