見どころ:東京の武蔵野市と三鷹市にまたがる井の頭恩賜公園の開園100周年事業の一つとして制作された青春ドラマ。同公園と吉祥寺を舞台に、ひょんなことから出会った若い男女3人の姿を、数十年前に作られたある曲との関わりを交えながら追う。監督は『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』などの瀬田なつき。『リトル・フォレスト』シリーズなどの橋本愛、『俺物語!!』などの永野芽郁、『ヒミズ』などの染谷将太らが出演する。
あらすじ:吉祥寺で一人暮らしをする大学生の純(橋本愛)は、今は亡き彼女の父親の恋人だった佐知子(石橋静河)という女性を捜している高校生ハル(永野芽郁)に出会う。彼女と共に佐知子の行方を追うと、その孫トキオ(染谷将太)に遭遇。佐知子の遺品であるオープンリールテープを再生すると、彼女とハルの父・晋平(森岡龍)の歌声が。途中までしか録音されていないその曲を完成させようと純たちは奔走する。
YUIばりにギターの弾き語りを魅せる橋本愛に、『TOKYO TRIBE』に続き、見事なラップを披露する染谷将太。しかも、2人を繋げる役回りの永野芽郁は使い方、演技ともに過去ベスト! 『四月物語』のようなMV感もありつつ、三角関係にドキドキしたり、地方都市でグダグダすることのない青春映画であり、『はじまりのうた』ならぬ、“はじまりのおと”というセリフが出てくるなど、ジョン・カーニー監督作好きはたまらない展開だ。とはいえ、一筋縄でいかないのが、6年ぶりの長編新作となる瀬田なつき監督作。まさかの展開に突入するフェス以降のメタ映画的展開は、賛否分かれるが、この実験的ノリ、これはこれでアリだろう。
井の頭公園や吉祥寺はなじみのある街だが、そんな思い入れを越えて、た自然体の匂いが深くシミてくる逸品。
湧き出る生活感。役者たちの平成顔とも昭和顔ともとれるタイムレスな顔つき、ノスタルジックかつ素朴な音楽。限定された空間に息づく時を超えたファンタジーは、それらに支えられ、見る者のイマジネーションを刺激する。
日常と非日常。言葉と音楽。物語とミュージカル。ロメールのみずみずしさとゴダールのシュールレアリスム。1960年代のフランス、ヌーヴェルヴァーグが、現代の日本に甦ったなら、こんな作品になるのではないか……そんなことをふと思わせる。面白い!
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