「ウォーキング・デッド:ダリル・ディクソン」シーズン3最終話:冒頭からサプライズ!シリーズ完結へ不穏なラスト
今週のウォーキング・デッド

「ウォーキング・デッド」の人気キャラクター、ダリル(ノーマン・リーダス)とキャロル(メリッサ・マクブライド)のその後を描くスピンオフ「ウォーキング・デッド:ダリル・ディクソン シーズン3」。シーズン最終話となる第7話「ソラス・デル・マル」では、予想外のオープニング&ラストが待っていた!(文・平沢薫)
※ご注意:本記事はネタバレを含みます。「ウォーキング・デッド:ダリル・ディクソン シーズン3」第7話をまだ観ていない方はご注意ください。
冒頭からいきなりサプライズ!あの人物が再登場
開始直後から、予想外の人物が登場する。巡礼が通る“聖ヤコブの道”(第3話「犠牲」に登場)の道標にダリルが置いた、ローラン少年(ルイ・ピュエシュ・シグリウッツ)のルービックキューブを手に取ったのは、シーズン1~2で「生者の力」の戦闘員だったコドロン(ロメイン・リーバイ)だ。
彼は、ダリルを弟の仇として狙っていたが、後に共闘し、弟の死をめぐる誤解も解け、シーズン2最終話では一緒に英仏海峡トンネルを渡ろうとして、途中で行方不明になったままだった。その彼が、スペインに到着していたとはサプライズ。彼が今回のエピソードに絡むのかと思ったら、そうではなかったのも、ある意味でサプライズだ。
しかし、コドロンは今回のエピソードのラストでダリルたちが乗るはずだった船が爆発した時、それを遠くから振り返って見ていた。となると、彼は次のシーズンでダリルたちに再会することになりそうだ。
魅惑的でおぞましい…白塗りウォーカーの人形劇
今回は、2つの救出作戦が並行して展開される。一つは、ダリルとパス(アレクサンドラ・マサンカ)による、フスティナ(カンディラ・サイッタ)&エレナ(グレタ・フェルナンデス)の救出作戦。もう一つは、キャロルと灯台の協力者たちによる、アントニオ(エドゥアルド・ノリエガ)の救出作戦。ダリルたちの作戦の途中では、インパクトのある光景が出現する。
それは、自称スペイン王の宮殿の夜会で開催されるウォーカーたちの人形劇。壁も柱も装飾的な彫刻が隙間なく施された豪華な宮殿で、白塗りで宮廷風の衣装を着たウォーカーたちが操り人形と化し、奇妙な痙攣のような舞踏を繰り広げ、それを王国の権力者たちが食事をしながら笑って見ている。その光景は、魅惑的でありつつおぞましい。このシリーズでは、シーズン1第3話「パリはパリ」のウォーカーたちによるオーケストラも不気味な魅力だったが、あの光景と双璧をなす名シーンだ。
「アランフエス協奏曲」が霧のスペインを彩る
もう一つ、思わず目を奪う魅惑的な光景は、救出作戦の成功の後、ダリルとフスティナがオートバイで城塞都市ソラス・デル・マルに戻る時、オートバイの周囲を取り巻く光景だ。誰もいない広大な風景、その中を通る道を進んでいくオートバイ、霧がその周囲に満ちていく。その中から出現する巨大な牛は、スペイン名物のオズボーンの雄牛だろう。シェリー酒のメイカー、オズボーンが制作した高さ14メートルの雄牛は、スペイン全土の各地に設置されている。
このシーンで流れる、誰もがどこかで聞いたことのある音楽は、スペインの作曲家ホアキン・ロゴリーゴが1939年に作曲した「アランフエス協奏曲」第2章。ジャズのカバーも多い名曲が、スペイン情緒を盛り上げる。スペインロケだからこそ実現できた、このシーズン屈指の名シーンだ。
次がシリーズ完結編…ダリルとキャロルの行く末は
故郷に戻ったフスティナは、町のリーダー・フェデリコ(オスカル・ハエナダ)の欺瞞(ぎまん)を暴露し、彼は投獄されることになる。彼女の発言によって、武装集団エル・アルカサルの本拠地は、ダリルが放った火で燃え落ちたことも分かった。しかし、そこで大団円にならないのがこのドラマ。母によって牢から出獄したフェデリコが、出航準備で船にいたダリルを銃で狙う。フェデリコは倒されるが、彼の銃弾によってダリルたちが乗るはずだった船が炎上。これで船出は不可能になってしまった。
すると気になるのは、その少し前、明日は船出だという状況で、ダリルとキャロルが交わした会話だ。ダリルが「どこかに着くたび、どこかに行きたくなる。行けという声が聞こえる。家に帰ったら、また聞こえるかも」と言うと、キャロルは「聞こえないかも」と答えるが、これは2人が家に帰らないかもしれない、2人は帰るのではなく新たな家を見つけるのかもしれないということを暗示しているのだろうか。
また、このシーズンでダリルの脳裏に何度も浮かんだ、彼の子供時代の出来事も全貌が明かされないまま。今回、ダリルが彼に「戻るな」と言う少年を「メルル」と呼ぶので、彼が幼い頃の兄・メルルだと判明したが、この時、何が起きたのか。ひょっとしたら、ダリルが今も、定住しようとするたびに「行け」という声を聞いてしまうのは、この時の体験に原点があるのだろうか。
振り返れば、このシーズンでは、他にもまだ解決していないことがある。第4話「新世界の正義」で野蛮人と呼ばれていることが判明した集団は、その後の消息が不明。彼らはまた襲撃してくるかもしれない。そして、再登場したコドロンは、次のシーズンでどんな役割を果たすのか。
そんな数々の謎を残しながら、やっぱり、このシーズンのエンディングでも、これまでの2シーズンの定番通り、ロックの名曲が流れる。シーズン1のラストはU2の「Seconds」、シーズン2のラストはローリング・ストーンズの「無常の世界(You Can't Always Get What You Want)」だったが、今回のラスト、船が燃えるシーンで流れるのは、Nine Inch Nails 「Hurt」のスペイン語カバーバージョンだ。
さて、次回シーズン4は、「ウォーキング・デッド:ダリル・ディクソン」の最終シーズンになることがすでに発表されている。ダリルとキャロルはどこへ向かうのか。2人の旅の行方を見届けないわけにはいかない。
最後に、エンドクレジットの直前で哀悼の意が捧げられたのは、「ウォーキング・デッド」シーズン2からシーズン10まで脚本スーパーバイザーを務めたエイミー・レイシーさん。2025年9月5日に自動車事故により死去している。ご冥福をお祈りします。
「ウォーキング・デッド:ダリル・ディクソン シーズン3」(全7話)はU-NEXTで独占配信中
(c)2025 Stalwart Productions LLC.


