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「地獄が呼んでいる」は何が面白い?イカゲームに続く話題作

地獄が呼んでいる
Netflixシリーズ「地獄が呼んでいる」独占配信中

 11月19日にNetflixで独占配信が始まった韓国ドラマ「地獄が呼んでいる」が大ヒットを記録している。日本でも大反響を巻き起こし、ハリウッド版リメイクも決定した『新感染 ファイナル・エクスプレス』(2016)のヨン・サンホ監督の最新作だ。

 Netflixが公開している Global Top 10 によると11月21日までのわずか3日間で、全世界で4,348万時間再生されて視聴回数ランキング1位(テレビ・非英語作品)になったほか、日本をはじめ71か国で TOP 10 にランクイン。世界中でセンセーションを引き起こした韓国ドラマ「イカゲーム」に続くかどうか注目を浴びている。

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地獄が呼んでいる

 ある日突然、ソウルに3人の地獄からの使者が現れて人々をパニックに陥れる。“地獄の使者”に狙われた男は、凄絶なリンチに遭い、最後は焼き殺されてしまった。人々の混乱につけいるように「新真理会」を名乗る新興宗教が台頭。議長のチョン・ジンス(ユ・アイン)は、この現象が罪を犯した人に与えられる“神の裁き”だと主張する。チョン議長が人々の大きな支持を得ていく中、ひとりの平凡な女性が死亡宣告を受けてしまうーー。

 「地獄が呼んでいる」では、二つの種類の暴力が描かれる。ひとつは“地獄の使者”たちによる暴力。もうひとつは“矢じり”と呼ばれる新興宗教の信徒たちの暴力である。衝撃的なのは突如現れる前者だが、後者は非常に現実的で観る者の背筋を凍らせる。

地獄が呼んでいる

 “矢じり”たちは動画配信やSNSを使って、謎の存在(彼らは「天使」と呼ぶ)から死亡予告を受けた人、つまり「罪を犯した」とされる人たちの正体を暴き、家族とともに晒し者にする。やがて彼らは暴徒と化し、新真理会に逆らう言論を行う者、死亡予告を受けた人を守ろうとする者たちにもキバをむいて、ネットリンチのみならずダイレクトな暴力をまき散らすようになる。

 「地獄が呼んでいる」は、理解できない超常現象による恐怖が、新興宗教による扇動と大衆によるネットリンチ、それに追随するマスコミの報道によって、とめどもない暴力と化していき、同時にカルト団体が権威化していく様を描きだしていく。これはまったく絵空事ではない。チョン議長の主張は、理由があるからといって加害者がすぐに釈放されるのはおかしい、恐怖しか人を正すことはできない、「正義感を持って生きろ」などというものだった。このような主張は、韓国に限らず現実のインターネットで頻繁に見ることができる。だからこそ世界中の人たちが恐怖と共感を持って視聴したのだろう。

地獄が呼んでいる

 これまでにもヨン・サンホ監督は作品の中で社会問題を取り上げ、痛烈な風刺精神を発揮してきた。『新感染 ファイナル・エクスプレス』では、ゾンビたちがソウルを制圧していく恐怖を朝鮮戦争における北朝鮮軍のソウル制圧に重ね合わせ、その上で緊急事態においても利己的にふるまう人々の醜い姿を描いていた。『新感染』の前日譚である長編アニメ『ソウル・ステーション/パンデミック』(2016)では、感染爆発が起こる中での底辺層の絶望が描かれている。信仰をテーマにした長編アニメ『我は神なり』(2013)ではインチキな新興宗教を告発していた。なお、本作で主人公の声をあてたヤン・イクチュンが「地獄が呼んでいる」では新真理会を追うチン刑事役で出演している。

 韓国映画の強さは、たしかな演出や俳優陣の演技などに加え、政治や格差をはじめとする社会問題を真正面から取り上げて、強靭なエンターテインメント作品にしていくところにある。これはヨン・サンホ監督に限ったことではない。オスカーを獲得したポン・ジュノ監督の『パラサイト 半地下の家族』(2019)や庶民が軍隊に虐殺された光州事件を描いた『タクシー運転手 ~約束は海を越えて~』(2017)など枚挙にいとまがない。

 Netflixオリジナルの韓国ドラマは、恋愛ドラマや青春ドラマなどのほかに、こうした韓国映画の作り手たちを迎え入れ、潤沢な資金と連続ドラマのフォーマットを使って制作し、世界中に発信するという“勝ち筋”を手に入れたように見える。ろうあ者福祉施設での入所児童に対する性的虐待と隠蔽を告発する映画『トガニ 幼き瞳の告発』(2011)を手がけたファン・ドンヒョク監督は、格差社会の残酷さを描く「イカゲーム」を監督して世界的なヒットとなった。『コインロッカーの女』(2015)でデビューしたハン・ジュニ監督は、軍隊の中の陰惨な暴力を克明に描いた「D.P. -脱走兵追跡官-」(2021)を監督している。

 今回の「地獄が呼んでいる」もその流れの中にある作品だが、想像を超える展開を見せるラストまで観れば、これが社会問題を描いているだけでなく、一級のエンターテインメント作品だということがわかる。続編も含めた今後の展開にも期待したい。(大山くまお)

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