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追悼特集:大林宣彦監督ベストムービー

大林宣彦
写真は2017年撮影

 原田知世薬師丸ひろ子石田ひかりら数々のスター女優を育て、“映像の魔術師”として愛されてきた大林宣彦監督。2016年8月に肺がんのステージ4と診断され余命宣告を受けながらも亡くなる直前まで精力的に活動し続けていましたが、4月10日に他界しました。映画史に残る多くの名作を残した大林監督を偲び、大林映画を愛する映画人にベストムービーをセレクトいただきました。

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BEST1:ノスタルジー+エロチシズムの涙誘う幽霊譚『異人たちとの夏』(1988)

宇都宮秀幸

異人たちとの夏
(C) 1988 松竹株式会社

 ドラマ「ふぞろいの林檎たち」(1983~1997)の山田太一による同名小説を、市川森一脚色、大林監督により映画化したゴースト・ファンタジー。日常ドラマで知られる山田と、ファンタジックな作風の大林の組み合わせは一見異色に思えるが、「幽霊」という大林得意のモチーフもあって、長く愛される名作となった。主人公の中年シナリオライターが若くして亡くなったはずの両親と浅草の町で再会するパートが「ノスタルジー」、同じマンションに暮らす若い女との逢瀬が「エロチシズム」だとするならば、まさに大林監督が描き続けてきたテーマそのもの。まるで大林のために用意された原作のようにさえ思えてくる。すき焼き屋でのクライマックスは、何度観ても涙が出そうになってしまう。

【発売・配信先】
「あの頃映画 the BEST 松竹ブルーレイ・コレクション 異人たちとの夏」Blu-ray (価格:税抜き3,300円)発売中 発売・販売元:松竹
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BEST2:テーマを体現する儚げな富田靖子『さびしんぼう』(1985)

さびしんぼう

 『転校生』『時かけ』の影に隠れがちだが、個人的には“尾道三部作”の中で最も好きな作品。すべては消え去っていくもの=「無常」の美しさという主題と、この時期の富田靖子の儚げな雰囲気がぴったりかみあっている。

【発売・配信先】
「さびしんぼう 【東宝DVD名作セレクション】」DVD(価格:税抜き2,500円)発売中 発売・販売元:東宝
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BEST3:最強ヒロインは石田ひかり『はるか、ノスタルジィ』(1992)

 大林作品といえば、思春期男女の淡い恋物語というイメージが強いが、一方で中年男と美少女の組み合わせも秀作が多い。今作といい『ふたり』といい、大林映画の最強ヒロインは石田ひかりで決まりだと思う。

※DVDレンタルのみ

BEST4:『転校生』(1982)

※DVDレンタルのみ

BEST5:『ふたり』(1991)

「ふたり デラックス版」DVD(価格:税抜き4,700円)発売中 販売元:NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン

宇都宮秀幸(うつのみや・ひでゆき)プロフィール
 編集者・ライター。「UOMO(ウオモ)」で、コラム「40歳男子、まだ間に合うネットドラマ」を連載中。近年は「ブレイキング・バッド」をはじめとした海外ドラマに夢中。

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BEST1:晩年の反戦テーマは急な転向にあらず『野のなななのか』(2013)

千浦僚

野のなななのか
(C)2014 芦別映画製作委員会/PSC

 大林宣彦の映画と世界をほんとにお好きな方々に比べると自分などは甚だ“好きさ”が薄くて申し訳ない気持ちになるが、近年の大林作品を面白く思い、氏の映画人としてのありようには畏敬の念を抱いていた。『この空の花 長岡花火物語』(2012)、『野のなななのか』(2013)、『花筐/HANAGATAMI』(2017)の3作は、本当にすごい。これらをベスト3でもよかったがそれも偏りすぎな気がして『野のなななのか』に代表させた。近年の作品に見られる反戦の主題は急な転向ではなく、大林映画のノスタルジアや若者を描き出す志向の延長線上にあり、氏の映像の華麗さ、過剰さ、濃さが総動員されて戦争に拮抗する。見応えある、驚くべき映画。

配給/PSC TMエンタテインメント

【配信先】
dTVビデオマーケットTELASA

BEST2:ジャンルの枠を超えるファンタジー&ホラー『異人たちとの夏』(1988)

 風間杜夫演じる主人公の凝縮されたひと夏の体験は、その男の生涯以上のものとなる。まず少年時代の追憶、親への想いがあり、さらに青年期、壮年期の女性との愛欲(名取裕子がエロく美しくすばらしい)も描かれる。日本における幽霊映画の傑作かつ単純にジャンル化されるところにも落ち着かぬ唯一無二のファンタジー&ホラー。お薦め。

【発売・配信先】
「あの頃映画 the BEST 松竹ブルーレイ・コレクション 異人たちとの夏」Blu-ray (価格:税抜き3,300円)発売中 発売・販売元:松竹 (C) 1988 松竹株式会社

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BEST3:大林監督の出発点、ここにあり『喰べた人』(1963)『Complex 微熱の玻璃あるいは悲しい饒舌ワルツに乗って 葬列の散歩道』(1964)『EMOTION 伝説の午後 いつか見たドラキュラ』(1966)

 映画評論家・映画監督の樋口尚文さんが2014年に主催した上映会でオリジナルの16ミリのフィルムで上映した。大林宣彦という人が、その辺にいる映画青年やクリエイターと全然変わらず、うわあ楽しい! これ見て! というところから出発したのだとうかがえる初期作品群。大林監督本人ともご挨拶し握手したが、そのことと映写したことがわたしの中で混然となり、今もなお記憶に刻まれている。

【発売元】
「大林宣彦青春回顧録 DVD SPECIAL EDITION」(価格:税抜き5,800円)バップより発売中

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BEST4:『理由』(2004)

