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ピクサー『私ときどきレッサーパンダ』監督は日本のアニメが大好き!最高のガールズムービーはこうして生まれた

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私ときどきレッサーパンダ

 ディズニー&ピクサーのアニメーション映画『私ときどきレッサーパンダ』は、13歳という心も体も変化する思春期の女の子のリアルでハチャメチャな混乱具合を、彼女を巨大でもふもふのレッサーパンダに変化させることで表現した最高のガールズムービーだ。ドミー・シー監督とプロデューサーのリンジー・コリンズがインタビューに応じ、本作の制作秘話を明かした。(編集部・市川遥)

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女の子たちによる、女の子たちのための映画

私ときどきレッサーパンダ

 主人公メイは、母親の期待に応えようと常に全力投球の頑張り屋さんの女の子。親友たちの前ではボーイズバンドに夢中で男の子にも興味を持ち始めているといった素の自分をさらけ出せるものの、家では厳格な母親が期待する“いい子”の型に自分を押し込めて来たことで、ある日限界が来てしまう。13歳の女の子のリアルを描いた本作はピクサー映画としても異質で、シー監督もそうした映画を作ることの重要性は承知していた。

「この映画は女の子たちによって、女の子たちのために作られた(笑)。もちろん、誰もが楽しめるものになっていればいいのだけど。だけどこの映画は間違いなく“13歳だった頃の自分のために映画を作ろう”というアイデアから生まれた。わたしはメイが映画の中で経験するのと同じたくさんの困難を経験したから。特に思春期、ある朝起きたら自分の体が変わっていることに気付いて、感情も追いつかなくって、お母さんと常に争って……といったね」

私ときどきレッサーパンダ

 特筆すべきは、メイと親友たちの熱い友情だ。彼女たちは突然巨大なレッサーパンダになって泣きじゃくるメイも、丸ごと受け入れてくれる。女の子たちの友情を正しく描くということもシー監督がこだわった部分だった。

「13歳というのは、人生において最も大事な関係が家族から友達に変わる時期。わたしには成長期に本当に親しい女友達が何人もいて、彼女たちはわたしの応援団で、常に支えになってくれた。メイの友達が彼女にとってそうだったようにね。だからこそ、ポジティブな女性たちの友情を示すことは重要だと思った。多くの映画やテレビドラマでは、女子たちは競争心があって互いに張り合ってばかりだから。今回は、互いに支え合うような健全で素晴らしい女性たちの友情を描くいい機会だと思ったの」(シー監督)

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母親もかつては女の子だった

私ときどきレッサーパンダ

 ミンは家族の伝統を重んじ、娘のメイにもそうすることを課している厳格な母親。しかし、シー監督による母親の描写は絶妙で、彼女が娘をどれだけ愛しているかも伝わってくるため、どこか憎めないキャラクターになっている。

「ミンは描くのが難しいキャラクターだった。なぜなら彼女は簡単にステレオタイプな教育ママ、嫌われ者になってしまいかねなかったから。そこでわたしたちが取ったアプローチは、彼女がなぜこんなにもクレイジーなのか(笑)を理解しようとすることだったの。彼女の性格を薄めて、いい人にしすぎるのではなくね。それでは面白くないし、現実味がないから。でも、少なくとも彼女の気持ちは理解できるように、共感もできるようにした。メイの学校まで後をつけて来たり、彼女の好きな人の前で困らせたりね。それらはすべて、娘を守りたいという気持ちから生まれたもので、それがミンという人物の指標になった。どんなクレイジーなことも、愛に由来しているの。本作に参加していた、ティーンエイジャーの子供たちを持つ母親たちの声も助けになった。リンジー(プロデューサーのリンジー・コリンズ)のようなね」(シー監督)

私ときどきレッサーパンダ
プロデューサーのリンジー・コリンズ

 メイが、母親のミンにも自身と同じただの女の子だった時代があり、彼女にも彼女なりの悩みや葛藤があったことを知るシーンは感動的だ。自身も母であるプロデューサーのコリンズにとっても、それは重要なシーンだったという。

「子供の頃は、自分の両親が神のようで、何でも知っているような存在に思える。だけど真実はそうじゃない。それをスクリーンで示せるのはすてきで稀有なことだと思う。自分の年頃の親を見るのはどんな感じだろうというというアイデアを、視覚的に表現できたのが気に入っているわ。この映画は、“このような経験をしているのはあなた一人ではない”と伝えるためのものであり、また、わたしたちの両親もまたそのような経験をしたということを忘れないようにするためのものでもある。子供たちがこのような経験は困難だけど重要で、成長の大切な一部であり、悩んでいるのは自分一人じゃない、それは共有できる経験だと知ってもらえたらと思っている」(コリンズ)

