中山 治美

中山 治美

略歴: 茨城県出身。スポーツ紙記者を経てフリーの映画ジャーナリストに。全国商工新聞、月刊スカパー!(ぴあ)、時事通信などに執筆中。

近況: 映画祭で国内外を飛び回っているうちに”乗り鉄”であることに気づき、全国商工新聞で「乗りテツおはるの全国漫遊記」を連載。旅ブログ(ちょこっと映画)もぼちぼち書いてます。

サイト: https://tabisutekaisyu.amebaownd.com

中山 治美 さんの映画短評

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  • 映画の朝ごはん
    おにぎりの中に映画界の課題もぎっしり
    ★★★★

    おにぎり2個とおかず一品+沢庵。一般的には取り立てて珍しくない朝食だ。だがこの弁当が撮影現場で愛され続けている理由を深掘りした結果、低予算・短期間撮影が常識の日本映画界の歴史と現状、さらに課題までをも浮き彫りにする重要なドキュメンタリーとなった。現在、映画界は日本映画制作適正化機構(通称”映適)を設立し、働き方改革に着手中。いかにそれが必須か。本作に登場する弁当店ポパイのような撮影を支える業者にも影響を及ぼしていることも映し出す。翌朝の弁当を深夜に発注するスタッフの無茶振りにも対応。これを美談と取るか?仕方ないと取るか?ここに映画界の未来がかかっているように思える。

  • SISU/シス 不死身の男
    フィンランド版『イングロリアス・バスターズ』
    ★★★★

    ナチスの蛮行を描いた作品はやまないが、フィンランドもか!と、北欧の歴史に疎い我々に暗黒史を突きつけ、今や”世界一幸福な国”と称されるにまでに至った戦後復興の道のりまでをも慮るを得ないアクション大作だ。ナチスに対する積年の怒りと恨みを老兵に託し、強かにしぶとく生き抜き、反撃の狼煙を上げる。想起させるは、”やりすぎ”と言われたQ・タランティーノ監督『イングロリアス・バスターズ』。しかし現実を見てもわかるように戦争はやり過ぎのオンパレード。特に、泣き寝入りするしかなかった女性たちにも言及しているところに監督の思いを感じて泣けた。

  • アンネ・フランクと旅する日記
    今こそ考えたい日記が残された意味
    ★★★★★

    日記初出版から75年に合わせ、アンネ・フランク基金の依頼を受けて制作された。”現在と過去をつなぐ”という要望に、見事に応えた脚本が秀逸だ。主軸は空想の友キティー。彼女は”創造のキャラ”から飛躍して、時空を飛び越えながらアンネのその後を旅し、現代のアムステルダムで難民と共鳴する。彼女の躍動と今日的な問題が、もはや遠い過去となっていたアンネと日記の存在をも鮮やかに甦らせることに成功している。だからこそ、考えずにはいられない。アンネは今の世界をどのように見ているのだろうかーーと。ホロコーストの生存者の息子である監督の想いも込めて制作された本作が、この時期に世に放たれた意義を噛み締めたい。

  • 香川1区
    ”一議員のPR映画”と高を括るべからず
    ★★★★★

    自民党公認候補のどぶ板選挙を内側から描いた想田和弘監督『選挙』、泡沫候補が出馬する理由に目を向けた藤岡利充監督『立候補』に続き、我々の選挙リテラシーを高めてくれる選挙映画の傑作だ。衆議院選挙の激戦区だった香川一区の立候補者の選挙活動を追っているが、注目すべきは有権者の心理。結果はすでに分かっている。しかしその票はどのように動いたのか。前作『なぜ君は総理大臣になれないのか』の影響、不祥事、地方ならではのしがらみetc…粘り強い取材で地元の方々の本音を聞き出す。候補者は、その一票のために右往左往しているワケで。”一票の重味が分からない”という人は、本作を見るべし。

  • アナザーラウンド
    笑いと酒の向こうに、人生の愛しさと哀しみ
    ★★★★★

    物事をジェンダーで判断するのは憚れるが、しかし哲学者の「ホンマかいな?」の理論を実践するあたり、集団になると途端に学生に戻ってしまう男子ならでは。まして酒飲みなら尚更、酒は何も解決してくれないことを知っているはず。そうとは分かっていてもやめられないのが酒の魔力であり、ミッドクライシスを抱えた彼らの切実さを推し量らずにはいられない。図らずしもコロナ禍において飲酒は社会の敵となってしまった。本作は決して酒を肯定も否定もしていないだけに、余計に人間の営みにおいて酒の存在意義とは?と考える良い機会。自戒を込めて。

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