上質のラブロマンスに込められた時代の「終わり」と「始まり」

『ダウントン・アビー』とも重なる時代背景だが、こちらは労働党のマクドナルド政権が誕生したばかりの、1924年3月のたった一日が物語の主軸。戦争の影を受けた上流階級の憂鬱と絶望を象徴するポールと、のちに作家となるメイドのジェーン――旧時代と新時代の運命が交差する。「裸」と「着衣」の対比など、端正なメロドラマの中に政治的・社会的な奥行きが丁寧に編み込まれている。
原作小説には基本忠実ながら、1948年パートにおける哲学者の恋人の人種変更、ヴァージニア・ウルフの付与など、『バハールの涙』のエヴァ・ユッソン監督&『レディ・マクベス』の脚本家アリス・バーチによる批評的なアレンジも全て素晴らしい!