超絶サイバーパンクの先駆者!『トロン:アレス』究極のデジタル世界再び
提供:ディズニー

ディズニーが1982年に発表した映画『トロン』は、全世界に衝撃を与えた。コンピュータ内部の世界に侵入した天才技術者の戦いを当時の最先端CG(コンピュータ・グラフィックス)をフル導入して描いたからだ。サイバーパンクの先駆者として知られる同シリーズは、その後も、その時代の最先端技術によって映像革命を起こし続け、その時代を象徴するテーマを描いてきた。そして、とうとう最新作が登場する。シリーズの系譜を受け継ぐ『トロン:アレス』では、最先端のデジタル映画体験が新境地に突入する!(文・平沢薫)
サイバーパンクの先駆け!デジタル世界と映像革命
『トロン』はテクノロジーをめぐる発想面と、実際の映像技術面の両方で、革新的な存在であり続けてきた。まず、発想面では、サイバーパンクの先駆け的作品として高く評価されている。多くのサイバーパンク小説/映画は、コンピュータ内部の情報空間を人間世界と同様の形で描き、人間の意識がデジタル世界に侵入するが、それらは『トロン』が先駆け的存在だ。『トロン』が公開された1982年は、サイバーパンク作家ウィリアム・ギブスンの短編小説「クローム襲撃」が刊行されたのと同じ年。サイバーパンク、サイバースペースという用語は、1984年刊行のギブスンの初長編小説「ニューロマンサー」で一般的になった。
ちなみにサイバーパンクの世界観に影響を与えた映画『ブレードランナー』の全米公開も『トロン』と同じ1982年。『ブレードランナー』は全米公開時にはヒットせず、その後、深夜上映や映像ソフトでファンを獲得していくことになる。この『ブレードランナー』に参加した工業デザイナー、シド・ミードは『トロン』に登場するオートバイ風の乗り物ライトサイクルもデザインしたが、これが影響を与えたのが、日本の名作アニメ映画『AKIRA』(1988)だ。大友克洋監督が、同作のオートバイのデザインはライトサイクルに影響を受けたと語っている。
また、コンピュータ・プログラムを擬人化して描いたという点で、『トロン』はキアヌ・リーヴス主演の大ヒット映画『マトリックス』(1999)のアイデアの原点とも言えるだろう。
そして、映像面には最先端技術が導入されてきた。まず『トロン』は、映画史上初めてCGを本格的に導入した作品として、現在も映画史にその名を刻んでいる。その後、CG技術で生み出された『ジュラシック・パーク』(1990)のまるで生きているかのような恐竜たちも、『ターミネーター2』(1991)の未来から来た殺人機械の変形する液体金属の身体も、『トロン』があったからこそ生まれたと言える。
続く第2作『トロン:レガシー』(2010)では、当時はまだ少なかった全編3Dカメラ撮影による3D上映が行われた。IMAX上映では、シーンによって画面比率が変化する形式も話題を呼んだ。また、第1作の主人公だったジェフ・ブリッジス(ケヴィン・フリン役)の外見をCGで若返らせて描き、その後のディエイジング(役者の若返り)技術の先駆けとなった。
こうして、最先端の映像技術を導入してきたこのシリーズが、最新作『トロン:アレス』ではどんな映像を見せてくれるのか。VFXを手がけるのは、世界最高峰の視覚効果制作工房ILM。すでに3D上映が決定しており、となると『アバター』シリーズ(※)で開発された最先端3D技術が使われているのは間違いない。さらに、これまで時代の先頭をリードしてきた同シリーズだけに、今作でどのような最先端の技術が導入されているのか。新鮮な映像体験に期待が高まる。
中毒性すごい!映像と音楽のシンクロ
第1作『トロン』といえば、映像と音楽をシンクロさせて、サイバースペース(コンピュータ内の仮想空間)に没入させることも得意技だ。そのため音楽には、その時代を象徴し、かつサイバースペースに相応しい音を生み出すミュージシャンを起用する。
第1作『トロン』の音楽を担当したのは、バッハと曲をモーグ・シンセサイザーで演奏したアルバム「スウィッチト・オン・バッハ」で世界中の話題を集めたウェンディ・カーロス。シンセサイザーによるエレクトリックな音楽を、サイバースペースの広がりと、そこを滑らかに疾走するライトサイクルのスピードにシンクロさせた。
