芳醇なイマジネーションに酔う

セリフなし、しかし映像はひたすら芳醇。81分間の映像体験は、見る者のイマジネーションを刺激するに十分だ。
物語は基本的に、拾った地図を頼りにして孤島の出口を探す少年の冒険劇。緑豊かな林の風景から、断崖、砂漠、岩山、そして雪山へと、映像は変化。その詩的な美しさに、音楽の効果も手伝い、見入ってしまう。
主人公を追ってくる巨人は“死”のメタファーか? 春夏秋冬をたどるかのような大自然の風景の変遷は、人の一生の暗示か? そんなことを考えながら見たが、そういう意味でも芳醇。監督は、これをひとりで作り上げたと言うが、詩情のみずみずしさは初期の新海誠の手腕を連想させる。