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「おジャ魔女どれみ」20周年!いまこそ知りたい制作秘話

 映画『魔女見習いをさがして』(11月13日公開)は、魔女っ子アニメの不朽の名作「おジャ魔女どれみ」のテレビ放送20周年記念作品。企画立ち上げ当初からシリーズを創り上げてきた佐藤順一監督と関弘美プロデューサーが、本作が生まれたきっかけや「おジャ魔女どれみ」制作の裏側を語った。(取材・文・構成:香椎葉平)

<「おジャ魔女どれみ」とは?>

『魔女見習いをさがして』

 「おジャ魔女どれみ」は、1999年から2003年にかけて放送されたテレビアニメシリーズ。主人公・春風どれみをはじめとする魔女見習いたちによる笑いあり涙ありのストーリーに、それまでの魔女っ子アニメにはない子供目線での深い心情描写を加え、年齢や性別を問わない幅広い層から絶大な支持を集めた。今も根強い人気があり、大人の「どれみ」ファンに向けたライトノベルシリーズも刊行されている。

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■シリーズを支える「おジャ魔女どれみ」愛

『魔女見習いをさがして』
佐藤順一監督と関弘美プロデューサー(写真:編集部・小山美咲)

Q:このタイミングで「おジャ魔女どれみ」の新作映画を作ることになったきっかけを教えてください。

関弘美プロデューサー(以下、関):最初に佐藤監督に相談したのは、2016年の9月の末から10月の頭くらいだったと思います。その前後にかけて、キャラクターデザインの馬越嘉彦さんにもお話しました。お二人が喜んでくれて、お二人以外の若いクリエイターにメインスタッフとして活躍してもらえるきっかけにもなると思ったのが大きいですね。

佐藤順一監督(以下、佐藤):最初に相談があった時に、関さんからマツタケをご馳走になりましてね。まんまと餌付けされたわけです(笑)。冗談はともかく、私の場合は馬越君の存在が大きかったですね。彼がずっと「おジャ魔女どれみ」を好きでいてくれて、今回の話にも真っ先に喜んでくれました。だからこそ、私もより乗り気になれたわけです。

Q:スタッフの皆さんの作品愛が、長きに渡るシリーズを支えているんですね。

佐藤:関さんの「どれみ愛」が、やっぱり一番深いですよ。今回の映画も、関さんが本気でエンジンをかけたからこそだと思います。

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■新作映画の主人公がどれみたちではない理由

『魔女見習いをさがして』

Q:今回の映画で驚いたのは、主人公がテレビシリーズでおなじみの春風どれみたちではなく、子供の頃に「おジャ魔女どれみ」が大好きだった3人の若い女性だということです。どういった理由で決まったのでしょうか?

関:作品を観てほしいお客様が何を考えていて、どんなことを不思議だと思っていて、どんなことが嬉しくて、どんなことが悲しいのか。いつも知りたいと思ってマーケティングをしています。今回のターゲットとして意識しているのは、昔「どれみ」を好きだった子供が20年の時を経て成長した、大人の女性です。マーケティングを踏まえたら、主人公はおジャ魔女たちではなく、ターゲットと同じ普通の女性の方が良いだろうと思ったんです。プロットの段階では、ライトノベルシリーズの延長線上にあるものとして、成長したどれみたちを主人公にしたパターンもありました。

Q:2パターンのプロットがあったんですか?

関:山田(隆司)さんはすばらしい脚本家ですから、成長したどれみたちを主人公にしたプロットも非常に面白かったんです。ただどのように考えても、主人公がどれみたちでなくともお話として成立してしまう面が残ってしまう。それならば、非常に難しい決断ではありますが、普通の女性たちを主人公にしたものを採用した方が良い結果につながるのではと考えました。シリーズが始まってから今に至るまでおよそ20年。時代の移り変わりや世の中のあれこれを嘘偽りないまなざしで見つめていると、それらが全て反映されているわけではないですが、ソラ、ミレ、レイカの3人は、「おジャ魔女どれみ」シリーズの人物らしいキャラクターとして、おのずと生み出されてくるなとは思いました。

佐藤:最初にお話をいただいた時は、テレビ放映当時の子供のままのおジャ魔女たちが活躍する映画と、成長したおジャ魔女たちをライトノベルの延長線上で描く映画の二通りが浮かびました。でも、いずれを取るにせよお客さんに何を感じ取ってもらいたいのか、答えがなかなか見えずに難しいなと悩んでいました。前者の場合、観終わったお客さんは「あの頃は楽しかったなあ」「懐かしいなあ」と思われるはずです。後者の場合、「あの頃は元気いっぱいだったおジャ魔女たちも、自分と同じように苦労してるなあ」という共感を抱かれるでしょう。それが本当にお客さんの観たいと思っているものなのか、私たちの方だって観てほしいと考えている作品なのか、自分の中でなかなか消化しきれずにいたんです。その時に、「子供の頃に『おジャ魔女どれみ』が大好きだった女性」という切り口をいただいて、ストンと腑に落ちて作り始められたわけです。

関:子供の頃に共通点があったとしても、大人になれば生活の格差が開いていたり、登場人物の一人一人が、かけ離れた人生を歩んでいるはずですよね。その辺りの描き方にも、長年続けてきたマーケティングが反映されていると思います。でも、私だけのやり方で深く掘り下げていくと、リアリスティックで真面目一辺倒なものになっちゃいますからね。その点については佐藤さんや馬越さんのユーモアに、「どれみ」の立ち上げ当初から本当に救われてきました。

