ホラー的に本能を刺激してくる、極上の作りもの

2020年9月14日 斉藤 博昭 スパイの妻 ★★★★★ ★★★★★

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スパイの妻

恐怖要素の少ない『トウキョウソナタ』『岸辺の旅』でも、照明による不安感増幅、不穏な音楽、俳優のやや現実離れしたムードの演技で、本能的な心のざわめきを誘う黒澤監督の真骨頂が発揮された。それぞれ相手の本心を探り合う高橋一生、蒼井優、東出昌大の、感情以上にテクニックを優先したセリフの抑揚。これは単に時代の問題ではなく、監督が極上の「作りもの」を目指しての演出だろう。終盤のあるシーンでの蒼井の芝居は完全に演劇的。そして、監督の意図は見事に成功した。劇中で高橋一生が撮影するフィルムが、当然のごとく物語に絡むのだが、ややとってつけた感はあるにせよ、「映画」が登場人物の運命を変えるだけで心震えるから不思議!

斉藤 博昭

斉藤 博昭

略歴:1963年神奈川県藤沢市生まれ。高校時代は映画研究部に所属。1997年よりフリーランスのライターとして映画誌、女性誌、情報誌、劇場パンフレット、映画サイトなどさまざまな媒体に映画レビュー、インタビュー記事を寄稿。得意ジャンルはアクション、ミュージカル。最も影響を受けているのはイギリス作品です。Yahoo!ニュースでコラムを随時更新中。

近況:LAの『フェアウェル』ルル・ワン監督、ロンドンの『カセットテープ・ダイアリーズ』グリンダ・チャーダ監督に、Skypeインタビュー。ともに外出規制などある中、前向きに明るく話してくれて、一刻も早い日常生活の復活を祈るのみ。

サイト: https://news.yahoo.co.jp/byline/saitohiroaki/

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