心をえぐるヒリヒリとした諜報戦

2013年7月30日 清水 節 ベルリンファイル ★★★★★ ★★★★★

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ベルリンファイル

 『シュリ』が情緒過多な演歌に聞こえ、『ミッション:インポッシブル』が無意識過剰なトムのグラムロックに思えてくるほど、『ベルリンファイル』は辛酸を舐めた者にしか分からない、心をえぐられるようなヒリヒリとしたジャズだ。

 ストーリーは込み入っている。詳細を理解しようと思えば、1度目の鑑賞では取り残されるだろう。主人公は北朝鮮のスパイ。南北朝鮮の分断が生んだ緊張に、アメリカ、ロシアのみならず、アラブとイスラエルの思惑も絡まり合い、ベクトルが錯綜する。冷戦以降のインターナショナルな諜報活動のリアルが、ここにある。

 舞台はかつての分断都市ベルリン。観光映画に堕することなく、ぶっきらぼうに切り取る。ハ・ジョンウの面構えが不敵でいい。銃撃戦も格闘戦も切迫度が高く、北朝鮮の格闘術「撃術」はキレ味満点。裏切り者は誰か。身近な者ほど信頼出来ず、こちらまで情緒不安定に陥りそうになる。チョン・ジヒョンの疑心暗鬼な表情は、もっと評価されるべきだ。

清水 節

清水 節

略歴:映画評論家・クリエイティブディレクター●映画.com、シネマトゥデイ、FLIX●「PREMIERE」「STARLOG」等で執筆・執筆、「Dramatic!」編集長、海外TVシリーズ「GALACTICA/ギャラクティカ」DVD企画制作●著書: 「いつかギラギラする日 角川春樹の映画革命」「新潮新書 スター・ウォーズ学」●映像制作: WOWOW「ノンフィクションW 撮影監督ハリー三村のヒロシマ」企画・構成・取材で国際エミー賞(芸術番組部門)、ギャラクシー賞(奨励賞)、民放連最優秀賞(テレビ教養番組部門)受賞

近況:●Pen online:FILMeX特集●サイゾー:角川春樹特集●製作55周年「ウルトラマン」Blu-rayBOX収録「ウルトラ・レボリューション1966」構成・演出・取材●「ULTRAMAN ARCHIVES」クリエイティブディレクター●ニッポン放送「八木亜希子LOVE&MELODY」

サイト: http://eiga.com/extra/shimizu/

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