ビデオマーケットAmazon Prime VideoHuluTELASA

BEST5:『時をかける少女』(1983)

【発売・配信先】
「時をかける少女 角川映画 THE BEST」DVD(価格:税抜き1,800円)は発売中 発売・販売 株式会社KADOKAWA

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千浦僚(ちうら・りょう)プロフィール
 1975年生まれ。映画ライター。長年映写技師として働く。「映画芸術」「キネマ旬報」などに寄稿。

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BEST1:大林監督のすべてが詰まった初期作『EMOTION 伝説の午後 いつか見たドラキュラ』(1967)

轟夕起夫

EMOTION 伝説の午後 いつか見たドラキュラ
(C)VAP/PSC

 キャリアの出発点、インディーズ時代から「大林宣彦は大林宣彦」であり、この初期作には彼のすべてが詰め込まれている。当時すでにCMディレクターとして活躍、1967年に初公開された『EMOTION 伝説の午後 いつか見たドラキュラ』。ロジェ・ヴァディム監督の耽美なパンパイア譚『血とバラ』(1961)にオマージュを捧げた16ミリ作品だ。コマ撮り、スローモーション、静止画の巧みなモンタージュ、字幕とナレーションの多用、そして、ヒロインを美しく撮り、愛(め)でる姿勢。ラストの「さよなら」「ドラキュラ」「さよなら」「青春」のテロップも、大林映画に通底するキーワードである。私的にして詩的で、実験作なのにとってもリリック。岩井俊二山戸結希が好きな人はぜひ!

【発売元】
「大林宣彦青春回顧録 DVD SPECIAL EDITION」(価格:税抜き5,800円)バップより発売中

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BEST2:全編カメラ目線で全員ノーメイク『理由』(2004)

 宮部みゆきの原作に真っ向勝負。超高層マンションで殺人事件が起き、インタビュー形式で107人もの関係者の証言を積み重ねてゆくのだが、全編カメラ目線で、しかも全員がノーメイク、狂躁的なショットの連なりで「映画を読ませる」仕掛けとワザが凄し。

【配信先】
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BEST3:タイトルの語感を映像で体感『青春デンデケデケデケ』(1992)

 ロック黎明期に「デンデケデケデケ」とエレキサウンドに感電、啓示を受けてバンド活動に熱中する高校生たちの「青春」を超絶ハイテンポで! まさしく大林ミラクルは、「青春デンデケデケデケ」という語感を丸ごと映画に変換し体感させてくれるのだ。

【配信先】
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BEST4:『花筐/HANAGATAMI』(2017)

【配信先】
Amazon Prime VideoGoogle Play MoviesdTVビデオマーケットTELASA

BEST5:『女ざかり』(1994)

【配信先】
Google Play MoviesビデオマーケットHulu

轟夕起夫(とどろき・ゆきお)プロフィール
 ライター。キネマ旬報、映画秘宝、クイック・ジャパン、DVD&動画配信でーた、CINEMA SQUAREなどで執筆中。マイ・フェイバリットムービーは、勝新太郎監督・主演作の『顔役』(1971)。

BEST1:原田知世が起き上がって歌うエンディングが重要『時をかける少女』(1983)

中山治美

時をかける少女

 “角川三人娘”で唯一、敵意を抱いたのが原田知世。当時、気になっていた子が知世ファンだったからに他ならないが、本作で完敗。尾道の細い路地を下駄を履いて漂う彼女は「不思議の国のアリス」のように儚げで、手を差し伸べずにはいられない。そんな彼女がひょっこり起き上がって主題歌を歌うエンディングに、我々は現世に戻って来てくれて良かったと最高の幸福感を得るのだ。先日テレビで追悼放送された時にはエンディングがカットされていたが(良いシーンは映画館で! と言う監督の意向らしい)、図らずもそれがこの物語の本当の結末と、新人女優の魅力を伝えるために必要なシーンだったのだという事を思い知らされた。改めて大林監督の女優への愛情と緻密な演出と茶目っ気に脱帽。

【発売・配信先】
「時をかける少女 角川映画 THE BEST」DVD(価格:税抜き1,800円)は発売中 発売・販売:株式会社KADOKAWA

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BEST2:天災・人災の犠牲者への鎮魂歌『この空の花 長岡花火物語』(2012)

 晩年の大林作品は反戦メッセージがスパークしていたが、そのきっかけが東日本大震災であり、3.11直後に制作された本作に色濃く表れている。日本で繰り返し起こった天災・人災の犠牲者への鎮魂歌を長岡花火に乗せて。

【配信先】
dTVビデオマーケットTELASA

BEST3:撮影中に阪神・淡路大震災が発生『あした』(1995)

 撮影中に阪神・淡路大震災が起こり、空路を乗り継いで現場取材に行った思い出深い作品。しかも、事故死した人たちが愛する人たちに別れを言うために一晩だけ甦る話。大林作品の中では埋もれがちだが、今こそ観てほしい。

【発売元】
「あした デラックス版」DVD(価格:税抜き4,700円)発売中 販売元:NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン

BEST4:『異人たちとの夏』(1988)

【発売・配信先】

「あの頃映画 the BEST 松竹ブルーレイ・コレクション 異人たちとの夏」Blu-ray (価格:税抜き3,300円)発売中 発売・販売元:松竹
Amazon

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BEST5:『水の旅人 -侍KIDS-』(1993)

※DVDレンタルのみ

中山治美(なかやま・はるみ)プロフィール
 映画ジャーナリスト。webサイト「おしごとはくぶつかん」、「GISELe(ジゼル)」、全国商工新聞などで執筆中。往年の角川アイドル映画からワン・ビン監督『死霊魂』のようなドキュメンタリーまでOKの雑食動物です。

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