ADVERTISEMENT

木村拓哉『レジェンド&バタフライ』など1月公開映画の評価は?

今月の5つ星

 滝藤賢一の映画初主演作から血濡れのヴァイキングアクション、アカデミー賞国際長編映画賞インド代表作、木村拓哉主演作、そして賞レースを騒がすマーティン・マクドナー監督作まで、見逃し厳禁の作品をピックアップ。これが1月の5つ星映画だ!

ド派手ドラァグクイーンたちの優しい物語

ひみつのなっちゃん。』1月13日公開

 映画監督デビューとなる田中和次朗がメガホンを取ったオリジナル脚本のコメディー。元ドラァグクイーンの友人なっちゃんを失ったバージン、モリリン、ズブ子の3人が、秘密を遺族に隠しながら、普通の中年男性として葬儀に参列する旅に出る。ド派手な衣装とメイクできらびやかなステージに立つドラァグクイーンを中心に置きながら、友のために秘密を守る等身大で親近感の湧く友情物語に仕上がっている。

 ストーリー構成や展開、登場人物たちのセリフ、キャストの演技が丁寧に積み重ねられ、映画全体がほっこりとする優しさに包まれている。ドラァグクイーンたちの素顔という難しい役に挑んだ滝藤賢一、渡部秀前野朋哉の演技は見事で、特に映画初主演となった滝藤のバランス感覚には目を見張るものがある。渋谷すばるが本作のために書き下ろした魂のこもったロック調のエンディング曲が、映画を観終わった観客の心にガツンと響くことだろう。(編集部・海江田宗)

ADVERTISEMENT

美しきリアリズムに酔う北欧血まみれ復讐劇

ノースマン 導かれし復讐者』1月20日公開

 父を殺され逃亡の末にヴァイキングの戦士となった、北欧の王子の壮絶な旅路を描くリベンジアクション。『ライトハウス』『ウィッチ』で怪異・伝承を徹底したリアリズムで映像化してきたロバート・エガース監督らしく、北欧神話や英雄譚、ヴァイキング伝説をミックスしながら、血まみれの復讐劇を現実的に活写。鮮烈なバイオレンス描写と共に、カメラ一台で撮影された、絵画のように完成された映像からも監督の美意識が光る。

 主演のアレキサンダー・スカルスガルドは、復讐を胸に狂気と正常の狭間を歩く王子を熱演。戦闘シーンでは上半身裸率も高く、血に濡れて光る、彫刻のような肉体美も必見だ。エガース監督が『ウィッチ』で才能を見出した、アニャ・テイラー=ジョイの美貌と体当たり演技もさることながら、チョイ役でもその場をかっさっていく、ウィレム・デフォービョークにも注目。(編集部・入倉功一)

インド発、映画へのラブレター

エンドロールのつづき』1月20日公開

 インドのチャイ売りの少年が映画に恋をし、やがて世界で活躍する映画監督になる……というパン・ナリン監督自身の実話がベース。9歳の少年サマイがある映写技師と出会い、お母さんが作ってくれたお弁当と交換で映写室から映画を見せてもらい、映写技術も映画そのものも学んでいく姿をみずみずしく映し出す。まさにインド版『ニュー・シネマ・パラダイス』といった趣だ。

 映画のフィルムに魅せられた少年が主人公なだけに、光の使い方が美しく印象的。映写機を手作りし、初めて自分の手で“画”を動かした時の感動は、効果的な音の表現によって観る者の胸に迫る。フィルム上映の終焉と、それに伴うフィルムと昔ながらの映写機の行く末は衝撃的で、一抹の寂しさを覚えるものの、インド映画のみならず、世界の偉大な映画監督たちが手掛けた映画という芸術への愛が詰まった作品となっている。本年度アカデミー賞国際長編映画賞インド代表にも選ばれた。(編集部・市川遥)

ADVERTISEMENT

新・信長の誕生は伝説だからなせる業

レジェンド&バタフライ』1月27日公開

 織田信長とその妻・濃姫との30年に渡る夫婦の絆を描いた歴史大作。これまで幾多の俳優が信長を演じてきたが、一言でいうと「こんな信長見たことない」に尽きる。戦国武将の中でも随一の人気とカリスマ性を誇る信長にふんする木村拓哉。伝説が伝説を演じるからこそ生まれる、圧倒的な説得力がスクリーンから伝わってくる。誰もが知る歴史上の事実に新たな解釈が加わり、新・信長が誕生するのを観客は目の当たりにするだろう。

 そして、信長を支える濃姫を演じる綾瀬はるかの功績も大きい。有名な武人の妻でありながら、濃姫について書かれた文献は少ない。ミステリアスな存在が故に、誰よりも自由な存在の濃姫は、実はこの物語の主人公なのではないかと錯覚するほど魅力的に描かれている。天下の信長を手玉に取るのも納得の豪快な姫っぷりは、木村と共演経験も多く相性のいい綾瀬のはまり役だ。シリアスの中にコメディーやラブロマンスの要素も組み込まれ、歴史に翻弄された夫婦の愛の深さを見せつけられる。(編集部・香取亜希)

結末が全く読めない二人の男のケンカ

イニシェリン島の精霊』1月27日公開

 アカデミー賞7ノミネートを果たした『スリー・ビルボード』(2017)のマーティン・マクドナー監督の新作。約2時間の物語の着地点が全く予想できず、緊張感は終始途切れない。事の発端は、初老のコルム(ブレンダン・グリーソン)が、長年の親友だったパードリック(コリン・ファレル)に突然、絶縁を言い渡したこと。身の覚えのないパードリックはパニックに陥り、コルムがとった狂気めいた行動を引き金に、まるで病のように、その一件が周囲に波紋を広げていく。

 共にアイルランド出身で親友でもあるグリーソン&ファレルの演技バトルに加え、監督が二人を当て書きしたというキャラクター描写は圧倒的なリアリティー。「死」を予言する老女や、コルムの部屋につるされた能面や般若など、暗示めいた演出や仕掛けも後味を引く。2人の男が、ただケンカをするだけの話を映画としてここまで作り込めた監督の手腕は素晴らしい。(編集部・石井百合子)

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • ツイート
  • シェア
ADVERTISEMENT

おすすめ映画

ADVERTISEMENT

人気の記事

ADVERTISEMENT

話題の動画

ADVERTISEMENT

最新の映画短評

ADVERTISEMENT