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「セーラームーン」に「らんま1/2」!日本のアニメの色濃い影響

私ときどきレッサーパンダ
ドミー・シー監督

 中国系カナダ人のドミー・シー監督。大ファンだという日本のアニメ的な表現とピクサーの3Dアニメーションを融合させたスタイルは唯一無二で、はちゃめちゃなメイの世界を表現するのにまさにぴったりといえる。シー監督は「その二つを融合することには、当初からとてもワクワクしていた」と打ち明ける。

「わたしたちはユニークで新しく、これまでとは違ったスタイルを必要としていて、映画のルックをわたしたちの主人公、メイ由来のものにしたかった。世界観は、彼女がどのように世界を見ているかを反映しているの。彼女はエネルギーに満ちていて、若く自信があり、強気で生意気で、ダサかわいい。わたしたちは彼女を反映した世界を作りたかった。わたしは1990年代~2000年代初期のアニメをたくさん観て育ったの。『セーラームーン』『らんま1/2』とかね。わたしは表現豊かでカラフルなアニメのスタイルが好きで、それがこの物語を語る上で、そして観客にメイが感じていることを感じさせるのに完璧なスタイルだと思った。大きな感情を経験することになる女の子の物語だから、このビジュアルスタイルにインスパイアされたのは理にかなっていると思う」(シー監督)

私ときどきレッサーパンダ
漫画・アニメ的なキラキラお目目

 シー監督は筋金入りのアニメ好きで、高校時代はアニメクラブの部長を務めたほか、日本で漫画家になることを夢見た時期もあったのだという。

「わたしはディズニーといった西洋のアニメーションと同じだけ、アニメが好きだった。高校ではアニメクラブの部長で、マンガを読んでアニメを観て育ち、地元のアジア系のDVD店でできるだけ大量のDVDを買おうとして、『ONE PIECE』『NARUTO -ナルト-』『犬夜叉』の最新話を追っていた。それに多くのアニメでは女の子が主人公というところも気に入っていた。『セーラームーン』とか、女の子がヒーローとして世界を救うんだけど、普通に高校へ行って宿題とか男の子たちにも対処しなくちゃいけないというのが好き。そしてそれらの多くが、素晴らしく才能のある女性たちによって描かれている。そのことに本当に感銘を受けた。なぜならわたしは小さい頃から絵を描くことが好きで、高校時代は漫画家になりたかったから(笑)。『カナダ人の女の子がどうやったら日本で漫画家になれるのか』とGoogle検索して、どれがどれだけ大変なことか知って断念したけど(笑)。わたしは常にアニメが好きで、それは間違いなくわたしのスタイル、ストーリテリングの仕方、感受性に影響を与えた。わたしという存在はある意味、東と西のアニメーションスタイルのブレンドのように感じる。(中国系カナダ人の)メイ自身も東であり西でもあるしね」(シー監督)

私ときどきレッサーパンダ

 メイにもちょっとオタクっぽいところがあり、密かに意中の男の子を少女漫画チックなイラストで描きためたりしている。シー監督はこの描写について「わたしは13歳の頃、メイそのものだった。『ハリー・ポッター』のファンフィクションを書いていて、ファンアートにも情熱を燃やしていた。両親が知らない秘密のスケッチブックを持っていたの。大人になった今、わたしはそうしたオタク的な過去を持った素晴らしい女性たちをたくさん知っている。それをメイと共に示したかった」と明かしていた。コリンズも、こうしたシーンでリアルなティーンの女の子を正しく描くことが重要だったと振り返る。

「多面的で、ごちゃごちゃしていて、時には不適切で、ちょっときわどくて、といったティーンの女の子のすべてのことを正しく描こうと努めた。わたしたちも当時そうだったようにね。わたしたちは、自分の過去の恥ずかしい瞬間を思い出してまごついてしまうようなシーンを映画に入れることができたと思う。それは超楽しかったわ。なぜなら、わたしたちには皆そういう経験があると思うから。観客も皆笑うのと同時に、自分の過去と重ねて縮み上がるような反応をしてくれた(笑)。実際の13歳の女の子がどういうものかを見せることで、観客を楽しませるものになっていればと思う。今までそういうことが映画で描かれることはあまりなかったと思うから」(コリンズ)

 『Bao』(2018)でアカデミー賞短編アニメ賞を受賞し、初長編となる『私ときどきレッサーパンダ』で自身のカラーと才能を遺憾なく発揮したシー監督。本作は、彼女が今後のピクサーを引っ張る存在になることは間違いないだろうと思わせる一作だ。

映画『私ときどきレッサーパンダ』はディズニープラスで独占配信中
(C) 2022 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

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