佐藤:シリーズを通して笑いを保証するというのは、私の役目だと思ってやってきましたから。

関:「子供が魔法を真面目に使い過ぎているのでは?」というのも、佐藤さんが最初に指摘してくれたことです。だから、どれみたちはステッキをテレビのリモコンのようにして、“日常のどうでもいいこと”にも魔法を使おうとします。それでドジをしちゃったりすると笑えますし、だからこそ子供のリアルを感じさせる表現にもなるんですね。

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■チャレンジ精神と気迫が生み出した「おジャ魔女どれみ」シリーズ

『魔女見習いをさがして』

Q:『魔女見習いをさがして』というタイトルから、「おジャ魔女どれみ」の名前をあえて外したチャレンジ精神にも驚きました。シリーズ自体の立ち上げや、子供目線での心情を深く描き切るという革新的な作品内容にも、それが反映されているのでしょうか?

佐藤:関さんから最初にお話をいただいた時、当時すでに廃れつつあった「万能魔法を使う魔女っ子ものをやりたい」と言ったんです。万能魔法というのは、要するに何でもできちゃう魔法のこと。これがなぜ廃れたかというと、何が起きても魔法さえ使えばいいわけで、ドラマを組み立てるのが難しいからです。でも、たとえ何にでも使える魔法であっても大したことはできず、そのうえどれみのように、必ずしも優等生とは言えない女の子が主人公だとしたらどうでしょう? 結局は自分の力で物事を解決しなくちゃいけないわけですから、子供目線での心情を描く物語もちゃんとできてくるんです。

関:シリーズ立ち上げ当時、この業界に入ってからの私たちのキャリアがちょうど一致していたのも、良い方向に働いたと思います。

佐藤:全員がそれまでやりたくてもできなかったこと、やろうとしてやれずにいたことが、うまく噛み合って動き始めたというのはありましたね。「とんがり帽子のメモル」以来、およそ15年ぶりとなるオリジナルものの放送枠を何としてでも成功させなければならないという気迫は、ひしひしと感じていました。

関:「これを外したらオリジナルものの放送はまたできなくなるぞ」とはっきり告げられていましたからね。プレッシャーもありましたけど、重圧がなければ、何としてでも成功させてやろうという気迫も生まれてきません。

佐藤:それで「やって」と頼まれたら、こちらとしても断れませんよね。いや、頼まれたんじゃなく、「やるからね」と圧をかけられたんだっけ?(笑)。その時は別の作品も動いていたんですけど、私からの希望で五十嵐卓哉さんを参加させてもらうことで、うまく現場を回し始めることができました。

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■「おジャ魔女どれみ」着想のきっかけと影響を受けた映画

『魔女見習いをさがして』

Q:制作が始まってからも、相当な苦労があったと思われます。

関:佐藤さんは楽しそうでしたよ。当初から本当に、色々な提案をしてくれました。

佐藤:どれみたち以外のクラスメイト全員を単なる脇役に追いやらず、一人一人の設定を固めて教室内での席順まで決めておくというのも、提案して実現できたことのひとつです。労力も含め様々なハードルはあったのですが、「どれみ」の世界を作るうえでは必要なことだと考えて、やらせてもらいました。どれみたちに、一人一人とちゃんと友達になってほしかったんですよね。

関:オープニングの映像にも、クラスメイト全員が出てきましたね。

Q:「おジャ魔女どれみ」シリーズを着想されたきっかけの一つとして、ロアルド・ダール(※注)の児童文学「魔女がいっぱい」があると聞きました。 ※ロアルド・ダールは『チャーリーとチョコレート工場』(2005)の原作者。「魔女がいっぱい」を原作にした同名の映画が12月4日から公開予定

関:番組を立ち上げると決まった時、バンダイの担当者さんと、魔女を取り上げた児童文学などを片っ端から読みました。その中でとりわけ面白いと思ったのが、ダールの作品でした。私たちの生きる日常の世界に魔女も正体を隠して暮らしているという設定など、「どれみ」にも活かされている部分はかなりあると思います。

Q:お二方がお好きだったり影響を受けたりした映画は何ですか?

佐藤:個人的な好みになりますが、私は日常描写をつなぐことで面白さを浮かび上がらせる作品が好きなんです。『もらとりあむタマ子』(2013)のテイストなんかは、かなりお気に入りですね。

関:私は、いわゆるクラシック映画が好きなんです。『舞踏会の手帖』(1937)や『エデンの東』(1955)、『サウンド・オブ・ミュージック』(1965)などは、母親が映画好きだった影響もありますが、熱心に観て色々と勉強させてもらいました。

Q:『魔女見習いをさがして』の公開を待つファンに向けて、メッセージをお願いします。

佐藤:20年前にキラキラと輝いていた子供の頃とは、今の自分は大きく違っているだろうと思います。でも、あの頃の自分は消えてしまったわけではなくて、今もどこかで生きていて、力になってくれているはずです。今回の映画をご覧になって、そんなことを感じていただけると嬉しいです。ぜひ、劇場でお楽しみください。

関:ご覧になるお客様が、それぞれ少しでも豊かな人生を送るのに、今回の映画から何かを持ち帰ってくださると嬉しいです。パンフレットやグッズ以外にも、劇場から持ち帰られるものはあると思いますよ。

(C) 東映・東映アニメーション

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