第2作『トロン:レガシー』は、フランスの大人気エレクトロ・デュオ、ダフト・パンクが担当。サイバースペースならではの、重力から解放された浮遊感を持つ音楽で映画を彩った。2人は普段のステージでもロボットのようなヘルメットとスーツを着用しており、その姿のまま本編にクラブのDJとして登場したことも当時話題を呼んだ。
そして、最新作『トロン:アレス』ではナイン・インチ・ネイルズが音楽を担当する。同バンドに所属するトレント・レズナーとアッティカス・ロスは、デヴィッド・フィンチャー監督の『ソーシャル・ネットワーク』『ドラゴン・タトゥーの女』や、ルカ・グァダニーノ監督の『チャレンジャーズ』『クィア/QUEER』など注目映画の音楽を手がけてきた逸材。『ソーシャル・ネットワーク』『ソウルフル・ワールド』でアカデミー作曲賞を受賞している名手だが、注目なのは、この2人が本作で初めて、個人名ではなくナイン・インチ・ネイルズ名義で音楽を担当することだ。
本作の公開に先駆けて配信され、最新予告編でも流れる新曲「As Alive As You Need Me To Be」は、この映画のためにナイン・インチ・ネイルズ名義で作曲され、トレントがボーカルも担当している。インダストリアル(工場系、機械系)・ロックと呼ばれたナイン・インチ・ネイルズらしい重量感と熱気に満ちており、今回はサイバースペースだけではなく、現実世界でも音楽が威力を発揮することを予感させる。ナイン・インチ・ネイルズによるサウンドトラックが赤いレーザーが飛び交うビジュアルと鋭利なビートは、まさに人間とAIの攻防戦を描く物語そのものを体現している。さらにその音楽は、サイバースペースという枠を超えて現実世界まで及ぶこととなる人間VS.AIの激しい攻防戦、特にライトサイクルでの疾走、レコグナイザーの襲来、ディスクバトルの激闘などのアクションシーンの圧巻の映像美と共振し、『トロン』シリーズ史上もっとも中毒性の高い、音と映像がシンクロする快感を味合わせてくれるはずだ。
常にその時代の最先端のテーマを描き続ける
『トロン』シリーズといえば、その時代の社会状況やテクノロジーをめぐるホットな話題を、いち早くエンタメとして昇華してきたことも魅力の一つだ。
1作目『トロン』の背景にあるのは、1982年に起きたコンピュータゲームの大流行。当時はまだパソコンはまだ普及の途中で、映画に登場するようなゲームセンターでのコンピュータゲームが主流だった。コンピュータゲームの中にもし世界があったら、というゲームファンの好奇心を刺激する物語が展開する。
2作目『トロン:レガシー』は、パソコンやインターネットの普及と、2003年発売のメタバースPCゲーム「Second Life(セカンドライフ)」の大流行が反映されている。このゲームのように、ユーザーたちがゲーム内の仮想世界を共有する体験が普及して、映画のサイバースペース内でのドラマも複雑になる。
そして、最新作『トロン:アレス』の背景には、現代社会でのAIの普及と実用化がある。これまでのシリーズは、人間がデジタル世界に侵入したが、本作では初めてAIが現実世界に侵入してくる。主人公アレスをはじめ、現実世界では29分間しか実体化できないAI兵士たちが、“永遠”を求め暴走を始めるのだ。この設定がリアルでスリリングなのは、実際に私たちの日常生活に、Siriなどのスマホの音声アシスタントや、ChatGPTなどの対話型生成AIサービス、人体の動きを察知して風向きを変えるエアコンなどのスマート家電等々という形で、すでにAIが侵入してきているからだ。こうした最新型AIを搭載した戦闘用プログラム・アレスが実現し、それが現実世界で実体化したら、彼は何をしようとするのかーー。本作のストーリーは、まさに現在の人類が抱えるAIへの期待と恐れを反映していると言える。
このように『トロン』シリーズは進化し続けてきた。最新作『トロン:アレス』はどんな世界を見せてくれるのか。その発想、映像、技術、物語のすべての面で、さらに新たな革新を体験させてくれるはず。劇場で観る日が待ちきれない。
※『アバター』シリーズはWeta FX、ライトストーム・エンターテイメント、ILMが製作
映画『トロン:アレス』は10月10日(金)日米同時公開
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