細やかな光と影と官能が重なり合う

1924年、3月の英国。緑に囲まれた邸宅。降り注ぐ光はきらめくが、強くはなく柔らかい。その光が植物にも人々にも降り注ぎ、どこまでも細やかな陰影を生み出す。画面は、それを余すところなく映し出す。
映画は、書くということについての物語でもあり、異邦人には真髄までは読み取り難い英国の階級意識をめぐる物語でもあるが、主人公が感受する官能の物語にもなっていて、そのどれもが同質の繊細さを持ち、それぞれが波が重なるように影響し合う。自転車に乗る主人公が、髪を風が通っていく時に感じ取る身体的快感と、そのときに湧き上がる開放感が、互いを増幅させる場面が何度も繰り返され、その快感が画面から伝わってくる。