『マリッジ・ストーリー』巧妙を極めた脚本と演技

第92回アカデミー賞

マリッジ・ストーリー
Netflix映画『マリッジ・ストーリー』独占配信中

 昨年の『ROMA/ローマ』に続き、今年のアカデミー賞はNetflixの勢いがさらに強くなっている。その一角をなす『マリッジ・ストーリー』は、離婚へ発展する夫婦というシンプルな設定。これまでも多くの映画で語られてきた、カップルの心のすれ違いの物語なのだが、近年、ハリウッドのメジャースタジオで絶滅危惧種になりつつある大人のラブストーリーでもあり、その意味でも新鮮な喜びを伴って映画ファンに受け入れられた。(文・斉藤博昭)

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 主人公は舞台演出家のチャーリーと、女優のニコール。チャーリーの作品がブロードウェイで上演されそうな時期に、最近は仕事が少なかったニコールにテレビシリーズの大役が舞い込む。撮影はロサンゼルス。幼い息子のヘンリーをどうするか? 別居生活は離婚調停へと発展していく。同じような離婚劇を描き、アカデミー賞作品賞を受賞した『クレイマー、クレイマー』(1979)から、ちょうど40年。その間、夫婦関係はどう変わったのか、あるいはどう「変わっていないか」を考えさせるのも、『マリッジ・ストーリー』の魅力だ。

 監督・脚本は『イカとクジラ』(2005)でアカデミー賞脚本賞にノミネートされたノア・バームバック。元妻は女優のジェニファー・ジェイソン・リーで、彼らが直面した問題が今作の主人公たちに反映されているのは明らか。赤裸々な告白映画として読み取ることも可能だ。ちなみにバームバックの現在のパートナー、グレタ・ガーウィグの監督作『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』も、今年のアカデミー賞作品賞にノミネートされている。

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 ブロードウェイとハリウッド。ショービジネスの最高峰の舞台裏や、アメリカの離婚でのすったもんだが基本的にコミカルに描かれ、2時間16分と、物語としてはやや長尺ながら、まったく飽きさせない。冒頭でテンポよく紹介される「ニコールの長所」「チャーリーの好きなところ」が、その後の展開に伏線として生きてくる語り口は、じつに鮮やか! Netflixで細切れに観ることも可能だが、映画の「時間」を共有することで、主人公2人の感情に深くリンクするので“イッキ観”したい。つまり「映画的」な作品なのである。その共感という意味で、主演2人のキャリア最高ともいえる演技が大いに貢献している。

 ニコール役のスカーレット・ヨハンソンは、弁護士に心境を吐露する長回しのシーンで、感情の変化をドラマチックかつ繊細に表現し、観る者の心を激しく揺さぶる。今作で主演女優賞、『ジョジョ・ラビット』で助演女優賞にノミネートされたが、アカデミー賞の歴史で主演女優・助演女優の同時ノミネートは過去8回。うち4回がどちらかで受賞している。『マリッジ・ストーリー』と『ジョジョ・ラビット』では、スカーレットの役の「ある同じ行為」が感動のポイントになる。まったくの偶然だが、これは映画が起こす奇跡かもしれない。

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 そしてチャーリー役のアダム・ドライヴァー。ややとぼけた味わいも前面に出して悪戦苦闘する姿に、彼の俳優としての個性が最大限に引き出された。ミュージカルの名曲「Being Alive」を歌唱するシーンは、その感情の高ぶりに誰もが感動することだろう。主演男優賞では、まったくタイプの違う『ジョーカー』のホアキン・フェニックスと最後までデッドヒートを繰り広げてほしい。それほどの忘れがたい名演技だ。

 その他にも、助演女優賞でトップを走るローラ・ダーンら、実力派キャストがロサンゼルスの超個性的な弁護士を、強烈に、味わい深く体現しており、「演技の総合点」では、今年のアカデミー賞の中で群を抜くレベルであることを実感できるはず!

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