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ラミ・マレックが語る役づくり秘話『ボヘミアン・ラプソディ』インタビュー

ラミ・マレック
写真:ZUMA Press / アフロ

 日本でも大ヒットを記録し、社会現象を巻き起こしている映画『ボヘミアン・ラプソディ』で、クイーンのボーカルであるフレディ・マーキュリーを熱演したラミ・マレック。オスカーにもノミネートされたラミが、フレディと重なる自身の境遇、役づくりにおいてインスパイアされた人気俳優の存在などを語った。(文・構成:編集部・中山雄一朗)

ラミとフレディの共通点

ボヘミアン・ラプソディ
フレディになりきったラミ - (C) 2018 Twentieth Century Fox

Q:フレディ・マーキュリーを演じてほしいと言われた直後の気持ちは?

まず感じたのはショックだね。役者としてのキャリアで、フレディ・マーキュリーを演じてほしいと言われるようなことが起きたときの興奮を抑える法則なんてないんじゃないかな。驚きのあまり立ち尽くしてしまう、そんな一瞬だったね。陶酔感と身震いが同時にやってきた。その後に襲ってくるのが、多くの人たちの心に今も生き続け、全世代を通じて最も才能あるアーティストとして尊敬されている伝説的な存在を演じることの重大さだ。そのすさまじいプレッシャーは想像がつくよね。それと同時に、どうしようもなく興奮して、あの類まれな素晴らしい人間の演じ方を考え始めている意欲的な自分もいた。

Q:役づくりはどのようにしましたか?

フレディが書いた曲に目を通して、すべての曲に共通するテーマを探した。曲を通して、彼という人間を理解できるようにね。あれほど情熱的に何かを書くには、心の奥底にある感情を活かしているのだろうと考えた。

Q:彼の曲に共通するテーマを見つけましたか?

間違いなく、愛だね。愛を求め、愛を見つることへの切実なニーズ。そして、かなわないその願い。彼は生涯を通じて愛を探し続けていた。もう一つのテーマは、アイデンティティーだね。役づくりを一からやろうと決めて、彼の子供時代のことも調べた。ザンジバル島で生まれ、幼いときにボンベイにある寄宿学校セント・ピーターズに入れられた。ザンジバルに戻ったときには革命が起きていて、家族と一緒に避難するようにして英国に移住した。その頃の名前は、ファルーク・バルサラだ。彼は子供時代のことを“激動の幼少期”と表現していた。

それを僕自身の人生に重ね合わせていったんだ。僕も同じく移民の子供だからね。僕の両親は息子がより良い人生を送れるようにと、エジプトからアメリカに移住した。そんな両親にアーティストになると告げたときは心苦しかったね。そういう部分で共感できたおかげで、スーパースター、フレディ・マーキュリーを理解するという課題の難しさが少し軽減された。ステージ上の彼の姿に、神に与えられた才能と、新天地に自分の居場所を作るのだという不屈の精神に満ちた一人の青年が見えてきたんだ。そしてチャンスを与えられたら、彼にとって必然であった高みに上ろうという青年がね。

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エディ・レッドメインにインスパイアされた

ボヘミアン・ラプソディ
『ファンタスティック・ビースト』シリーズのエディ・レッドメイン - Carlos Alvarez / Getty Images

Q:映画の中では、フィジカルな変化もあります。無名のバンドに参加するシャイな青年から、ライヴ・エイド(※1)で10億人以上の人々の心を捉えた、素晴らしいショーマンへと変わる。そうした変化も、彼を理解するための一つの手段になりましたか?

そのことを考えるだけでゾクッとするほど、彼はまさしく変身する。どんなときもフレディであることに変わりはないのだけれど、いろいろなバージョンのフレディがいる。それが素晴らしいと思うね。彼は何かを隠しているわけではないし、ジキルとハイドでもない。どのフレディも、すべてフレディなんだ。瞬間ごとに、状況ごとに、彼自身がなりたいと思っているフレディがそこにいる。そこに僕は魅力を感じた。

あるインタビューで彼は「ステージに上がると、みんなが僕に望んでいるとおりのマッチョな男になれる」と言っていた。1980年代の彼はこぶしを振り上げ、片腕を上げるだけで観客を夢中にさせた。だけど、自分探しをしていた若い頃の彼は、一貫性がなく流動的だったし、もっと線が細かった。だから、僕はまずそうした部分を明確化して、そこから徐々に変化させていった。フレディを作り上げていく過程を、手伝ってくれる人たちを見つけられたのも大いに役立ったね。

Q:その人たちはどうやって見つけたのですか?

ライヴ・エイドのシーンを撮影し始めたとき、僕はこう言った。「フレディはコンサートの前の晩に、明日ステージで何をするかなんて考えなかった」とね。次の晩にステージに上がったときの動きをどうするかなんて、彼は考えなかった。その瞬間に感じたままに、常にインスピレーションに従って動いていたんだ。今回、振付師に協力してもらうことをプロデューサーたちが検討していたから「あれは振付された動きじゃない」と言ったんだ。

フレディの動きで振付されたものなんて一つもない。「振付」という言葉は、「フレディ・マーキュリー」という名前のそばにあるべきじゃないね。彼の動き方や、彼があのような動きをした理由を、本質的に理解できる人を見つけたかったから、“ムーブメントコーチ”(※2)を探した。僕が大いにインスパイアされたのが『博士と彼女のセオリー』のエディ・レッドメインだった。スティーヴン・ホーキングを演じる彼を観察しながら「あの動きは振付されたものではない」と感じたんだ。

確かエディはムーブメントコーチについたはずだ。それで、ムーブメントコーチのポリー・ベネットにしばらく協力してもらった。ポリーのやり方は最高だったよ。彼女は今回の仕事にどうアプローチすればいいか理解していたから、すぐに二人で話し始めたんだ。フレディが遺したものや、彼の若い頃のこと、彼のシャイな面がどういうことに表れているかといったことについてね。

Q:どういうことに表れているのですか?

ソファに座ってティーカップを手に取るときや、歯を隠すときの仕草などにね。彼の歯はとてもユニークな大きさだったから。彼が自信を持つようになるにつれて、そうした仕草を彼自身が操れるようになっていった。そういうポリーとの話し合いを通して、初めの頃はフレディにすごく優美な雰囲気があったことや、年齢を重ねるとともにステージ上の存在感が進化していった理由に納得がいった。そういうことを確認する上で、ポリーの力はとても貴重だった。

※1:クイーンが1985年に出演した20世紀最大のチャリティー音楽イベントで、映画のラストを飾るシーン。
※2:ムーブメントコーチによって、フレディの目の動きや振り返り方、マイクのひねり方など細部までこだわり、彼の癖が再現された。

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一番大変なのは、やはり歌だった

ボヘミアン・ラプソディ
ブライアン役のグウィリム・リー(左)とロジャー役のベン・ハーディ(右) - (C) 2018 Twentieth Century Fox

Q:フレディとしてのあなたの歌声を、ブライアン・メイとロジャー・テイラーが初めて聴いたのはいつで、そのときの二人の反応はどうでしたか?

あれは地面が揺らぐほど衝撃的な経験だったよ(笑)。 今回のレコーディングはすべてアビーロードで行った。一生忘れられない経験になったよ。録音スタジオの“聖域”だからね。あそこでレコーディングをしたレジェンドたちの写真がいたるところに飾られていて、ものすごくインスパイアされた。追加録音のために最後に行ったときに、ビートルズが使ったピアノを少し弾かせてもらえた。最高にうれしかったね。

この仕事ではありとあらゆる感情を味わったけれど、気分が高揚したときは、これ以上望めないほどハイになった。フレディにふんしてレコーディングしたテープをブライアンとロジャーと一緒に見たのも、素晴らしい時間だった。僕はてっきり、彼らがテープを見てからアビーロードに来たものと思っていたのだけれど、話しているうちに実はまだ見ていないとわかったんだ。

誰よりもフレディをよく知っている二人に挟まれながら、フレディを演じる自分の姿を初めて見なければならなかった。どれほど怖い状況か、想像がつくよね。そのときすぐに「自分はあんなふうに動ける。動きはちゃんとできるんだ」と気付いたから、そこから自信を引き出すようにした。彼の内気さは表現できるし、親しみやすいショーマンの部分も、やればできるとわかっていた。一番大変なのは、やはり歌だったね。

Q:ブライアンとロジャーからは何と言われましたか?

ロジャーはいかにも彼らしくクールで無口だった。僕のことをつま先から頭のてっぺんまで眺めていたブライアンが、ものすごく褒めてくれて感動したね。フレディのカリスマ性を十分に表現するよう、全力で役づくりをしていたから、あの二人に認めてもらったことでインスパイアされたし、パワーももらえた。

Q:あらゆる感情を味わったということについて、もう少し詳しく教えてください。

控えめに言っても、今回は型破りな仕事のやり方だった。良い面もあるし、もちろん悪い面もある。でも、最終的には全員が冷静になって、いい雰囲気で一丸となって仕事ができた。

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一番好きなクイーンの曲は?

ボヘミアン・ラプソディ
劇中のメアリー(ルーシー・ボーイントン)とフレディ(ラミ)- (C) 2018 Twentieth Century Fox

Q:フレディとメアリー・オースティンとの関係についてどう思いますか?

メアリーはフレディにとってかけがえのない存在だった。彼女が彼の人生に与えた影響の大きさに気付いている人は驚くほど少ないけれど、この映画を観てみんな理解するだろうね。彼はメアリーのことを生涯の恋人と言っていたし、彼女のために有名な歌(「ラヴ・オブ・マイ・ライフ」)も作った。フレディの人生の大半において、彼女は彼の相談相手だった。メアリーは他の誰にもできない形でフレディを理解していたし、その逆もそうだった。

6年間、恋人同士だった二人は、フレディが亡くなるまで強い絆で結ばれていた。彼はメアリーのことを内縁の妻であり、誰よりも信頼している相手だと言っていた。メアリーがいなかったら、今僕らが知っているフレディ・マーキュリーは存在しなかったんじゃないかな。

Q:フレディは自身のセクシュアリティーを公にしようとしませんでした。それは単に、今とは違ってそういうことに対する知識がない時代だったからだと思いますか?

彼のセクシュアリティーについて何より驚くべきことは、彼が決してそういう話を公の場ではしなかったことだね。僕たちが無理やり他人に貼り付けようとするレッテルや、当てはめようとする枠を、彼はすべて超越していた。自分を閉じ込めるようなことはしなかった。フレディはただフレディだった。

Q:クイーンの曲で1番好きなのは?

1番好きな曲を選ぶのは難しいけれど、ブライアンの「ハマー・トゥ・フォール」は大好きだ。素晴らしい曲だよ。でも自分の子供の中で誰が一番好きか選ぶようなものだよ(笑)。どれも長く、長く残る曲だね。

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